経団連タイムス No.3056 (2011年9月22日)

東京工業大学のグローバルリーダー育成に向けた大学院教育改革で意見交換

−産業技術委員会産学官連携推進部会


経団連は7日、東京・大手町の経団連会館で産業技術委員会産学官連携推進部会(永里善彦部会長)を開催し、今年4月に設置された東京工業大学「グローバルリーダー教育院」の佐藤勲院長(大学院理工学研究科教授)らから、同教育院の設立趣旨、取り組みの現状、今後の方向性等につき説明を聞き、意見交換した。概要は次のとおり。

1.グローバルリーダー育成に向けた「教育院」の設立

グローバル化の進展に伴い、国際社会で活躍できる優秀な人材がますます必要となっている。東工大はこの社会的要請に応える責務があると感じ、今般、「グローバルリーダー教育院」を設立した。同教育院では、博士としての高い専門能力に加え、グローバルな視点、俯瞰力、高いコミュニケーション能力、行動力などを併せ持ち、イノベーションを牽引し得る気概ある人材という新しいタイプの博士の育成を行う。

2.具体的カリキュラム

東工大の大学院では、既存研究科における高度な専門性習得を前提としつつ、その中から毎年10名程度の意欲と潜在力ある学生を選抜して「教育院」に入れ、専門領域を越えた全人的教育を行う。

教育院には、知的鍛錬のため、人文社会系と科学技術系の2種類の「道場」を設置。学生はその双方に所属することを必須とする。それぞれの「道場主」の指導のもと、研究科で培う専門性以外の多様な基礎知識を座学で習得させるほか、グループワークによる調査・討議を通じ、主体的に考える習慣、コミュニケーション能力や俯瞰力を体得させる。

グローバルな視点を強化させる観点からは、すでに「国際大学院プログラム」等による英語のコースワークや海外大学との交流がある。これらの実績を踏まえて「道場」では、留学生との共同作業等を課すことで、より能力を磨かせる。

修了時には、専門分野の学位審査とは独立に、グローバルリーダーとしての総合的能力を審査することで、「出口管理」も行う。

3.今後の方向性

今後は、「道場」の数を増やし、各「道場」に所属する学生間で競争が生まれる「道場破り」とも呼べる仕組みを導入したい。他の大学院教育との連携も進めたい。あわせて、産業界もメンバーに含めたかたちの「コンソーシアム」を組織し、常に社会的要請を意識した運営を図っていく。

<意見交換>

企業側からは、教育院の取り組みを評価する意見が出される一方、教育院以外の既存の研究科の改革が重要との指摘もなされた。また、学生を海外に送り出すためのさらなる対策が必要との意見もあった。

佐藤院長からは、全学的な改革を進めるためにもまずは教育院を成功させたいとの強い意欲が示され、産業界への協力・参画への期待があらためて表明された。また、高い潜在力を持つ学生を積極的に海外に派遣するため、学生の意識涵養と必要な資金確保に努めているとの説明があった。

◇◇◇

産学官連携推進部会では、今後も高度理工系人材育成に向けた大学院改革について検討を深めていく予定である。

【産業技術本部】
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