経団連タイムス No.3047 (2011年6月30日)

中国ビジネス展開における留意点と企業事例を聞く

−ブリッジコーディネーター活用がカギ/中小企業委員会


経団連は13日、東京・大手町の経団連会館で、中小企業委員会(澤部肇委員長)を開催し、台湾最大のIT業界団体である台北市コンピュータ協会の吉村章・駐日代表から「中国におけるビジネス展開に関する中小企業の事例報告と留意点」と題する講演を聞くとともに、2011年度の委員会の活動内容に関して意見交換を行った。

講演の冒頭、吉村氏は中国ビジネスを成功させるキーポイントとして、(1)スピード感のある意思決定(2)フットワークを活かした情報収集とフレキシブルな現場対応(3)チャレンジ精神旺盛なビジネスへの取り組み――の3点を指摘。その具体的な事例として、(1)現地視察を何度も繰り返すが、意思決定の遅さが致命傷になり「強み」を発揮しきれなかった企業(2)展示会で名刺交換をした中国企業を翌日には訪問して生産現場の様子を確認し、帰国後も情報交換を継続しながらネットワークづくりに取り組み、互いの強みを活かした相互補完関係を構築している企業(3)契約の最終段階で品質上の問題が発覚したため急きょ契約を白紙に戻し、帰国を延期して他の候補企業を探し出し、危機を乗り越えた企業――などの取り組みを紹介した。

また、中国ビジネスでは「企業対企業」の形態を保ちながらも、ビジネスの現場では「人対人」で動くことが基本であることなど、日本のビジネス慣行とは異なる点があることを踏まえた対応がトラブル回避につながる、と異文化理解の重要性を強調。中国の経営者の考え方や企業文化、アライアンス(提携)事業の目的を十分理解し、最終的にこちらに有利なアライアンス条件を勝ち取るために、双方の企業文化や経営者の考え方を理解し、必要な交渉・コミュニケーションスキルを持つ「ブリッジコーディネーター」(単なる通訳ではない、中国企業と日本企業の橋渡し役)をうまく活用していくことが、中国ビジネスの成否を大きく左右すると述べた。さらに、ブリッジコーディネーターについて、日本でのビジネス経験がある日本語が堪能な中国人や中国ビジネスに精通した商社OB、新卒の中国人留学生などのさまざまな人材が候補となり得るが、「最終的にはいかに社内で確保・育成していくかが重要になる」と指摘した。

最後に吉村氏は、アライアンス先を探す際には、国内外の展示会に参加することが取り組みの第一歩であり、切り口になると強調。そのうえで、「展示会を最大限に有効活用するため、事前準備から会期後のフォローまでをひとつのサイクルとし、取り組むべき課題を整理して綿密に組み立てる」など、実務的なノウハウなども披露した。

【労働政策本部】
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