経団連タイムス No.3049 (2011年7月14日)

訪欧ミッションを派遣

−各国政府・経済界代表と意見交換/エネルギー・環境政策や日・EUEIAなどで


経団連(米倉弘昌会長)は3日から9日にかけて、米倉会長を団長とする訪欧ミッション(団員=渡文明評議員会議長、渡辺捷昭副会長、小島順彦副会長、大塚陸毅副会長、斎藤勝利副会長、宮原耕治副会長、中村芳夫副会長・事務総長)をフランス、ドイツ、英国、ブリュッセルに派遣し、主要政策課題をめぐり、訪問各国の政府・経済界代表と懇談した。

フランスでは、バロワン経済・財政・産業相、フランス経団連(MEDEF)、アレバ社幹部、ドイツでは、メルケル首相、レスラー副首相兼経済技術相、レラー首相補佐官、ドイツ産業連盟(BDI)、英国ではキャメロン首相、ケーブル・ビジネス・イノベーション・技能相、英国産業連盟(CBI)、ブリュッセルでは、ファン=ロンパイ欧州理事会常任議長、ビジネスヨーロッパと、それぞれ意見交換を行った。

■ 原子力を含む訪問各国のエネルギー・環境政策の展望

エネルギー・環境政策に関して、フランスのバロワン大臣からは、国民の合意のもと原子力を主要エネルギー源とする基本方針は変わらず、安全性強化のための投資を増強し、並行して再生可能エネルギーにも注力するとの説明があった。ドイツのレスラー副首相は、エネルギー集約型産業の競争力に留意しつつ、脱原発と再生可能エネルギーの拡大を推進していくと表明した。英国産業連盟からは、透明性の確保や安全性に十分留意したうえで原子力を継続するという英国の方針が紹介された。ドイツ産業連盟やビジネスヨーロッパからは、ドイツの脱原発に伴う電力価格の上昇による産業競争力の低下等に懸念が示された。

■ 日・EU経済統合協定(EIA)交渉開始を容認する流れを確認

日・EUEIAについて、フランスのバロワン大臣は、非関税障壁の撤廃と政府調達に関する日本政府のコミットメントを交渉開始の前提条件としつつ、EIAによる双方の経済の発展に期待を表明した。ドイツのレスラー副首相からは、日本側が非関税障壁の撤廃に明確なシグナルを早期に発信すれば、ドイツ政府としてもEUに早期交渉開始を働きかけることは可能との発言があった。日・EUEIAを積極的に推進する英国のキャメロン首相からは、他のEU加盟国の説得のために、非関税措置に関する日本の対応を示してほしいとの要請があった。ファン=ロンパイ常任議長からは、EUは交渉の範囲等を定めるスコーピング作業の終了を受けて交渉入りする準備があり、今やボールは日本側にあるとの認識が示された。

訪問各国の経済界との懇談では、フランス経団連とドイツ産業連盟から、以前は日本とのEIA交渉開始に反対していたが、現在は方針を見直し、市場アクセスの改善、非関税措置の撤廃などスコーピングの着実な実施を条件に、賛成するとの意見が表明された。ビジネスヨーロッパからは、日本との交渉開始に懐疑的な業界があることを踏まえ、スコーピングの成功裏の終了を前提としながらも、EIA交渉開始を支持するとの見解が初めて示された。

いずれの国においても、非関税措置等への日本の取り組みについて繰り返し要請がなされたものの、スコーピングのなかで条件が整えば日本とのEIA交渉開始を受け入れる流れにあることが確認できた。

【国際経済本部】
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