経団連タイムス No.3048 (2011年7月7日)

「早稲田大学先進理工学研究科における大学院教育改革」をテーマに意見交換

−グローバルに活躍できる高度理系人材輩出へ/産業技術委員会産学官連携推進部会


経団連の産業技術委員会産学官連携推進部会(永里善彦部会長)は6月22日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、早稲田大学先進理工学研究科の西出宏之研究科長らから、現在進めている大学院教育改革の現状や今後の方向性について説明を聞いた。

西出氏はまず、同研究科では、学際的で幅広い分野にまたがる社会的課題に対しての実践的な専門力を修得させることを目的としていることに言及。そのため、大学院に他の研究科との共同専攻などを含めて10の専攻を設けていること、先端融合領域について他の大学院や研究開発法人などと積極的に連携していることなどを説明した。

その後、現在進めている具体的な教育改革の内容を紹介し、まず、2007年に開設された博士キャリアセンターや他研究科とも協働で、コミュニケーション、リーダーシップ、ネゴシエーションの能力向上のためのカリキュラムを博士後期課程の正式科目として設置していることを挙げた。

続いて、自分の研究を英語でプレゼンテーションし、ディスカッションやディベートができる能力やスキルの修得を目指し、継続的な実践英語トレーニングに努めていることを紹介。その一環として、技術英語の指導で定評のあるミシガン大学において合宿形式で集中的に学習する機会を設けていると説明した。あわせて、多数の海外留学生・研究生の受け入れ、海外大学・企業との共同研究、海外企業での3カ月以上の長期インターンシップなどを通じ、グローバル環境を学生に提供するよう努めていると紹介した。なお、長期インターンシップについては、国内外を問わず、自らの専門の外縁にある異分野への挑戦を学生に勧めていると述べた。

さらに、学位授与にあたってもグローバル化を意識しており、指導教授以外に欧米大学教授などによるセカンドオピニオンに接する環境を提供しているほか、学位論文の副査を欧米大学教授に委嘱することで国際水準の学位審査を保証していることなどを説明した。

<意見交換>

意見交換において企業側からは、「人間力」ある人材を輩出することへの期待の声や、育成を目指す人材像の明確化が必要との意見が出された。具体的には、博士課程の入口管理の厳格化、体系的なコースワークや複数専攻制の導入、教員の教育・研究指導能力の向上の必要性などを指摘する意見が出された。そのうえで、早稲田大学の改革への取り組みを評価する意見やさらなる改革への期待の声も多く出された。

早稲田大学側からは、今回紹介した取り組みがまだ緒に就いたところであり、今後も今回のような意見交換の場などを通じて得た産業界の考えも踏まえながら、さらなる改革努力をしていきたいとの表明がなされた。

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産学官連携推進部会では、今後も高度理工系人材育成に向けた大学院改革について検討を深めていく予定である。

【産業技術本部】
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