日本経団連タイムス No.3031 (2011年2月17日)

第1回グローバル法務戦略セミナー

−「中国法の最新事情と中国ビジネス」をテーマに開催


講演する射手矢弁護士

日本経団連事業サービスは日本経団連と連携して1月31日、東京・大手町の経団連会館で、森・濱田松本法律事務所の協力を得て、第1回の「グローバル法務戦略セミナー」を開催した。同セミナーは、企業法務に係る法整備が急速に進む新興諸国の法制度について理解し、ビジネスリスクの対応策を見いだす機会とすることを目的とし、役員・部長クラスを対象に4回シリーズで行われるものである。第1回となる今回のテーマは「中国法の最新事情と中国ビジネス」。講師の射手矢好雄弁護士の説明は次のとおり。


近年、急激な経済成長を遂げている中国では、GDPの伸びや夏季五輪・万博等の国際的イベントの開催などの「光」と、格差の拡大や人権問題、近隣諸国との軋轢などの「影」の落差が一層際立つようになった。こうした状況を踏まえ、中国でビジネスを成功させるには、次の点がキーポイントとなる。

1.現状

  1. (1)1979年の改革開放以来、外国資本呼び込みのために経済法が次々に整備され、近年は物権法、独占禁止法、不法行為法も制定された。一方で、運用や執行に問題が残っており、「人知から法治への過渡期」にあるといえる。
  2. (2)権利意識の向上に加えて、製造物責任に懲罰的損害賠償が認められる等、「訴訟社会到来の可能性」があり、特に外国企業に対する訴訟が増えている。
  3. (3)社会のルールとしての法律という位置付けから、法律違反に対しては厳しい罰則があり、「中国法は地雷の如し」といえる。
  4. (4)ビジネスの分野でも非常に多くの規制が課されており、何をするにも認可を取らなければならない。中国政府にとって、法律は人民に対する「管理の手段」である。外国人・外国法人も例外ではなく、自国の産業を保護する目的で、厳しい認可要件ないし継続的な年度検査を課すこともある。

2.対策

  1. (1)まずは「敵を知り、己を知る」ために、急ピッチで整備されている中国法を知り、中国人の権利意識を知るべきである。例えば、中国独禁法を十分理解してこそ、効果的なコンプライアンスプログラムを構築できる。
  2. (2)中国人は日本人より書面化を徹底する傾向にあるので、そうした「契約社会への対応」として、約束事をきちんと書面化すべきである。当事者間の口約束は、紛争の場面では通用しない。
  3. (3)権利侵害に対してはしっかりと反撃できる「戦略法務」を構築すべきである。リスクが発生した場合は現地の担当者だけではなく、日本の本社も一緒になって、法的根拠に基づいた対応をすべきである。必要に応じて弁護士も十分に活用し、訴訟になった場合に備えるべきである。訴訟になったときは、正攻法で攻めるしかない。
  4. (4)中国では欧米よりトラブルが起こりがちであるため、欧米と同様「ビジネスの基本を守る」ことである。中国ビジネスにおいてもしっかりと注意を払うことが大事である。
【経済基盤本部】
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