経団連タイムス No.3053 (2011年9月1日)
シリーズ記事

昼食講演会シリーズ<第11回>

−「成功する中国ビジネスのポイント」/作家・ジャーナリスト 莫邦富氏


経団連は7月28日、東京・大手町の経団連会館で第11回昼食講演会を開催し、136名の参加のもと、莫邦富(モー・バンフ)氏から「成功する中国ビジネスのポイント」と題した講演を聞いた。
講演の概要は次のとおり。

■ 変化する中国

2010年に日中のGDPは逆転しており、内閣府の推計によると、2030年には、世界のGDPの24.9%を中国が占める一方で、米国は17.0%、日本は5.8%にまで縮む見通しである。日本との関係で見ると、米国との貿易比重が減る一方で中国との比重は増えており、すでに中国は日本の最大の貿易相手国となっている。

今後の中国のキーワードは2つある。第一は「工場から市場へ」である。中国国内の消費市場は急速に成長しており、2020年にはアメリカを抜いて世界最大の消費市場になると予測されている。

第二は「製造から創造へ」である。特許の国際出願件数で、中国は2009年には4位であったが、11年には1位になると見ている。

■ 台頭する内陸部

中国の市場は、沿海部である東部、内陸部の中部、西部、東北部の4つのブロックに分けられる。

東部は人口が集中している中国の先進地帯であり、教育水準も消費力も高い。

中部は東部に隣接しており、インフラが整備されたことで、近年は速いスピードで成長している。中国語では「珠三角」という略称で呼ばれる珠江デルタと、「長三角」と呼ばれる長江デルタが経済発展の2つの強力なエンジンであるが、安徽省、江西省、河南省、湖南省、湖北省、山西省の6つの省からなる中部が、第3のエンジンになると期待している。

西部は自然が厳しくて人口も少ないが、鉱山等の多くの天然資源がある。

東北部は、かつては満州国があったので産業基盤がしっかりしており、日本人にとってなじみやすいが、社会主義時代の疲弊が色濃く残っており、経済が停滞している。

■ 中国進出のチャンスとリスク

中国では地方都市に本拠地を置くメーカーの躍進が著しく、地方が経済力を誇る時代が訪れたといえる。

中国市場を攻め落とすためには、市場を見通す眼力が必要である。中国に進出する多くの企業が上澄みを取ろうとするが、成功するためには、すでに成長した市場ではなく、これから成長する市場を予測して共に成長しようとすることが重要である。

一方、中国に進出するにはリスクもある。中国には高齢化社会の訪れが近づいており、労働力不足の時代を迎えつつあるので、安い労働力を求めて進出するのは危険である。2〜3年で「中国は労働力が豊富」という時代は終わり、いま食料を輸入しているのと同様に、将来は労働力も輸入するようになるだろう。

地域ごとの特性を認識する必要があるし、地方役人の腐敗も問題である。また、日本の常識が通じないことを認識する必要があり、石橋を叩いて渡る日本の慎重さは、規模とスピードを求める中国ではマイナス要素ともなる。さらに、中国には世界各国の企業が進出しているので、世界の強豪との競争を覚悟する必要がある。

しかし、失敗しても進出を諦めずに、2度、3度と挑戦してほしい。日本企業にとって最大のリスクは、日本にとどまって海外に進出しないことにあるだろう。

【総務本部】
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