今回の東北地方太平洋沖地震により、事業活動の継続が困難となる企業も多数に上っている。そこで厚生労働省は、雇用調整助成金の活用、計画停電に伴う休業の取り扱い、労働保険料・社会保険料の納付猶予などについて通知した。なお、雇用調整助成金の活用については22日、厚労省から日本経団連に対して周知依頼があった。通知等の詳細は次のとおり。
雇用調整助成金(中小企業緊急雇用安定助成金を含む)は、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、従業員の雇用を維持するために一時的に休業等を行った場合、当該休業等に係る休業手当相当額等の一部(中小企業で原則8割)を助成するもの。同助成金は、東北地方太平洋沖地震被害に伴う「経済上の理由」で事業活動が縮小した場合についても利用することができる(青森県等の災害救助法適用地域以外の事業所も含む)。また、雇用の維持に取り組む事業主を支援するため、支給要件の緩和を行っている。
厚生労働省は17日、「震災による経済上の理由」の具体的な事例を公表した。
あわせて17日、被災地域事業主に対しては、特例が適用されることが通知された。具体的には、青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県のうち災害救助法適用地域に所在する事業所の場合、今回の地震に伴う経済上の理由により最近1カ月の生産量、売上高等がその直前の1カ月または前年同期と比べ5%以上減少していれば対象となる。
また、2011年6月16日までの間については、災害後1カ月の生産量、売上高等がその直前の1カ月または前年同期と比べ5%以上減少する見込みの事業所も対象となり、また同日までの間に提出された計画届については、事前に届け出たものとして取り扱われる。
厚生労働省は15日、計画停電が実施される場合の労働基準法第26条(休業手当)の取り扱いについて、行政通達を発出した。
通達の主な内容は、(1)計画停電の時間帯における停電を理由とする休業については原則、休業手当の支払い義務はない(2)時間帯以外の休業については原則、支払い義務がある――というもの。
また、(2)の場合について、「計画停電が実施される日において、計画停電の時間帯以外の時間帯を含めて休業とする場合であって、他の手段の可能性、使用者としての休業回避のための具体的努力等を総合的に勘案し、計画停電の時間帯のみを休業とすることが企業の経営上著しく不適当と認められるとき」は支払い義務はないとされている。
厚生労働省は13、14日に、被災地域の労働保険料・社会保険料の納期限の延長・猶予に関する行政通達を発出した。
今回、納期限の延長・猶予の対象となるのは、青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県の県内に所在地を有する事業場、事務所等および船舶所有者が納付する労働保険料(労働保険料、特別保険料および一般拠出金)・社会保険料(健康保険、厚生年金保険および船員保険の保険料ならびに子ども手当に係る拠出金)で、2011年3月11日以降に納期限が到来するものである。被災県内の対象地域は、今後、被災の状況を踏まえて見直しが行われることになっている。
対象地域の延長後の納期限は、災害のやんだ日から2カ月以内の日が定められることになっているが、被災者の状況に配慮し、災害からの復旧状況等を踏まえたうえ、告示で定められる(後日、厚生労働省のホームページに掲載予定)。
また日本年金機構も、同じ内容で社会保険料の納期限延長を知らせている。口座振替納付を辞退する場合は3月29日までに最寄りの年金事務所に連絡する必要がある(辞退をしない場合は本来の納期限で口座から引き落とされる)。
なお、詳細は厚生労働省ホームページ(URL= http://www.mhlw.go.jp/ )、日本年金機構ホームページ(URL= http://www.nenkin.go.jp/ )に掲載されている。