経団連タイムス No.3052 (2011年8月4日)

コンテンツの海外展開などで意見交換

−産業問題委員会エンターテインメント・コンテンツ産業部会


経団連の産業問題委員会エンターテインメント・コンテンツ産業部会(依田巽部会長)は7月14日、東京都内で会合を開催し、内閣官房の近藤賢二知的財産戦略推進事務局長から、東日本大震災のわが国への影響や、今年6月に策定された「知的財産推進計画2011」について、コンテンツ関連施策を中心に説明を聞き、意見交換を行った。

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近藤事務局長はまず、世界中でデジタル化、ネットワーク化が進展するなか、わが国も環境整備を早急に進める必要があると指摘。EPUB(電子出版物の世界標準フォーマット)の日本語拡張仕様の策定や、国立国会図書館のアーカイブ化などの具体的な取り組みに加え、「人財」育成強化の観点から、クリエーターによる学校訪問などにも取り組んでいくとの考えを示した。また、コンテンツ海外展開ファンドについても触れ、現在創設に向けた最終調整を進めていると状況を説明した。

続いて、わが国のコンテンツやファッション、食、伝統文化などの、いわゆる「クールジャパン」を発掘・創造し、それを発信、拡大させ、基盤整備につなげていくという好循環をつくり出していくことが重要であると指摘した。そのうえで、ACTA(偽造品の取引の防止に関する協定)(仮称)加盟国の拡大に向けた働きかけや、地理的表示保護制度の導入に向けた検討など、日本ブランドの保護強化を推進していくとした。

加えて、諸外国では、依然日本のコンテンツのテレビ放映などに対する規制が残っていることから、これら規制の緩和・撤廃に向けた取り組みを進めると述べた。その一環として、日中映像交流事業をはじめとする民間レベルでの交流に対する支援や、国際共同制作の推進に向けた取り組みを強化していくと述べた。

また、東日本大震災についても触れ、わが国ブランドの信頼回復に向け、復興メッセージを世界に向けて発信していくと述べた。これに関連して、サウジアラビアの「ジャナドリア祭」での写真展示の様子が紹介されたほか、カンヌ国際映画祭で「ARIGATO(ありがとう)バンド」を作成し、義援金を募金した参加者に配布した取り組みが紹介された。

■ 意見交換

続いて行われた意見交換では、昨今の韓国ポップカルチャーブームを引き合いに、わが国のアーティストやコンテンツの海外展開の促進に向けた政府の支援策の拡充の必要性に対する指摘があったほか、中国に対する海賊版対策の充実と市場開放に向けた働きかけを求める声が上がった。

これに対し近藤事務局長は、わが国の優れたコンテンツである「七人の侍」が海外で「荒野の七人」にリメークされて大ヒットした例を挙げ、これまでのわが国のコンテンツに関する海外展開戦略の手薄さを指摘。今後はコンテンツ海外展開ファンドの創設をはじめ、政府として、コンテンツの海外展開を積極的に支援していくとの姿勢を示した。

また、中国に対する海賊版対策と市場開放に向けた働きかけについては、閣僚級・事務レベルともに対話を続けており、徐々にではあるが、中国側の意識が変わりつつあると述べ、今後もこうした取り組みを継続していくとの考えを示した。

【産業政策本部】
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