経団連タイムス No.3052 (2011年8月4日)

最新のトルコ情勢や日ト経済の展望聞く

−ビルギチ大使から/日本トルコ経済委員会


経団連は7月27日、東京・大手町の経団連会館で、日本トルコ経済委員会(釡和明委員長)を開催し、アブドゥルラフマン・ビルギチ駐日トルコ共和国大使から、最新のトルコの政治・経済情勢やわが国との経済関係の拡大・強化への展望などについて聞いた。ビルギチ大使の説明は次のとおり。

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トルコは世界16位の経済規模を誇り、世界に6つしかない人口7千万人超、かつ国民1人当たり所得が1万ドル以上の国の一つである。経済は順調に成長しており、2008年の世界経済金融危機からいち早く脱し、2010年は8.9%の成長を記録した。

トルコ経済の強みは、平均年齢29歳の若い人口構成と急成長を遂げる市場、規律ある財政運営、政治的安定である。トルコは市場主義を導入し、民間部門、特に多くの優秀で経験豊富な中小企業が輸出主導型の経済発展を牽引してきた。その結果、輸出額は過去10年間で3倍に増加し、2010年は1140億ドルとなった。また、金融政策でも良好な実績を挙げており、銀行の自己資本比率は20%以上と高く、インフレ率は4%と低い。民主主義のもと、必要な改革を迅速に実行できる体制が整っている。6月の総選挙後には、省庁改革により、経済省が貿易・投資を包括的に管轄することになった。

一方弱点は、輸出入の不均衡と高い失業率である。エネルギーの多くを海外に依存し、経済成長も急なことからエネルギー輸入は拡大を続けている。政府は原子力に加えて、再生可能エネルギーを積極的に活用し、その比率を2023年までに国内総発電量の30%に高める目標を掲げている。また、貿易赤字削減のため、今後技術集約型製品や中間財の国内生産を拡大する計画である。

私の任期の最優先課題は、日本とトルコの経済関係の深化である。そのために、包括的な法的枠組み、すなわちFTAが必要である。最近、日本とEUの経済連携プロセスが動き出したことは、日本とトルコのFTAも可能になったことを意味しており、われわれは必要な準備を開始している。日トFTAは二国間貿易の拡大と不均衡是正(現在はトルコの大幅輸入超過)に貢献するだろう。これに関連し、トルコの対日輸出品目の多様化にも取り組んでいく。また、大震災後にグローバルサプライチェーン(部品の調達・供給網)が寸断され、世界の工業生産に大きな影響を与えたことから、例えば、自動車部品産業における両国企業の連携促進に期待したい。

第三国における協力も重要である。トルコ企業は周辺の中東・北アフリカ、中央アジア、中東欧諸国で豊富な知見と経験を有しており、日本企業が関心を有するインフラプロジェクト等で連携できる。

トルコには多くの投資機会と魅力的な投資環境が存在しており、最近では橋梁や通信衛星、造船などの分野で日本企業の活躍が相次いでいる。トルコの若く活力溢れる経済と、日本の最先端技術、研究開発力が相まって、両国の経済協力は一層強化される。双方の経済界のニーズが合致すれば、新たなビジネスチャンスがもたらされるだろう。

【国際経済本部】
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