日本経団連タイムス No.3032 (2011年2月24日)

欧州駐在大使との懇談会開催

−日・EU関係の現状と課題やEUの動向などで説明聞く


日本経団連は2日、東京・大手町の経団連会館で欧州駐在大使との懇談会を開催し、「日・EU関係の現状と課題」「EUの動向」などについて説明を聞くとともに懇談した。日本経団連からは、米倉弘昌会長、榊原定征、氏家純一、大橋洋治、渡辺捷昭、西田厚聰、川村隆、中村芳夫の副会長7氏、小林喜光ヨーロッパ地域委員会共同委員長らが出席した。
説明概要は次のとおり。

■ 日・EU関係の現状と課題=八木毅・外務省経済局長

今年中の日EU EPA交渉の立ち上げは、日本政府の大方針である。2009年4月から検討してきた4つの非関税案件について、昨年12月の合同ハイレベル・グループ会合でようやく合意した。これらは狭い分野の個別案件であり、今後は非関税措置、関税などをより大きなパッケージとして日本側の考え方を提示したい。EU内には日本とのEPAに消極的な国もあるが、オールジャパンでの対応が重要であり、5月の日・EU定期首脳協議に向けて、経済界の協力も得て全力で取り組む。

■ EUの動向=小田野展丈・EU代表部大使

現在の欧州経済は、ユーロ安により域外輸出が拡大し、全般的には持ち直しているものの、失業率が高止まりするなど課題もある。一部の国の財政悪化とソブリンリスクの高まりについては、再発防止のための各種措置が講じられている。日EU EPAについては、日本側のさらなる非関税措置への取り組みがなければ、加盟国や産業界の説得は困難との声がある。欧州委員会のバローゾ委員長はじめ幹部に日本の立場と努力、日本企業の欧州での活動を説明しており、引き続きEU側の理解促進に努める。

■ 英国の情勢=林景一・駐英国大使

昨年発足した保守・自民連立政権の最大の課題は、財政再建と経済回復の両立である。財政収支の黒字化に向けて、2014年度までに各省予算の平均19%削減、消費税引き上げ等により合計1100億ポンドを改善する。同時に、法人税減税(28%→24%)、インフラ整備、強みを有する産業への戦略的支援などの経済成長戦略を推進し、10年は2.1%、11年以降は2.5%の経済成長を見込む。英国政府は、すでに日EU EPA支持を表明しており、より積極的に活動するよう働きかけている。

■ ドイツの情勢=神余隆博・駐ドイツ大使

ドイツ経済は好調で、輸出増に加えて内需が寄与し、2011年も継続的な成長が見込まれる。11年の財政赤字は対GDP比3%以内に抑制されるだろう。失業率も順調に低下するなか、唯一の懸念はインフレである。日本とのEPAについて、官民で温度差がある。政府は、濃淡はあれ概ね支持、または中立の立場であるのに対して、民間は、自動車業界の意向もあり、ドイツ産業連盟(BDI)が反対している。独自動車業界は日本市場におけるドイツ車の占有率の低さが不満であり、これが改善しない限り、日本とのEPAに踏み切れないのではないか。交渉開始に向けて産業界同士の対話を活発化させてほしい。

■ ロシアの情勢=河野雅治・駐ロシア大使

2012年3月に大統領選を控え、メドベージェフ大統領・プーチン首相の二頭体制は、国民の高い支持を得て安定的に推移している。08年末から大幅に悪化したロシア経済は、10年に金融経済危機前の水準に回復した。経済の資源依存からの脱却と近代化の推進を志向しており、WTO加盟交渉が大詰めを迎えるなか、今後は経済自由化がカギになる。12年以降、ウラジオストクAPECやソチ五輪などによりインフラ整備が進むだろう。日本企業への期待は高まっており、近代化をキーワードにビジネス拡大の潜在力は大きいと言える。

■ スペインの情勢=高橋文明・駐スペイン大使

スペイン経済情勢の悪化が懸念されているが、GDPはG8のカナダやロシアを上回る。政府債務は欧州主要国のなかで最低レベルであり、ソブリンリスク顕在化の可能性も低い。問題の財政赤字について、政府は付加価値税引き上げ、公務員給与削減、年金改革など経済構造改革に真剣に取り組んでおり、2013年に財政赤字の対GDP比3%以内への抑制を目指している。諸改革の結果、今年のGDPは0.7%のプラス成長に転じる見込みである。

【国際経済本部】
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