日本経団連タイムス No.3030 (2011年2月10日)

インド製造業経営幹部育成支援プロジェクト関係者との懇談会開催

−経団連との連携めぐり意見交換


日本経団連は1月26日、東京・大手町の経団連会館でインド製造業経営幹部育成支援プロジェクト(Visionary Leaders for Manufacturing、以下VLFM)関係者との懇談会を開催した。懇談会では、インド側からVLFMの概要と今までの成果について説明を受けるとともに、藤野隆アジア・大洋州地域委員会企画部会長の司会で、サリタ・ナグパル・インド工業連盟(CII)副会長、プロジェクトに参加しているインド企業の経営幹部等と意見交換を行った。
インド側の説明の概要は次のとおり。

(1)VLFMの目的

プロジェクトの目的は、日本の製造業における経営手法を、インド製造業の経営幹部に伝授し、インド製造業の変革を担うリーダーを育成することにある。特に、新製品のコンセプトの創造から製品販売後のサービスを包括する総合的な「ものづくり」に重点を置いている。

インドの持続的な発展のためには製造業の強化が重要な課題であることから、インド政府は首相府直轄で国家製造業競争力委員会を設置し、その下で2006年にVLFMプロジェクトを立ち上げた。同年12月の日印首脳会談の共同声明に、日印両政府によるプロジェクトへの協力が盛り込まれ、JICA(国際協力機構)が日本側の実施機関となり、インド工業連盟、インド工科大学等の産学官のパートナーシップにより運営されている。

(2)プロジェクトの特色

VLFMでは、社長、上級経営幹部、中級経営幹部、中小企業の4つの領域で、先見性のあるリーダーを育成している。参加者は、インド国内での勤務、製造業への貢献、企業全体のリードという3つの責務を課され、国家的使命感が求められている。

単なる知識の伝授ではなく、スキルの形成を目指すこのプロジェクトでは、工場などの現場訪問やグループワークに多くの時間が割かれている。コースのねらいは、「思考を転換させること」にあり、次代の経営幹部として、潜在的な顧客ニーズを掘り起こすとともに、将来起こる問題を予測しなくてはならない。

最近、上級経営幹部コースに参加したゴドレジ社の社員が、「Chotukool」という農村低所得層向けの簡易冷蔵庫を開発し、インドで大きな注目を集めている。「インドのソニーとホンダをつくること」を目指すこのコースの目標は、実を結びつつある。

(3)日本企業との関係

このプロジェクトにより、毎年100人近くの知的エリート集団がインド製造業に加わることになる。インドと日本のマネジメント・コンセプト双方を理解する人材の存在は、今後の日本企業のインド進出、またパートナーシップの形成などにも大きなプラスとなる。また、プロジェクトで養成された優秀な人材を日本企業が直接雇用する可能性がある。

インド工業連盟は、経団連との連携を通じ、同プロジェクトの日本での周知、インド企業経営幹部研修を受け入れる日本企業の拡大を期待している。

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インド製造業経営幹部育成支援プロジェクトのより詳細な内容等については、JICA(国際協力機構)産業開発部民間セクターグループ(電話03‐5226‐8047)まで。

【国際協力本部】
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