経団連タイムス No.3050 (2011年7月21日)

「エネルギー政策に関する第1次提言」を公表

−当面の課題と中長期的政策を提言


東日本大震災は、わが国のエネルギー供給に深刻な打撃を与えた。これを受け、政府は、新成長戦略実現会議を中心に、エネルギー政策の抜本的な見直しを始めている。
そこで、経済界の考え方を政府の議論に反映すべく、経団連は14日、「エネルギー政策に関する第1次提言」を取りまとめ公表した。提言の概要は次のとおり。

■ 基本的考え方

エネルギー政策を考えるうえで何よりも重要なことは、福島第一原子力発電所の事故の早期収拾に全力を尽くすことである。
また、当面のエネルギー政策の課題は、電力の安定供給の確保である。大震災以前から、重い法人税負担、行き過ぎた温暖化対策等により、わが国の立地競争力は落ちている。こうした状況に加え、電力が将来にわたり安定的に供給される見通しが立たなければ、国内産業の空洞化は避けられない。
そのため、政府は、まず、今後5年程度の電力の安定供給確保の道筋を早急につけるべきである。
2020〜30年に向けた中長期的なエネルギー政策については、東日本大震災後の状況を踏まえ、3E(安定供給、経済性、環境配慮)の優先順位を見直す必要がある。
近年、わが国のエネルギー政策は、温暖化防止に軸足を置いてきた。しかし、わが国が安定的な成長を続けていくためには、安全性を大前提として、エネルギーの安定供給と経済性に、より力点を置いた政策が求められる。
他方、温暖化政策については、国内のCO2削減よりも、わが国の世界最高の低炭素技術を活かし、海外での削減を通じて地球規模で貢献すべきである。

■ 当面の電力供給の確保に向け求められる緊急対策

当面の電力供給の確保に向けた具体的な対策としては、(1)今後5年程度の電力の安定供給確保に向けた行程表の早急な策定・公表(2)定期点検終了後に停止したままの原子力発電所の早期稼働(3)官民協力による化石燃料の円滑な調達・輸送の実現(4)省エネ機器等の導入支援――などに取り組む必要がある。

■ 中長期的視野に立ったエネルギー政策の見直し

今後のエネルギーのベストミックスを検討する際には、各エネルギーの長所、短所を客観的に分析し、国民的な議論を行うべきである。
その際、原子力発電は、安全性を大前提に国民の理解を十分に得ながら、着実に推進していく必要がある。
しかし、現行のエネルギー基本計画における原子力発電の計画は見直しを余儀なくされる。この電力供給力の不足分は、他のエネルギーや省エネによって補わなければならない。
そこで、化石燃料については、安定調達と高効率利用に向けた取り組みを促進すべきである。
また、再生可能エネルギーについては、高コスト問題の解決を図りながら、わが国の導入ポテンシャルを踏まえた現実的な計画を策定し、必要な支援や規制緩和を行っていく必要がある。
一方、今回の大震災の経験を踏まえ、強靭なエネルギーシステムを構築すべきである。そのため、(1)集中型電源と分散型電源の連携強化(2)電力の周波数変換所の増強や地域間連系線の整備(3)石油サプライチェーンの維持・強化――などを行う必要がある。
また、温暖化政策については、エネルギー政策の見直しを踏まえ、改めてゼロベースで議論を行うべきである。

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経団連では、政府によるエネルギー政策の見直しに向けて、さらなる提言を行っていく。

【環境本部】
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