日本経団連タイムス No.3029 (2011年2月3日)

連合との懇談会を開催

−今年の春季労使交渉における諸問題について意見を交換


日本経団連(米倉弘昌会長)は1月19日、東京・大手町の経団連会館で、日本労働組合総連合会(連合、古賀伸明会長)との懇談会を開催した。日本経団連からは米倉会長はじめ、副会長、評議員会副議長、関係委員長ら19名、連合からは古賀会長はじめ、会長代行や副会長、事務局長ら18名が参加し、今年の春季労使交渉をめぐる諸問題について意見交換を行った。

あいさつする米倉会長(右)と古賀連合会長

開会あいさつで米倉会長は、わが国経済が自律的な景気回復に向けた展望が立ちにくい状況にあることに加え、グローバル競争は激化する一方であり、日本企業にとって厳しい事業環境が続いているとしたうえで、「労使一丸となってグローバル競争に立ち向かっていくための取り組みがこれまで以上に求められている」と指摘。さらに、今年の労使交渉がよりよい日本社会の実現に向けた道筋を描く契機となることへの期待感を示した。

連合の古賀会長は、「個々の企業にとって合理的な選択でも、すべての企業が同じ行動をとると全体では悪い方向に向かう『合成の誤謬』に陥っていることが景気低迷の一因ではないか」と述べたうえで、今次交渉については、配分のバランスを健全な状態に復元し、マクロの視点から積極的に配分を求めていくとの考えを明らかにした。

意見交換ではまず、双方が春季労使交渉にあたっての基本的な考え方を説明。連合側は、デフレ脱却には配分の是正が必要であるとし、人材への投資の重要性を強調するとともに、「企業、労働者、政府という全体のバランスのなかでどう配分の歪みを是正していくかを考えるべき」と主張した。経団連側は、賃金決定にあたっては、自社の支払能力に即して判断することが重要であり、一時的な業績変動は賞与・一時金に反映させることが基本との考えを示した。そのうえで、厳しい状況のなかで国内事業立地を維持しようとすれば、賃上げより雇用を重視した交渉が重要となり、恒常的な人件費の増加につながる要求については慎重に対応せざるを得ないことから、今年の交渉では定昇の維持をめぐる賃金交渉を行う企業が大半を占めるとの見通しを示した。

このほか、連合からは、(1)競争力の強化に向け、コスト論に終始するのではなく、日本の強みは人材という認識に立つべき(2)非正規労働者についても、個人消費の喚起、経済の活性化という観点から、働き方の実態に合った賃金引き上げを行うべき(3)サプライチェーンで重要な役割を担っている中小企業にも利益配分をして大企業と一体的に発展させることが必要――などの発言があった。

一方、経団連からは、(1)「企業の存続」と「従業員を大事にすること」の2つの命題を両立させるための知恵を出すことが労使交渉の最大の使命(2)デフレ脱却のためには新産業創出とイノベーションが重要(3)グローバルな事業展開のなかで、いかに雇用を確保し、処遇を改善していくかという視点が大切(4)雇用確保のためには規制改革も必要――などの意見が出された。

閉会あいさつで古賀会長は、「今年の労使交渉において、より深く議論しなければならないところが、意見交換のなかで互いに少し見えてきたのではないか」と総括。最後に米倉会長は、「今後とも、企業の成長と従業員の豊かさをともに実現できるよう、経営側も努力していきたい」と述べ、引き続きの理解と協力を呼びかけた。

【労働政策本部】
Copyright © Nippon Keidanren