経団連タイムス No.3064 (2011年11月17日)

政府の社会保障・税一体改革成案評価で日本総研と意見交換

−社会保障委員会企画部会


経団連の社会保障委員会企画部会(浅野友靖部会長)は10月27日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、日本総合研究所調査部の西沢和彦主任研究員から、経済社会の変化に対応した社会保障と税・財政の一体改革について説明を聞き、意見交換した。

政府・与党の「社会保障・税一体改革成案」については、消費税増税分を社会保障の充実に回すべきか、財政健全化に回すべきかについては議論が必要であるとしたうえで、改革項目についての評価が示された。

まず、一体改革成案では高齢者医療制度改革と、新年金制度の方向性が明確には示されなかったが、今後、与野党協議を進めていくうえでは、これらの総括が不可欠だったとの指摘がなされた。

医療・介護については、重点化・効率化部分は実現性に乏しいとの指摘があった。実現するためには、重点化・効率化項目が推計額どおり削減できるのか、チェックする仕組みが必要であるとの提案があった。

また、高齢者医療制度・介護保険制度における拠出金制度について、少子高齢化がそれほど深刻でなかった高度成長期、自然増収が見込めていた時期のモデルをそのまま続けているとし、今や現役世代からの拠出金は保険料収入の過半に迫っており、いずれ現役世代の保険給付を上回ってしまうため、拠出金部分は税で代替すべきとの指摘があった。

年金については、まず財政検証をやり直したうえで、改革案を提示するべきだったと指摘。低所得者への加算、標準報酬の上限引き上げ・下限引き下げなど、公平性を欠き、制度を歪める「改善策」を実施するよりも、新年金制度の方向性を示したうえで、消費税の引き上げへの国民の理解を求めるべきであるとの認識を示した。

■ 意見交換

その後の意見交換では、「公的社会保険制度には限界があり、自助努力を促す仕組みが重要ではないか」との質問に対し西沢氏は、「支給開始年齢の引き上げ等を議論するならば、同時に企業年金の税制優遇措置の拡充等、私的保険部分の充実を図る案を示すべきだった」と回答、「財政状況が厳しければ収入を増やして支出を減らすのが当然の対応であるはずが、なぜ支出を増やす給付拡充策が必要なのか」との質問には、「将来見通しを明確に示し、制度の持続可能性確保の必要性について理解を得るためには、複雑な社会保障制度の会計を整理すべき」と回答した。また、「番号制度が一体改革の推進には不可欠ではないか」との質問に対しては、「『歳入庁』創設の議論が進まないこと、制度導入による大きなメリットが明らかでなく、議論が失速している」との回答があった。

【経済政策本部】
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