経団連タイムス No.3047 (2011年6月30日)

日EU定期首脳協議の内容などについて聞く

−経済統合協定(EIA)交渉へのプロセス開始に合意/ヨーロッパ地域委員会


経団連は14日、東京・大手町の経団連会館でヨーロッパ地域委員会(横山進一共同委員長、小林喜光共同委員長)を開催。外務省の八木毅経済局長、経済産業省の佐々木伸彦通商政策局長から、5月28日にベルギーのブリュッセルで開催された日EU定期首脳協議の模様などについて聞いた。概要は次のとおり。

■ 外務省・八木局長

今回の日EU定期首脳協議では、経済面の自由貿易協定(FTA)・経済連携協定(EPA)ならびに政治面での拘束力を有する協定についての「交渉のためのプロセス開始」に合意、経済・政治一体で日・EU関係を強化することになった。交渉の範囲等を定めるスコーピングを可能な限り早期に実施するとともに、これに並行して、欧州委員会は加盟国から交渉権限を取り付けることになった。ただし、交渉権限を実際に取り付けるのはスコーピング終了後となろう。

協議後の共同記者会見において、ファン=ロンパイ欧州理事会常任議長は、「EU・日がFTAに向けて取り組むとの意向を共に確認することは大きな前進を意味する」と前向きな発言をしたのに対し、バローゾ欧州委員長は、従来に比べ前向きではあったものの、「正しい条件が満たされれば、(中略)交渉のためのプロセスを開始することに合意」「日本が、関税、非関税措置、政府調達といったEUが望んでいる諸事項について取り組んでくれると確信している」と強調することを忘れなかった。菅総理からは、わが国政府が一体となって非関税障壁や政府調達の分野でEU側の関心に取り組むことについて閣僚から了解を取り付けたことを紹介した。

スコーピングの早期実施に向けて、7月初旬にはEU側と会合する予定である。EU側は、各国からの交渉権限取得に6〜9カ月かかると見ており、11月のG20サミットでの交渉開始合意が当面の目標となる。近年EUがスコーピングを行ったFTAで交渉権限の取得に至らなかったものはない。EU側は、関税、非関税措置、投資、公共調達を関心分野としており、相当に高いレベルの自由化等を求めてくることが想定される。日本側としては、スコーピングを実質的な交渉と位置付け、政府一体となって取り組む。また、日本からEUに対しても具体的な要望を提示していきたい。

■ 経済産業省・佐々木局長

定期首脳協議の結果を踏まえ、産業界には次の4点をお願いしたい。第1は、日本企業による欧州製品の調達実績やEUへの投資実績のPRである。日本市場は閉鎖的との思い込みがいまだに強く、新幹線はやぶさのブレーキがドイツ製という事実はEUではあまり知られていない。第2は、欧州市場の非関税障壁案件の発掘・整理である。欧州側にも非関税障壁があることを指摘することで、交渉材料の一つとしたい。第3は、産業界同士の対話を通じたEU側要望の絞り込み・特定化である。具体的に何が問題で、どう解決してほしいのか、EU側の意図をつかめないことがある。欧州産業界との交流のなかで得た情報を共有させてもらいたい。第4に、加盟国政府・産業界への働きかけを継続してほしい。

EU側は手ごわい交渉相手であり、交渉開始は容易ではない。また、交渉入り後も難航が予想される。他方、7月からEU・韓国FTAが発効し、日本にとって不利な状況が積み重なっていくことになる。強い危機感を持っており、引き続き官民挙げて取り組んでいきたい。

【国際経済本部】
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