経団連タイムス No.3049 (2011年7月14日)

「知的財産推進計画2011」について知的財産戦略推進事務局と意見交換

−知的財産委員会企画部会


経団連は5日、東京・大手町の経団連会館で知的財産委員会企画部会(広崎膨太郎部会長、澤井敬史部会長代行)を開催した。
部会では、内閣官房知的財産戦略推進事務局の安藤晴彦参事官らから、今年6月に知的財産戦略本部でまとめられた「知的財産推進計画2011」について説明を受けるとともに意見交換を行った。
安藤参事官はまず、国際的な産業構造の激変に伴い、ビジネスモデルの転換や知財戦略の再構築の動きが各国で顕著となっていること、米国や中国等においてイノベーション政策の一環として知財政策が積極的に展開されていることなどを指摘した。そのうえで、わが国においても、産業競争力強化のために、知財政策の役割がますます重要になっているとし、同計画の概要を説明した。

■ 知的財産推進計画2011(概要)

(1)国際標準化のステージアップ戦略

「知的財産推進計画2010」において選定された7つの国際標準化特定戦略分野((1)先端医療(2)水(3)次世代自動車(4)鉄道(5)エネルギーマネジメント(6)コンテンツメディア(7)ロボット)について策定された標準化戦略の実行、新たな戦略分野の選定・標準化戦略の実施等。

(2)知財イノベーション競争戦略

英語での国際的な予備審査の推進等、わが国の「知財システム」の競争力強化、産学共同研究における知財マネジメントの推進等による「知」の活用促進、知財戦略を支える人財の育成・確保等。

(3)最先端デジタル・ネットワーク戦略

電子書籍の促進、クラウド型コンテンツサービスに関する著作権法上のリスク解消等デジタル化・ネットワーク化推進基盤の整備、グローバルな著作権侵害対策の強化の推進等。

(4)クールジャパン戦略

海外で人気の高いわが国のコンテンツ、ファッション等に関し国際的イベントでの情報発信の推進、官民連携タスクフォースの設置によるクールジャパンサポート体制強化等。

■ 意見交換

意見交換では、経団連から、(1)海外への技術移転によって生じるロイヤルティー収入に関するわが国の移転価格税制(注)の運用に問題があり、わが国企業の競争力の障害となっている(2)実効的な国際標準化戦略を迅速に策定・実行するため、米国などのように、省庁横断的で機動的な仕組みが必要である(3)産学官連携プラットフォームにおいては、オーナーシップの重要性と知財の取り扱いに関するルールの明確化が必要である――といった意見が出された。

これに対し知財事務局からは、(1)国内における先端的な研究開発の推進は極めて重要であり、移転価格税制についてもまずは具体的問題点を把握したい(2)国際標準化戦略の策定に携わり、省庁間の垣根は従来より低くなったと実感しているが、さらなる改善を図っていきたい(3)過去の超LSI技術研究組合の成功の経験を活かし、産学官連携プラットフォームの組織設計・情報管理・知財の取り扱いについて、検討していきたい――などと回答があった。

(注)移転価格税制=海外の関連企業との間の取引を通じた所得の海外移転を防止するため、海外の関連企業との取引が通常の取引価格(独立企業間価格)で行われたものとみなして所得を計算し、課税する制度

経団連では今後、わが国におけるイノベーション創出の加速化に向けた知財政策・制度のあり方の検討を深めていく予定である。

【産業技術本部】
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