経団連タイムス No.3050 (2011年7月21日)

提言「今後の高齢者雇用のあり方について」を公表

−労働市場全体を通じた多様な就労機会の確保などを提起


経団連は19日、「今後の高齢者雇用のあり方について」と題する提言を公表した。2013年度からの公的年金の報酬比例部分にかかる支給開始年齢の引き上げを前に、政府内では高齢者雇用のあり方に関する検討が進められており、今年6月には、厚生労働省に設置された「今後の高年齢者雇用に関する研究会」が報告(以下、「研究会報告」)を取りまとめた。提言は9月以降、労働政策審議会において本格的な審議が予定されていることから、今般、高齢者雇用のあり方に関する経済界としての考え方を取りまとめたもの。提言の概要は次のとおり。

経済界の考え方を取りまとめ

雇用の維持・拡大には、何より経済の持続的な成長が不可欠であり、また、少子高齢化への対応は、子ども・子育て支援策を最優先に取り組むべきである。

公的年金の支給開始年齢の引き上げに伴う高齢者の生活の安定は、社会全体で対応すべき課題であり、企業だけでなく、国としての責任、個々人の自助の範囲の取り組みなど、社会を構成する各主体間において負担を分担していくことが必要である。

こうした基本的な視点を欠いて、企業の雇用確保策にのみ依拠した政策対応とすれば、企業に対し、本来は不要な業務をつくり出してまで、高齢者の雇用を強いることになるおそれもある。その結果、企業の存続や、経済全般への悪影響も懸念され、雇用情勢の悪化を招きかねない。

高齢者雇用施策は、企業の労働現場の実態と整合的なものとして実施されなければならない。高齢者雇用を取り巻く環境の多様性を踏まえ、企業労使の自主的・自律的な対応が尊重される枠組みを担保するとともに、高齢者の多様な就労ニーズに鑑み、労働市場全体を通じた適正なマッチングを図っていくことが求められる。また、厳しい状況下にある新規学卒者の採用環境など、若年者雇用への影響も十分考慮される必要がある。

今後の制度の具体的なあり方として、第一に、現行の雇用確保措置の枠組み(図表参照)を維持すべきである。特に、「研究会報告」で廃止すべきとされた、継続雇用制度における対象者の基準については、現行でも労使協定が前提となっていることから、労使自治の視点からも妥当な制度であり、維持すべきである。

第二に法定定年年齢のあり方について、「研究会報告」では65歳への引き上げに向けて引き続き検討すべきとされたが、8割強の企業が60歳定年を採用している状況下では、労務管理上、その影響は大きい。人事・賃金制度の弾力的な見直しが可能となるような環境が整わない限り、引き上げありきの検討は困難と言わざるを得ない。

第三に、今後、就労を希望する高齢者の一層の増加が予想されることなどを踏まえれば、現行の高年齢者雇用安定法上の同一企業内での雇用確保の原則を緩和し、他企業も含め、広く労働市場全体を通じ、最適なマッチングを可能としていくべきである。

最後に、高齢者の生活の安定に向け、福祉政策も含めたセーフティーネットの充実、さらには企業労使間における雇用確保策以外の多様な取り組みを促していく観点が必要である。こうした点も踏まえ、企業年金制度の柔軟化・多様化に向けた規制緩和などについて、検討を急ぐことが求められる。

現行の高齢者の雇用確保措置の概要
【労働政策本部】
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