経団連タイムス No.3047 (2011年6月30日)

大震災への対応踏まえた情報技術の役割と新IT戦略の進捗状況

−神成・慶應義塾大学准教授、吉田・内閣官房参事官から説明聞く
/情報通信委員会情報化部会


経団連は21日、東京・大手町の経団連会館で情報通信委員会情報化部会(遠藤紘一部会長)を開催し、慶應義塾大学環境情報学部の神成淳司准教授から「大震災への対応を踏まえた情報技術の役割」、内閣官房の吉田眞人内閣参事官から「新たな情報通信技術戦略の進捗状況」について説明を聞き、意見交換した。説明概要は次のとおり。

■ 大震災への対応を踏まえた情報技術の役割(神成准教授説明)

政府の東日本大震災復興構想会議のなかで数少ないICT(情報通信技術)の研究者として参加しているが、今回の震災では、ICTの利活用の必要性と課題を実感している。

例えば、被災者の安否確認では民間のサイトが活用されたが、一方でネット上に住民情報が流出してしまうという問題が生じた。避難先の自治体であらためて住民登録が行われたが、悪意の第三者により、なりすましの登録が生じた可能性がある。

被災地には、全国から医師が駆け付けたものの、平均滞在日数が3日であったため、診療録の引き継ぎが課題となっている。電子的な診療情報のバックアップに加え、ICTを利活用して医療情報を断絶させない仕組みの構築が重要である。

高齢者の引きこもり防止や、子どものメンタルケア等のために、遠隔からのフォローアップや、仮設住宅にICTを利用できる施設を併設し地域連携拠点とすることも必要である。

産業面では、トレーサビリティーの確保などによるブランド農水産物の復興・振興に向けた長期的な取り組みも必要である。

■ 新たな情報通信技術戦略の進捗状況(吉田参事官説明)

IT戦略本部では、昨年取りまとめた「新IT戦略」に基づき、各タスクフォースや専門調査会において、電子行政推進に関する基本方針等や、情報通信技術利活用のための規制・制度改革の対処方針、ITS(高度交通情報システム)に関するロードマップ等に関する検討を行い、提言案等がほぼ固まっている。今回の震災への対応も含め、新IT戦略の進捗状況を確認し、必要に応じ工程表のレビューを行う予定である。

<意見交換>

続く意見交換では、「復興構想会議とIT戦略本部はどのように連携しているのか」との質問に対し、「IT戦略本部の考えも復興構想計画に反映されると思われる。震災からの復興について、新IT戦略の工程表にも取り込んでいく予定である」といった考えが示された。

◇◇◇

また、当日は、経団連情報通信委員会提言案「復旧と復興と成長に向けたICTの利活用のあり方」の審議が行われた。同提言案は、27日に開催された情報通信委員会でも審議され、了承された。

【産業技術本部】
Copyright © Keidanren