経団連タイムス No.3058 (2011年10月6日)

日米関係全般の現状と今後の展望について聞く

−アメリカ委員会


経団連のアメリカ委員会(村瀬治男共同委員長、伊東信一郎共同委員長)は9月22日、東京・大手町の経団連会館で、外務省の梅本和義・前北米局長を招いて会合を開催し、日米関係全般の現状と今後の展望について説明を受けるとともに懇談した。

冒頭、今年5月に共同委員長に就任した伊東全日本空輸社長があいさつし、震災後、仙台空港の早期復旧に向けた米軍の貢献をはじめ、米国から受けたさまざまな支援により、日米の絆の強さを再認識したと述べるとともに、わが国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増すなか、東アジアの安定と繁栄における日米同盟の果たす役割の重要性を踏まえ、両国関係の発展に尽力するとの決意を述べた。

続く梅本氏からの説明では、日米関係について、まず、日本有事の際、米国人が日本のために血を流すという極めて重く特別な関係が日米安保体制であること、経済面では、新興国への関心が相対的に高まってはいるものの、日米経済関係の土台は強固であることが指摘された。他方、米国における日本人留学生の減少など、米国における日本人のプレゼンスの低下といった文化・人的交流面での問題にも言及があった。

また、震災後の米国の多大な対日支援は、世界各地の自然災害に際し復旧・復興支援に努めてきた日本に対する心からの同情とともに、アジア太平洋地域においてのみならず世界で最も頼りにする日本の復興が、米国の国益にかなうとの確信に基づくものであったと述べた。

そのうえで、米国がアジア太平洋の経済枠組みの構築に向けて戦略的に重視するTPP(環太平洋連携協定)に関し、米国が日本の参加に期待するのは日本市場への農産品輸出ではなく、ルース駐日米国大使が指摘するとおり、日本の参加が「ゲームチェンジャー」としてこの地域の経済枠組みの構築に重要な役割を果たすとの観点からであるとして、日本のTPP交渉参加是非の判断は日米関係に多大な影響を与えると指摘した。

さらに梅本氏は、米軍と自衛隊の共同訓練等、これまでの安全保障面での協力の積み重ねが震災対応での円滑な連携に結び付いたと評価しつつ、中国の着実な軍備増強等も念頭に、周辺事態に対する法制度整備を進める必要があることや、普天間問題は日本政府にとって極めて困難な課題であり、重要な局面を迎えていることに言及した。

意見交換では、地方自治体が誘致する外国人青年が語学教育に携わる「JETプログラム」に関し、梅本氏から、「日本への理解促進や親日層の拡大の面では大変成功しているが、英語教育への効果は検証する必要があり、自治体の予算制約も踏まえ、改善点を検討中」との説明があった。

【国際経済本部】
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