日本経団連タイムス No.3042 (2011年5月26日)

第81回シンポジウム開催

−地域主権時代の地方議会のあり方を議論/21世紀政策研究所


21世紀政策研究所が開催した第81回シンポ
ジウム「地域主権時代の地方議会のあり方」

日本経団連の21世紀政策研究所(米倉弘昌会長、森田富治郎理事長)は16日、東京・大手町の経団連会館で第81回シンポジウム「地域主権時代の地方議会のあり方」を開催した。同研究所では研究プロジェクトとして、地方議会、特に都道府県議会を中心とした実態調査を行い、地方議会改革の進展状況等の分析および広域化・道州制を見据えた地方議会の将来展望について検討してきた。シンポジウムでは同調査結果の報告と活発なパネルディスカッションが行われ、経団連会員企業代表者や地方議員など多数が参加した。

まず、森田理事長が開会あいさつで、「地域経済の再生には地域主権型社会への転換と地方自治の『担い手』の存在がカギとなる。一方、『担い手』の一つである地方議会の現状には住民意識との乖離など問題が指摘される。また、市町村合併の増加などを背景に都道府県の存在意義も問われている」と調査を始めたねらいを述べるとともに、地方議会のあり方等をめぐる今後の政策論議活性化の必要性を訴えた。

続いて、松沢成文・前神奈川県知事が基調講演を行い、「都道府県は国と市町村との中2階的存在ともいえ、議会への住民の関心も低い。情報発信の積極化が必要」「議長・副議長は毎年交代せず任期を全うし、議会取りまとめにリーダーシップを発揮すべき」「議会は従来のオール与党・ロビイスト型から政策提案・議論型に転換し、オープンな場で知事と丁々発止の議論を行うべき」などと指摘した。

さらに、調査にあたった牧瀬稔・地域開発研究所主任研究員が報告を行った。調査結果から、「議会基本条例の制定、住民に向けての議会報告会・出前議会の開催などが議会改革の進展度合いと関係している」「執行機関と比べて議会の広域化は進んでいない」などの実態を明らかにしたうえで、今後の方向性として、議会報告会の充実、議会改革への取り組み方針を示す議会マニフェストの提示、議会事務局の強化、議会の活動・成果指標に基づく横断的なチェック機関の設置、議会間の連携・広域化の積極化などの提案を行った。

パネル討議などを展開

また、木下敏之・前佐賀市長がモデレーターを務めたパネルディスカッションには、中嶋年規・三重県議会議員、新川達郎・同志社大学教授、廣瀬克哉・法政大学教授が加わり、「議会事務局強化には外部人材の登用が有効。政務調査費を活用した会派での雇用も一案」「住民・行政・議会自身による多角的で客観的な議会チェックが必要」など議会改革のあり方についての具体的な提案がなされた。さらに、将来的な道州制の実現を見据えた議論も行われ、「道州制は究極の構造改革。首長による広域連合の次は議会の連合化が課題」「道州でも首長と議会の二元代表制が望ましい」「道州知事を置いたうえでの議院内閣制の導入も可能」「道州議会議員は住民が今の県に愛着のある間は各県選出がよい」「地域代表と比例代表による二院制も検討の余地がある」「道州制の実現には実際の経済圏とあわせて連携によるメリットが住民に伝わりやすい事例をつくり出す必要がある」など、多岐にわたる議論が展開された。

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シンポジウムでの議論の詳細は、21世紀政策研究所新書として刊行予定である。

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