経団連タイムス No.3055 (2011年9月15日)

ソマリア海賊問題、現状と対策で説明聞く

−海洋開発推進委員会総合部会


経団連は5日、東京・大手町の経団連会館で海洋開発推進委員会総合部会(山脇康部会長)を開催した。当日は、危機管理コンサルタントの山崎正晴亀屋社長を招き、ソマリア海賊問題の現状と対策について説明を聞くとともに意見交換を行った。山崎社長の説明の概要は次のとおり。

■ 海賊の発生状況

2008年からソマリアの海賊は急増し、09年の襲撃件数は217件、10年は220件であった。今年は1月から6月までで163件に上っており、最多の年になるのは間違いない。加えて、海賊の活動は、アデン湾から取り締まりが手薄なインド洋まで拡大している。日本関係船の被害も生じており、原油タンカーやコンテナ船などが襲撃されている。

ソマリアの海賊により拘束されている船舶は世界全体で8月末現在17隻、人質となっている乗組員数は推定317人である。人質解放の手段は身代金以外にはなく、1件当たりの平均額は10年には540万ドルまで上昇した。

一般的な海賊対策としても、保険料、セキュリティー対策コスト、保安要員の雇用コストなどがかかる。

■ 世界の対応

海賊対策に関する国連安保理決議が採択され、EU、NATO、米国等による連合艦隊であるCTF−151や日本などの独立艦隊が海賊対策に取り組んでいる。日本の海賊対処法は船籍にかかわらず海賊行為に対処できるため、海上自衛隊の護衛活動は海外から評価されている。

■ 海賊対策の柱

アデン湾は、本州に四国と九州を足したのと同じぐらい広大であり、数隻の軍艦では海賊に対応できない。さらに遠方のインド洋までカバーするのは不可能である。また、海賊を捕まえても、裁判をして処罰する手間がかかるため、実際にはその場で釈放している。

そこで3つの対策が考えられる。

1つ目は本船上の対策である。「Citadel(避難所) Space」という船内避難場所を設置することで、防御に成功した例もある。現在、日本船の13%が船内避難場所を採用している。さらに、日本籍船に武装した海上自衛隊員または海上保安庁の職員を同乗させ、公的ガードをすることが望まれる。

2つ目は軍事作戦の見直しである。EUは、ソマリア沿岸の海賊基地を発見し、海賊が外洋に出る前に抑える作戦を開始した。海上自衛隊の護衛艦やP−3C哨戒機を増派し投入すれば、効果がある。

3つ目は根本対策である。ソマリアの無政府状態が海賊の原因と言われるが、疑問である。国際的に未承認のソマリア北部の自治国「プントランド」に海賊の基地の大半がある。プントランドには大統領がおり警察や裁判所などの機関もある。プントランド政府への支援が海賊問題の根本的解決につながる可能性がある。

【産業技術本部】
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