日本経団連タイムス No.3030 (2011年2月10日)

最近の職業安定行政をめぐる動向

−厚労省・森山職安局長から説明を聞く/雇用委員会


日本経団連は1月27日、東京・大手町の経団連会館で雇用委員会(篠田和久委員長)を開催し、厚生労働省の森山寛職業安定局長から、最近の職業安定行政をめぐる動向について説明を聞いた。
概要は次のとおり。

■ 雇用失業情勢の現状と対策

有効求人倍率は改善傾向にあり、雇用情勢には持ち直しの動きがみられるものの、完全失業率は5%前後に高止まりし、依然として厳しい状況にある。とりわけ大学卒業予定者の内定率が7割を下回るなど、新規学卒者の就職環境は非常に厳しいものとなっている。その対応として、厚生労働省は、文部科学省および経済産業省と連携し、未内定者に対する「卒業前の集中支援」を実施している。

政府の新成長戦略では、少子高齢化に伴う労働力人口の減少に対応するため、2009年時点で74.6%の就業率を20年までに80%とする目標が掲げられている。その実現に向け、昨年9月から、3段構えの対策を実施している。

具体的には、「ステップ1」として、10年度予算の予備費を活用した新卒者雇用に対する緊急対策などを、「ステップ2」として、補正予算による雇用調整助成金等の要件緩和などを実施している。さらに「ステップ3」として、11年度予算案では、予備費や補正予算で措置した施策の継続に加え、新たに求職者支援制度の創設などを盛り込んでいる。そのほか、一定の雇用拡大を行った企業に対して税額を控除する雇用促進税制の導入を目指している。

■ 新たなセーフティーネットの創設

近年、非正規労働者の増加が顕著であり、雇用者全体の3割以上を占めている。また、失業者のうち長期失業者の割合が趨勢的に上昇している。

こうしたことを背景に、雇用保険でカバーされない者(短時間労働のため雇用保険が適用されない者や雇用保険の受給期間内に就職できない者など)に対するセーフティーネットの強化が課題となっている。これを受けて現在、雇用保険と生活保護の間の新たなセーフティーネットとなる、求職者支援制度の創設に向けた検討が労働政策審議会で行われている。

同制度は、雇用保険を受給できない求職者に対し、職業訓練を受講する機会を確保するとともに、一定の要件を満たす場合に、訓練期間中の生活を支援するための給付を行うものである。あわせてハローワークが中心となった就職支援により、早期の就職を図ることを目的としている。

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当日は、森山局長の説明に続き、「求職者支援制度の創設」および「雇用保険制度の見直し」について審議が行われ、委員会として了承した。

なお、2月1日に開催された労働政策審議会では、求職者支援制度に関する法律案要綱について了承され、今通常国会に新法案が上程される見込みである。

【労働政策本部】
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