日本経団連タイムス No.3034 (2011年3月10日)

「未来都市モデルプロジェクト最終報告」公表

−“日本まるごと活性化”を目指す


日本経団連(米倉弘昌会長)は7日、「未来都市モデルプロジェクト最終報告」を公表した。報告書の概要は次のとおり。

8分野を対象に全国12都市・地域で実施

■ プロジェクトの背景

わが国全体に閉塞感が漂うなか、この難局を打ち破るには、企業が活力を取り戻し、経済成長を牽引する必要がある。そのため、わが国の強みである「技術力」と「人材力」に磨きをかけ、世界に先駆けてイノベーションを創り出す「イノベーション立国」を実現していかなければならない。

経団連はこれを自ら体現するため、「未来都市モデルプロジェクト」を実施する。

■ プロジェクトの目的

同プロジェクトでは、地球環境問題や人口減少・少子高齢化などのわが国が抱える課題の解決に挑み、「課題解決型イノベーションモデル」を構築する。また、誰もが住みたいと思うまちづくりを目指す。さらに、各社が有する技術やノウハウをパッケージ化し、わが国産業の競争力強化につなげる。このプロジェクトの成果は、国内さらには海外に展開し、成長分野として発展させる。

■ プロジェクトの枠組み

同プロジェクトは、日本全国12都市・地域で実施する(図表参照)。

対象とする分野は、(1)低炭素・環境共生(2)先進医療・介護(3)次世代交通・物流システム(4)先端研究開発(5)次世代電子行政・電子社会(6)国際観光拠点(7)先進農業(8)子育て支援・先進教育――である。これらの分野から複数の機能を組み合わせてプロジェクトを行う。

基本的には民間主導のプロジェクトである。ただし、企業のみで取り組めない部分は、地方自治体、医療機関、教育機関、研究機関、農業組織などと連携、協力して取り組む。プロジェクトによっては、既存あるいは現在構想中の政府、自治体、民間等のプロジェクトと連携、協力する。

また、規制緩和やシードマネー(起業資金)が必要なものについては、政府の総合特区制度などを活用する。

プロジェクトの事業期間は概ね2年から5年程度を予定している。ただし、まちづくりなどの状況に応じて、期限を区切らないものもある。今回のプロジェクトは実証実験までとし、その後の事業化、国内外へのビジネス展開は、参加企業が個別に判断する。

◇◇◇

経団連は、このプロジェクトを通じて、単なる政策集団にとどまることなく、行動する経済団体としてさらに積極的な活動を行う。

※個別プロジェクトの詳細については、ホームページの「未来都市モデルプロジェクト最終報告」(URL=http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2011/013/index.html )を参照いただきたい。

個別プロジェクトの概要
名称場所実施主体主な取り組み
1.岩手南部循環型
バイオマス都市
岩手県
南部地域
釜石市、新日本製鐵、
東芝他
  • 間伐材等の林地残材を木質バイオマスとして、発電やガスに利用する。
  • 木質チップから精製したガスを使って、ナノカーボンを製造する。
  • 廃食用油、し尿汚泥、漁業系廃棄物の利活用システムを構築する。
2.福島医療ケア
サービス都市
福島県
地域
檜枝岐村、
東日本電信電話他
  • 病院や診療所間等で患者情報を共有し、地域一体型の診療体制を実現する。
  • テレビ電話等情報端末を利用した遠隔での健康相談・診療を行う。
  • 救急搬送時の患者情報の共有、デマンド交通、ICTによる子育て支援等を行う。
3.日立市スマート
工業都市
茨城県
日立市
日立市、
日立製作所他
  • 工場でのエネルギー利用の最適化により、省エネを実現する。
  • 外国人や地元の中小企業に対して技能教育を提供する。
4.柏の葉
キャンパスシティ
千葉県
柏市
柏市、三井不動産、
日立製作所、
東京電力、住友化学、
UDCK、TEP他
  • 健康管理の見える化、在宅医療・介護の連携等安心健康な居住環境をつくる。
  • 住宅、建築物、交通等に低炭素技術を導入し、低炭素型のまちづくりを行う。
  • 都市型農業の振興および地域ベンチャーの育成等新産業・雇用の創出を図る。
  • 地域連携支援組織等の確立によって、地域主体の都市経営を行う。
5.豊洲スマート
電化都市
東京都
江東区
豊洲
東京電力、
江東区他
  • 充電インフラ、電化モビリティ、蓄電池のスマート利用の環境整備を行う。
  • 新型電子式メーター、熱源水ネットワーク等により街全体のCO2を削減する。
6.藤沢環境創造都市
神奈川県
藤沢市
パナソニック、
藤沢市他
  • 省エネ・創エネ・蓄エネソリューションを導入し、街まるごとCO2を削減する。
  • 先進的なセキュリティ、モビリティ、ヘルスケア等のコミュニティサービスを導入する。
7.豊田次世代
エネルギー・
モビリティ都市
愛知県
豊田市
豊田市、トヨタ自動車、
住友化学、
名古屋大学他
  • 家庭やコミュニティに最先端の創エネ、省エネ、蓄エネシステムを導入する。
  • ITSや次世代自動車など次世代の交通システムを導入する。
  • 車載器を使い、健康情報を取得、蓄積、活用する健康モニタリングの実証を行う。
8.京都e-BUS
ネットワーク都市
京都府
京都市
京都市、
三菱重工業
  • e-BUS(電気バス)、e-BRT(電気Bus Rapid Transit)を導入する。
  • Park & Rideやトランジットモールを導入する。
9.山口アクティブ・
エイジングシティ
山口県
山口市
山口商工会議所、
日立製作所、
山口市他
  • がんや生活習慣病を早期発見、効果的に治癒する先進医療拠点を形成する。
  • スローフード大学を基点に食文化をキーワードとしたスローツーリズムを展開する。
  • 地域の絆で人材・物資・資金・情報が還流する仕組みを構築する。
10.西条農業革新都市
愛媛県
西条市
西条市、住友化学、
三菱重工業/三菱
農機、パナソニック他
  • GPSによる無人作業や精密散布、環境負荷の低い農業生産を実現する。
  • トレーサビリティや工程管理のシステム化により農産物流通の革新を図る。
  • 教育施設や教材、登下校時の児童のセキュリティにICTを活用する。
11.北九州アジア
戦略・環境拠点都市
福岡県
北九州市
北九州市、北九州
スマートコミュニティ
創造協議会、海外
水循環ソリューション
技術研究組合他
  • スマートグリッドを基盤とした次世代技術を使ってスマートシティを構築する。
  • 海水淡水化および下水の再利用など海外展開に向けた水ビジネスの実証を行う。
  • CO2排出を徹底的に抑えた環境対応型工場群を構築する。
  • アジアにおける次世代環境自動車の研究開発・生産の一大拠点を形成する。
12.沖縄物流拠点都市
沖縄県
(那覇市他)
沖縄県、全日本空輸、
那覇市他
  • 空港および港を経済特区として東アジアの国際物流拠点を構築する。
  • 海運と航空の連携や物流における省人化・低炭素化など先駆モデルを構築する。
【産業政策本部】
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