日本経団連タイムス No.3032 (2011年2月24日)

シャルマ・インド商工相、インド工業連盟一行との懇談会開催

−日印包括的経済連携協定で拡大する日印パートナーシップに期待示す


講演するシャルマ商工相

日本経団連は16日、東京・大手町の経団連会館で、日印包括的経済連携協定(CEPA)署名のため来日したアナンド・シャルマ商工大臣およびインド工業連盟のハリ・バルティア会長ら産業界一行との懇談会を開催した。司会を務めた西田厚聰副会長は冒頭のあいさつで、CEPAの署名を歓迎していると述べ、日印経済関係の発展に対する期待を示した。続いて、インドにおけるインフラ整備、製造業における産業協力、ビジネス環境の整備をめぐり、日印産業界で意見交換を行った。その後、シャルマ大臣が「台頭するインド−無限の機会に満ちた国」をテーマに講演した。講演の要旨は次のとおり。

■ インドの成長戦略

今回のCEPA署名は、日印両国にとって歴史的な出来事である。また、友好を深めてきた両国は、来年に国交樹立60周年を迎える。世界の政治情勢は大きな転換期のなかで新たな均衡を模索している。インドを含む新興国が、世界経済の回復を引っ張っている。インドは今後、何十年も成長率の高い国であり続けるであろう。
インドの持つ長所の一つが人材であり、起業家や若年層が変化を主導しつつある。また、インドが成長を続けるうえで、成長のメリットが国民にあまねく行きわたるようにする必要がある。そのためには、製造業を拡大し、若年層に雇用機会を提供し、職業訓練をしていく必要がある。それを実現するうえで、日本は重要なパートナーとなり得る。またインドは、先端技術にも関心を持っており、インド工科大学をはじめ世界レベルの大学、研究機関を強化していきたい。

■ CEPAで拡大する日印経済関係

CEPAにより、日印で新しい可能性が開ける。日印間のCEPAは、インドが締結した経済連携協定のなかで、最も野心的なものである。2015年より前に、日印の貿易額は倍増するだろう。日本からすでに700社以上がインドに進出しているが、進出企業はさらに増えるであろう。製造業以外でも、農業や食品加工、IT、ライフサイエンス等の分野で協力が期待できる。インドは世界のジェネリック薬品の4分の1を生産しており、競争力がある。インド企業とのパートナーシップを組んでもらいたい。

■ インフラ整備の推進とビジネス環境整備

インドにとってDMIC(デリー・ムンバイ間産業大動脈構想)は重要なプロジェクトであり、同時に南部にも回廊を整備していく必要がある。回廊を整備し、取引コストを下げることで輸出競争力をつけることが可能となる。この分野での日本の貢献は大きい。
インド政府は、これらのプロジェクトにおける課題を認識し、投資環境の改善が段階的に図られており、投資家の懸念に応えるため、中央政府と地方政府の間で調整を図っている。また、プロジェクトにおける土地収用はセンシティブな問題であるが、現在、新しい法案が議会に提出されている。直接投資に関する手続きについても、投資規模に関する規制の緩和や手続きの簡素化を進めている。
さらに、製造拠点としての魅力を増すために、科学技術人材の育成を推進している。「Investment India」を旗印に、共同でビジネスができる環境を整備しつつある。09年から10年にかけて、世界の直接投資が大幅に減少したなかで、インドは100億ドルもの海外からの投資誘致に成功している。

■ 戦略的パートナーシップ

前原外務大臣との会談では、日印でレア・アースの共同開発を進めていこうという話をした。また、日印双方にとって中小企業は重要である。日本では中小企業が多くの強みを有しており、協力を進めたい。
DMICでは、日本企業にリーダーとして参加してもらいたい。日印両政府が拠出するファンドは、日本企業の投資を促すうえで役立つであろう。投資家の懸念等も踏まえ、DMICへの投資が進むよう、インド政府としても検討していきたい。

【国際協力本部】
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