日本経団連タイムス No.3032 (2011年2月24日)

21世紀政策研究所が第78回シンポジウム

−長浜参議院議員迎え社会保障制度抜本改革で論議


社会保障制度の抜本改革について論議した
21世紀政策研究所の第78回シンポジウム

日本経団連の21世紀政策研究所(米倉弘昌会長、森田富治郎理事長)は14日、東京・大手町の経団連会館で、第78回シンポジウム「新しい社会保障の理念−社会保障制度の抜本改革に向けて」を開催した。同シンポジウムでは、21世紀政策研究所がこの1年取り組んできた研究プロジェクト「社会保障制度のあり方」の成果を発表するとともに、社会保障制度の抜本改革に向けての諸課題についてパネルディスカッションを行った。

まず、来賓の長浜博行参議院議員(元厚生労働副大臣。現在、民主党「社会保障と税の抜本改革調査会」副会長)が、「これからの社会保障のカタチ」と題して基調講演。社会保障制度の抜本改革が必要となった経済・社会構造の変化や現在の政府与党の検討状況、さらに諸外国との比較をもとに給付は子育て世代にも留意したベスト・ミックスを指向する必要があること、超党派の協議の必要性という点では与野党ともに共通認識があることなどを説明した。

続いて、同研究所研究主幹の岩本康志東京大学大学院経済学研究科教授が、「新しい社会保障の理念−市場とセーフティーネットを両輪に」と題して研究成果を報告。市場メカニズムを通じて効率性を高めると同時に、セーフティーネットの機能も強化する、という従来わが国にはなかった組み合わせを追求すべきであると主張した。また、事後的な最低生活保障にとどまらず、実質的な機会の平等を通じて個人の自立を支援することを目指すべきと指摘した。

パネルディスカッションでは、岩本教授をモデレーターとして、同研究所研究会の委員である鶴光太郎経済産業研究所上席研究員、菊池馨実早稲田大学法学学術院教授、鈴木亘学習院大学経済学部教授に、長浜議員も加わり、活発な議論が展開された。

菊池氏から「個人の自立支援のための社会保障」、鈴木氏から「供給サイドの課題」、鶴氏から「柔軟な労働市場とセーフティーネット」について、それぞれ考え方の紹介があった後、「理念的な議論をしている余裕はなく、早く具体論に入る必要がある」「ねじれ国会の状況では学識経験者などによる党派を超えた会議体ができても、そこでの決定事項が本当の『決定』にならない懸念があるが、広く関係者が社会保障の全体像を描く常設の会議体を設け、繰り返し勧告を行っていく必要がある」「消費税の目的税化は、給付と負担をリンクさせる意味からも必要ではないか」等さまざまな意見が出された。

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シンポジウムでの議論の詳細については、21世紀政策研究所新書として刊行予定である。

【21世紀政策研究所】
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