日本経団連タイムス No.3040 (2011年4月28日)

宇宙政策の現状と課題聞く

−薬師寺・慶應義塾大学名誉教授から/宇宙開発利用推進委員会


日本経団連は19日、東京・大手町の経団連会館で、宇宙開発利用推進委員会(下村節宏委員長)を開催した。当日は、政府の総合科学技術会議の前議員で、現在宇宙開発戦略専門調査会の委員を務める慶應義塾大学の薬師寺泰蔵名誉教授から、宇宙政策の現状と課題について説明を聞くとともに意見交換を行った。薬師寺名誉教授の説明概要は次のとおり。

総合科学技術会議の常勤議員を4年、非常勤議員を4年務めて、第3期科学技術基本計画のドラフトを担当した。
宇宙関連予算は減少が続いていたので回復させようと考え、「科学技術予算は未来への投資である」と小泉純一郎総理(当時)に訴えた。

■ わが国の宇宙政策

アメリカのデルタやタイタンと比べ、日本のロケットの打ち上げ回数は少ない。JAXA(宇宙航空研究開発機構)がH−2A6号機の打ち上げに失敗したのを契機に、ロケットの確実な打ち上げのために、民間企業が品質管理を行い、打ち上げに責任を持つ体制に変えた。また、種子島射場は風が強く打ち上げ環境も厳しいことから、複数の射場があった方がよいだろう。

わが国の宇宙政策の透明化、意思決定と予算執行の一元化の促進に向けては、内閣府の下に宇宙庁を設置すべきである。開発や利用について関係省庁が複数に及ぶ準天頂衛星システムをどのように一元的に構築するかが、宇宙庁の課題になる。

■ 産業界への期待

経団連が2010年4月に公表した「国家戦略としての宇宙開発利用の推進に向けた提言」を、私が参加していた宇宙開発戦略本部の有識者会議が報告書をまとめるにあたり参考にした。

宇宙政策を進めるうえでは、人材育成が重要であり、大学の航空宇宙学科に優秀な学生を集める必要がある。実際に衛星やロケットを開発し、ものづくりをすることで人は育つ。企業は優秀な人材を抜擢し、モチベーションを高めていくよう努めるべきである。

韓国では簡便な小型衛星と小型ロケットの開発に力を入れている。わが国もこうした分野に力を入れるべきであり、経団連にも支援してほしい。

<意見交換>

「宇宙開発利用に対する国民の理解が必要である」という意見に対して、薬師寺名誉教授は「国民にとってわかりやすい医療や環境で、宇宙開発がどう役立つかについて説明すべきであると思う。日本の科学技術力が高いことは国民の誇りである」と答えた。

【産業技術本部】
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