日本経団連タイムス No.3031 (2011年2月17日)

「力強い農業の実現に向けた提言」公表

−農業の競争力強化と成長産業化に向けて実効ある改革を求める


日本経団連(米倉弘昌会長)は10日、「力強い農業の実現に向けた提言」を公表し、政府の「食と農林漁業の再生推進本部」(本部長=内閣総理大臣)において、早期に同提言を踏まえた実効ある改革方策が取りまとめられ実行されるよう求めた。
提言の概要は次のとおり。

1.農業の競争力強化と成長産業化

農業は国民への食料供給や地域の基幹産業として重要な役割を果たしているにもかかわらず、農業従事者の高齢化や耕作放棄地の増大などにより、その存続が危ぶまれる深刻な状況にある。

そこで経団連では、今こそ力強い農業の実現に向けて、政策手段を総動員した国内農業の改革を推進し、競争力強化と成長産業化を図っていくべきことを求めた。

具体的には、新規就農・新規参入促進等による経営感覚あふれる多様な担い手の確保のため、農地規制のさらなる見直しや運用適正化とともに、新規就農研修や新規雇用などへの助成、農地のあっせんなどを求めている。

またこれら担い手への農地集積による経営規模の拡大と生産性の向上のため、地域における農地集積方策の強化などとともに、規模拡大を行う農業経営に対する財政・金融・税制面の支援や、農地の出し手側へのインセンティブ措置として、農地の売却・賃貸収入等への税制上の特例措置の拡充などを提案している。

さらに、農業の成長産業化に向けた取り組みとして、農商工連携等促進法の改正や、有望な農産物輸出品目についての相手国の検疫条件の改善、知的財産権の保護などの推進を求めている。

そのうえで、これらの支援策については、新たに「農業成長産業化促進法(仮称)」を制定し、一定の要件を満たす農業経営に集中的に行うことを提言している。

2.真に必要な国内対策の総合的な実施

一方、TPP(環太平洋パートナーシップ)等の国際交渉においては、高いレベルの経済連携を目指しつつ、わが国の事情を考慮した国境措置の取り扱いなどの確保を目指すべきこと、そのうえで、国内構造改革と国際交渉の進展を踏まえた国内対策を総合的に実施すべきことを求めている。

経団連では、こうした取り組みを通じて、TPPをはじめとする高いレベルの経済連携の推進と国内農業との両立を確保すべきことを強く求めるとともに、国内農業改革実現のための農業界の取り組みに最大限協力すると表明している。

3.「元気なふるさと共創プラン(仮称)」等経済界の取り組み強化

このような取り組みの一環として、経団連では、国民に食をはじめ多様な自然、文化、景観等豊かな恵みをもたらしている地域の農山漁村を国民全体で支え、元気なふるさとを共に創っていくことを目指した「元気なふるさと共創プラン(仮称)」を提案。

この中で、今年1月から全会員企業・団体に対して実施したアンケート調査に寄せられた各社の取り組み事例をまとめて3月にも公表し、経済界全体で優良事例の共有・活用を図るとともに、企業・団体との連携・協力を模索する農業界や地方公共団体などの参考に供するなどにより、また、改めて会員各位に取り組みの強化を要請するなどにより、その一層の拡大・深化を図っていくとしている。

【産業政策本部】
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