日本経団連タイムス No.3032 (2011年2月24日)

東海地方経済懇談会を名古屋で開催

−地域活性化、社会基盤整備、生物多様性保全などめぐり意見を交換


東海地方経済懇談会であいさつする米倉会長

日本経団連(米倉弘昌会長)と中部経済連合会(中経連、川口文夫会長)、東海商工会議所連合会(東海連、高橋治朗会長)は9日、名古屋市内のホテルで東海地方経済懇談会を開催した。懇談会には、経団連から米倉会長をはじめ評議員会議長、副会長らが、中経連、東海連からは川口会長、高橋会長をはじめ会員約250名が参加。「『日昇る国』の実現に向けた地域の持続的発展」を基本テーマに活動報告と意見交換を行った。

開会あいさつのなかで中経連の川口会長は、中部地域の経済情勢について、厳しい雇用情勢に加え、円高や政策効果の息切れなどの影響により、全国同様に厳しい状況が続いていると説明。中部地域の発展に向け、(1)技術力を活かしたものづくりのさらなる振興(2)新しい技術革新を推進する人材の育成(3)ものづくりを支える社会資本の整備(4)地方分権改革や道州制の推進――など、将来を見据えた取り組みを着実に進めていきたいと抱負を述べた。

続いてあいさつした経団連の米倉会長は、まずわが国は、経済の本格的な自律回復の見通しが開けていないなかで、人口の減少、急速な高齢化、危機的な財政状況、社会保障負担の増大など構造的な課題を抱えていると改めて指摘。今年は、わが国が力強い経済を取り戻し、新しい未来を拓くための正念場の年であると強調したうえで、年頭に発表した「新年メッセージ」で掲げた項目に積極的に取り組んでいくとの意向を示した。さらに、課題解決に向けた経団連のアクションプランである「サンライズ・レポート」について説明し、「未来都市モデルプロジェクト」の実現に向けて、最大限努力していくと述べた。

■ 活動報告

第1部の活動報告では、経団連側から、大橋洋治副会長が「今次労使交渉における経営側の基本姿勢」、森田富治郎副会長が「社会保障制度改革の推進」、渡辺捷昭副会長が「税制抜本改革と番号制度の導入」、佐々木幹夫副会長が「TPP(環太平洋経済連携協定)をはじめとする経済連携の推進」、渡文明評議員会議長が「農業改革の推進」、清水正孝副会長が「会社法をめぐる動向」について説明した。

一方、中経連、東海連側からは、まず松下雋・中経連副会長が「新しい地域づくりに関する産学共同研究の実施」について発言した。同共同研究は、中経連が人口減少時代に地域社会が抱える課題の克服を研究ニーズとして提示し、名古屋大学がこれまで蓄積した研究シーズを提供し、両者の緊密なコミュニケーションのもとに検討を重ね、将来のあるべき住まい方とその実現に資する法制度を提言したものである。この経験を産学連携の一つのモデルとして、他の分野でも活かしていきたいとの意向が示された。

続いて名古屋商工会議所の岡谷篤一副会頭は、「中小企業の国際ビジネス支援」について報告した。同会議所では、海外展開の経験は少ないものの、高い技術力や品質管理手法を持つ中小企業を対象に、海外取引や進出のための実務習得を目的とした勉強会の開催、ミッションの派遣等を行ったと説明。経済のグローバル化とともに、世界を牽引できる地域として発展できるよう、今後もこうした取り組みに注力していきたいと述べた。

■ 意見交換

第2部の意見交換では、中経連、東海連側から、(1)COP10開催地である中部地域の生物多様性保全活動において、先導的な役割を果たしていく(2)人口減少時代には、都市の将来像としてコンパクトシティー化が求められ、その実現に向けて市民を巻き込んだ息の長い取り組みを進めていく(3)次世代ものづくりの情報発信地である「中部産業首都圏」を目指すことで、日本経済全体の活性化に貢献していく(4)地域経済の自立的発展を確保するためには、リニア中央新幹線の早期実現や道路整備など、インフラ整備が不可欠である(5)一宮市を中心とする尾州地域では、伝統産業や技術を活かした「ジョイント尾州ブランド」を構築し、国際展開を図っている(6)各務原市では、関係者の連携のもと、地域ブランド「各務原キムチ」の構築やその過程のドラマ化などを通じて、地域活性化に取り組んでいる――などの発言があった。

これに対して経団連側は、(1)COP10期間中に発足した「生物多様性民間参画パートナーシップ」は、企業の生物多様性への取り組みのスケールアップを図るものであり、引き続き中部財界とも連携して進めたい(坂根正弘副会長)(2)コンパクトシティー化を推進するうえでは、インセンティブとなる規制緩和や予算、税制などの誘導策が不可欠である(岩沙弘道副会長)(3)製造業の競争力強化のためには、ハイテク産業の育成や技術の振興など、イノベーションの創出力をさらに高める必要がある(西田厚聰副会長)(4)活力ある地域経済圏を構築するためにも、産業集積地や都市、観光地が有機的に結ばれるよう、高速道路や鉄道網を広域的なネットワークとして整備することが求められる(川村隆副会長)(5)地域活性化のためには、観光振興も重要な柱の一つであり、観光コンテンツの充実は喫緊の課題である(佃和夫副会長)(6)地域の創意工夫を活かした地域活性化に向けては、広域的な産業振興や人材育成の取り組みにより地域の魅力を高める必要があり、道州制の導入も重要となる(前田晃伸副会長)――と発言した。

【総務本部】
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