日本経団連タイムス No.3039 (2011年4月21日)

地域主権と道州制を推進する国民会議、名古屋で道州制シンポジウムを開催

−震災への対応も念頭にパネル討議/全国各地から300名参加


地域主権と道州制を推進する国民会議が
開催したシンポジウムでのパネル討議

日本経団連、日本商工会議所、経済同友会の経済3団体で構成する「地域主権と道州制を推進する国民会議」(以下、国民会議)は7日、愛知県名古屋市で中部経済連合会などと共催して「道州制シンポジウムin名古屋」を開催した。当日は愛知県をはじめ全国各地から約300名の参加を得て、牧野光朗・長野県飯田市長、前田正子・甲南大学マネジメント創造学部教授(内閣府地域主権戦略会議議員・元横浜市副市長)、池田弘一・日本経団連評議員会副議長・道州制推進委員会共同委員長/経済同友会副代表幹事・地域主権型道州制委員長、古角保・中部経済連合会副会長・道州制推進委員会委員長が、昇秀樹・名城大学都市情報学部教授のコーディネートのもと、地域主権改革と道州制をテーマに震災への対応も念頭に置きつつパネル・ディスカッションを行った。発言の概要は次のとおり。

牧野飯田市長

飯田市のある長野県南部では、飯田市を含む14市町村が参加して南信州広域連合を設立しており、東日本大震災を受けて福島県南相馬市からの避難民の受け入れも行った。受け入れは要請があってから1日で実現したが、これは南信州広域連合を通じて14市町村の連携体制が整っていたことが大きい。道州制は誰が政策を立案し実施すべきなのかという議論でもある。右肩上がりの経済成長が続くなかでは、中央政府、地方政府のいずれが政策を立案しても問題なかった。しかし人口が減少し、高齢化が進むなかでは住民に身近な自治体の政策立案能力が、その地域の魅力を決めることになる。自治体の政策立案能力を高めるには、既存の行政区画にとらわれるのではなく、住民の生活圏・経済圏に視点を合わせ最適となるかたち(地域)で政策運営をしていくことが欠かせない。その先に道州制はあると思う。

前田甲南大学教授

これまでの日本は右肩上がりの経済成長を遂げてきた。市長や議会は増大する財源を基に住民の要望を次々に実現することができた。しかし今後は政策の優先順位を付け、事業の廃止も実施していかなければならない。拡大する経済が終わり、自治のあり方も大きく変わっている。地域主権改革とは「補完性の原則」に基づく改革である。これまでの地方分権の議論は、国が都道府県に、都道府県が市町村に権限を「分け与える」という発想であった。地域主権改革は権限を「分け与える」のではなく、住民の身近な市町村に権限を集約することが基本である。

池田経団連道州制推進委員会共同委員長

道州制の目的は地域を活性化し国民生活を豊かにすること。地域がそれぞれの特色を活かして創意工夫を発揮し、自らの判断と責任で地域の活性化に取り組むことを可能にする。中部地域の特徴はものづくりを成長にうまく結び付けていることにあるが、こうしたものづくりの強みは県という単位を超え、より広範に産業振興が行われてきた成果である。道州制はこのような県境を越えた産業振興を有効に進めるうえで極めて重要である。また、震災復興を進めるためにも、地域に権限等を移譲し広域で施策を推進するのが効果的である。こうした取り組みを通じ、東北が道州制のモデルとなり、早期の復興を果たすことを期待している。

古角中経連道州制推進委員長

道州制を実現していくためにはまず、道州制に移行した際の財政格差の問題を解決すべきだ。州および基礎自治体が補助金・交付金に依存せず、自立した財政運営を行い得る体制の確立が必要である。また、道州制基本法の策定、小規模自治体への対応、区割りの議論もしていくことが求められる。

昇名城大学教授

震災の復旧、復興にあたっては、地域が主体となって必要な施策を立案・実施していくべきである。そのため東北3県、あるいはより広い圏域で広域連合を設立し、道路や鉄道、災害対策等を進めるのが望ましい。これは将来の道州制のモデルにもなり得るのではないか。

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国民会議は、2009年12月に第1回会合を東京で開催して以降、熊本市、高松市でシンポジウムを行い、今回で4回目。地域主権改革や道州制の導入に向けた機運を盛り上げるため、今後もシンポジウム等の活動を続けていくこととしている。

【産業政策本部】
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