経団連タイムス No.3050 (2011年7月21日)

「復旧・復興と成長に向けたICTの利活用のあり方」公表


経団連(米倉弘昌会長)は11日、「復旧・復興と成長に向けたICTの利活用のあり方」を公表した。本格的なICT社会で発生した東日本大震災でICTの強みと課題が浮き彫りになったことを踏まえ、復旧・復興と今後の成長に向けたICTの利活用のあり方について提言した。

■ 今回の大震災におけるICTの利活用例と民間の取り組み

携帯電話やインターネットが安否確認や災害情報の収集などの手段として広く活用された。インターネット上ではソーシャルネットワーキングサービス(SNS)のような新たなサービスも力を発揮した。また、高度交通情報システムによる車両通行地図など、民間では新たな情報やサービスが提供された。

企業ごとの被災地支援に加え、JEITA(電子情報技術産業協会)やACCJ(在日米国商工会議所)、経団連などが呼びかけ人となり「ICT支援応援隊」を設立し、被災地のICT環境の整備を進めた。

■ 明らかになった課題

電話回線利用の集中・混雑や電源不足、高齢者を中心としたデジタルデバイドの問題が浮き彫りになった。さらに、情報のデジタル化が進んでいない行政や医療などの分野では、紙媒体の情報が流失し、住民の生活や健康を守る足かせとなり深刻な事態となっている。

■ 復旧・復興と成長に向けたICT利活用

まず、被災者・被災地の支援・再建のため、ICTを有効活用すべきである。被災者に対しては、中長期的な細かな支援が必要となることに鑑み、例えば、政府が現在検討している番号制度などを被災地域に前倒しで導入し、「電子被災者カード」を交付する。これにより、行政手続きの負担軽減や、継続的な医療・介護を実現する基盤を構築すべきである。

次に、政府のIT戦略本部が策定しているIT戦略や工程表を、復旧・復興ならびに今後の日本の成長という視点から見直し、復旧の具現化に資するよう、IT戦略本部から復興庁へ提示すべきである。同時に、政府の新成長戦略の見直しへの反映が望まれる。

さらに、ICTを利活用した新しい産業の創出をスピード感を持って東北地方から実現していくべきである。特に7分野((1)防災・減災にかかるICT利活用(2)電子行政の推進、番号制度・情報連携基盤の導入(3)医療・介護分野の電子化の推進(4)ICT利活用による節電・省エネ(5)ICT利活用による交通流の円滑化(6)報通信インフラの強化(7)ICT人材の育成)については、重点的に取り組むべきである。

最後に、これらの課題に取り組むにあたり、政府は、国や地方を通じたICT戦略や投資の全体最適に責任を持つCIO(最高情報担当責任者)を設置すべきである。CIOを通じ、復興計画の立案や実施に参画していくこと、ICTの利活用を阻む規制の改革などを推進すべきである。

【産業技術本部】
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