経団連タイムス No.3050 (2011年7月21日)

第44回東北地方経済懇談会を開催

−震災からの復興・新生へ意見交換


あいさつする米倉会長

経団連と東北経済連合会(東経連、高橋宏明会長)は13日、仙台市内のホテルで「第44回東北地方経済懇談会」を開催した。懇談会には、経団連から米倉弘昌会長はじめ評議員会議長、副会長らが、東経連からは高橋会長はじめ会員約300名が参加し、「新たな日本の創造―震災からの復興・新生と経済界の役割」を基本テーマに、活動を報告するとともに懇談した。

開会あいさつで東経連の高橋会長は、まず経団連による被災地・被災者支援や復旧・復興策の提言活動に謝意を表明。東北経済については、震災の影響により過去最大の下げ幅を記録した生産や消費が、4カ月を経て低水準ながらも着実に回復しつつある一方、10万人近くが避難生活を余儀なくされており、また、生産拠点の域外移転の動きや原子力発電所事故による風評被害もあり、生活再建や地域経済再生への道のりは長く険しいとの見方を示した。そのうえで、東北の復興・新生にあたり重要な視点として、(1)国内外の官民の英知の結集(2)イノベーション創出によるものづくり産業の高度化(3)災害時のインフラの多重性を念頭に置いた東北地域全体の連携――の3点を挙げた。

続いてあいさつした経団連の米倉会長は、まず被災者に対するお見舞いを述べ、一日も早い復興の実現に経団連としても全力で取り組む決意を表明。他方、政府には基本計画の策定、復興庁の設置、復興特区の創設を迅速に進めるよう求めた。また東北の強みを活かした産業振興・創生、震災経験を踏まえた災害に強いまちづくり等、包括的なビジョンの下で新たな東北をつくっていくことが重要と指摘し、経団連としても「未来都市モデルプロジェクト」等の知見を活かして協力したいと述べた。

■ 活動報告

第1部の活動報告では、東経連側から、鎌田宏副会長が「大震災からの復興・新生」、福井邦顕副会長が「東経連ビジネスセンターにおける産業復興の取り組み」について報告。「大震災からの復興・新生」では、(1)既存の枠組み・制度にとらわれない復興(2)将来を見通した復興(3)産業の再生・創造に向けた民間活力の活用も含めた復興――を目指し、安心して住めるまちづくりや農林漁業の大規模化・産業化、新産業の創出、災害に強い産業インフラ網の構築などを提言し、政府の復興構想会議の提言にも盛り込まれたことを報告した。「東経連ビジネスセンターにおける産業復興の取り組み」では、経団連のほか、各地の経済団体と連携して地域産品の購入を働きかける「BUY 東北運動」や、被災企業支援のため製造業同士で余剰設備融通等を行う「ものづくり助け合いネットワーク」の取り組みを紹介した。

経団連からは、畔柳信雄副会長が「震災後の日本経済の展望」、宮原耕治副会長が「被災者・被災地支援」、大橋洋治副会長が「震災復興と日本経済の再生」、渡文明評議員会議長が「震災後の電力需給対策」について報告。「震災後の日本経済の展望」では、震災前から企業が直面する円高、税負担、環境制約、経済連携の遅れ、柔軟性を欠く労働市場の5重苦に、新たに電力供給制約が加わり、生産拠点の海外移転が進みかねず、ここ数カ月の政策対応が日本経済再生の分水嶺になると指摘した。「被災者・被災地支援」では、経団連による義援金・支援金の呼びかけ、「救援物資ホットライン便」、企業人ボランティア、企業内マルシェ等の取り組みを紹介した。「震災復興と日本経済の再生」では、経済連携協定の締結によりグローバル経済の活力を呼び込んで早期復興につなげるべきと訴えた。「震災後の電力需給対策」では、電力対策自主行動計画による節電への取り組みを紹介するとともに、既存の原発については、日本の技術の粋を尽くし安全確保を前提に有効活用すべきと述べた。

■ 意見交換

第2部の意見交換では、東経連から、(1)復興に向けた推進体制(2)安心して住めるまちの構築(3)災害に強い産業インフラ網の構築(4)農林漁業の大規模化・産業化(5)産業集積の再構築と新たな産業の創造(6)地域産品の風評被害対策――の6点について問題提起があった。

これに対して経団連から、(1)復興財源確保のため、基幹税に一定期間、特定の税目に負担が偏らないかたちで調整を加えることが必要(渡辺捷昭副会長)(2)新しいまちづくりには、コンパクトシティー化、自治体間の広域連携、企業の最先端技術の活用等が重要(岩沙弘道副会長)(3)インフラと産業復興との一体的整備による産業集積の推進や拠点港湾の重点的復旧が不可欠(西田厚聰副会長)(4)被災者支援や災害に強いインフラ整備にICTを有効活用すべき(三浦惺副会長)(5)被災者の雇用確保に向け、一般財源による雇用調整助成金のさらなる拡充が必要(大塚陸毅副会長)(6)農林水産業の復興には農地や漁港の集約、企業の技術の活用による経営・生産の高度化が必要(勝俣宣夫副会長)(7)復旧・復興を妨げる規制の見直しが急務(奥正之副会長)(8)特区の活用による新たな産業集積や産学官連携が重要(川村隆副会長)(9)最重要課題は、福島第一原発事故の早期収拾に全力を尽くすこと。あわせて電力の安定供給と経済性により力点を置いて、中長期的なエネルギーのベストミックスを検討すべき(大宮英明副会長)(10)風評被害の払拭に向け、あらゆる機会をとらえ各国政府・経済界に理解と協力を求める(斎藤勝利副会長)――とコメントした。

なお、懇談会終了後の懇親パーティーには、村井嘉浩宮城県知事、奥山恵美子仙台市長も駆けつけ、震災復興に向けた経済界の協力を求めた。

左から村井宮城県知事、米倉会長、奥山仙台市長
【総務本部】
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