経団連タイムス No.3051 (2011年7月28日)

宇宙開発利用推進委員会2011年度総会

−「衛星画像を活用した災害被害の推定」テーマに講演


経団連は20日、東京・大手町の経団連会館で宇宙開発利用推進委員会(下村節宏委員長)の2011年度総会を開催した。総会では、10年度事業報告や11年度事業計画など総会議件等を審議した後、政府の復興構想会議の委員を務める関西大学の河田惠昭社会安全学部長・教授から「衛星画像を活用した災害被害の推定」をテーマに講演を聞いた。概要は次のとおり。

2011年度事業計画など審議し了承

■ 総会議件等

10年度事業報告や収支決算が報告された後、11年度事業計画(案)や収支予算(案)などが審議され了承された。

■ 河田学部長講演

衛星画像を用いることで、広域災害の被害を同定できる。04年のインド洋大津波災害、08年の四川大震災、11年の東日本大震災において実証的研究を実施した。これは、東海・東南海・南海地震と津波災害や首都直下地震など将来わが国で起こる可能性が高い災害に適用できる。

東日本大震災では大規模な津波災害が起きたが、がれきの広がりや浸水域を衛星によるリモートセンシング(観測)で同定できた。インド洋大津波での研究成果は、今回の震災によるがれき量が2490万トンであると環境省が推定した値のベースとなった。

3月11日の震災発生直後から、衛星、ヘリコプター、航空機、計測車両で情報を収集し、津波浸水想定区域図、津波被災状況図、被災状況判定図を作成した。福島第一原子力発電所の周辺では航空機による撮影ができなかったので、衛星画像を用いて被災地図を作成した。

広域災害で衛星が活躍する場は増えていく。津波によって船舶などが陸上をどう移動したかを分析することで、堤防などの効果的な対策が立てられる。衛星などで撮影された画像は、被災状況の確認だけでなく、復旧や復興のための基礎的な情報となる。災害が起きてからではなく、平時から情報を収集してアーカイブを作成することが重要だ。10月末に政府の中央防災会議が改定する防災基本計画に津波防災に関する記述を追加する予定である。衛星画像のアーカイブをつくるために関係機関が情報を共有できる体制を整備する必要がある。

<意見交換>

「アジアの近隣諸国とデータや解析技術を共有する取り組みはあるのか」という委員の質問に対し、河田学部長は「大規模災害ではほぼすべての衛星画像情報が無償で共有できる。四川大震災のときに中国政府は16カ国の衛星のデータを使い、日本の『だいち』は高い評価を受けた。一方、解析技術には軍事的要素もあるので、防災・減災のためとはいえ共有することはできない」と答えた。

◇◇◇

総会終了後、記念パーティーが開催され、宇宙開発利用推進委員会のメンバー、国会議員、政府関係者、有識者など約150名が参加した。

【産業技術本部】
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