日本経団連タイムス No.3036 (2011年3月24日)

シンポジウム「アジア債券市場整備と域内金融協力」を開催

−アジア債券市場整備での民間の役割を中心に議論/21世紀政策研究所


活発な議論を展開したパネル討論

日本経団連の21世紀政策研究所(米倉弘昌会長、森田富治郎理事長)は3日、東京・大手町の経団連会館で、第80回シンポジウム「アジア債券市場整備と域内金融協力」を開催した。

21世紀政策研究所では、昨年3月のアジア・ビジネス・サミット共同声明のなかで、アジア債券市場について「必要なインフラストラクチャーの整備のあり方を検討する」とうたわれたことを受けて、第2回アジア・ビジネス・サミットに提出すべく、6月から研究プロジェクト「アジア債券市場整備と域内金融協力」に取り組んできた。

そこで、同シンポジウムでは、同研究プロジェクトの成果を発表するとともに、アジア債券市場の発展に向けて、民間の果たす役割を中心にパネルディスカッションを行った。

まず、シンガポールから招いたステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズのホン・チェン・アジア地区リージョナル・ディレクターが、「アジア債券市場育成の現状」と題して基調講演を行った。チェン氏は、「アジア債券市場の整備については、この5〜6年の間に、ASEAN+3、EMEAP(東アジア・オセアニア中央銀行役員会議)、アジア開発銀行などでさまざまな施策が展開され、大きく進捗した。この勢いを今後継続していくためには、民間の関与が大変重要になっている」と強調した。

続いて、21世紀政策研究所研究主幹の河合正弘・アジア開発銀行研究所所長が、今回取りまとめた報告書「アジア債券市場整備と域内金融協力」の概要を説明し、「アジア格付機関の設立」「アジア社債ファンドの創設」をはじめとして、民間主体で取り組むもの、国際機関・政府・公的機関に働きかけるものをそれぞれ5つずつ、合わせて10項目を提言した。

パネルディスカッションでは、河合研究主幹をモデレーターとして、同研究会のメンバーである黒沢義孝・日本大学経済学部教授、広瀬真人・野村総合研究所第二戦略研究室長、鈴木典之・大和総研アジア事業開発部シニアコンサルタントに、ホン・チェン氏、飯田純・三井住友銀行証券ファイナンス営業部副部長が加わり、活発な議論が展開された。

各パネリストから、域内格付け、銀行から見たアジア債券市場、中期手形(MTN)、アジア・ファンドパスポート(投資信託の域内相互認証制度)、経団連の活動について、それぞれ報告が行われた後、モデレーターから、「新たに設立する格付機関と既存の機関はすみ分けできるのか」「債券市場と銀行部門は競争関係にあるのではないか」「アジア地域でMTNの共通ルールができない理由は何か」「シンガポールや香港では、なぜアジアの他の国の債券を扱わないのか」「民間主導の具体的なイメージはどのようなものか」との課題が提起され、活発な議論が行われた。

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シンポジウムでの議論の詳細は、21世紀政策研究所新書として刊行予定である。

【21世紀政策研究所】
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