経団連タイムス No.3066 (2011年12月1日)

ドイツ、スウェーデンの防衛産業政策に関する調査ミッション派遣


経団連は11月6日から13日にかけて、「ドイツおよびスウェーデンの防衛産業政策に関する調査ミッション」を派遣した。ミッションには、堀謙一・防衛生産委員会基本問題ワーキンググループ主査を団長として企業の実務者が参加し、ドイツおよびスウェーデンの政府機関や防衛関連企業における取り組みを調査した。両国政府の武器輸出管理体制や防衛関連企業の海外展開は、わが国の防衛産業政策を確立するうえで示唆に富むものだった。概要は次のとおり。

■ ドイツ

政府機関

ドイツでは2011年に徴兵制を停止、軍隊の規模を縮小し、11年度から15年度までに人員を10%程度減らす。また、国防予算(320億ユーロ)は、15年度までに3.5%減少させる。こうしたなかで、政府による装備品の取得方針は自由競争を原則としており、装備品の重点分野は特に決めていない。

武器輸出については憲法に相当するドイツ基本法に定められており、経済産業省が国内法に基づいて厳格に管理している。経済産業省の下位機関である輸出管理庁が、毎年1万7千件程度の武器輸出を認可する。EU域内、NATO加盟国、NATOに準ずる国(日本など)への武器輸出はほぼ認可される。

防衛関連企業

世界的な防衛関連企業であるEADSのユーロコプター(ヘリコプター部門)およびカシーディアン(軍用航空機部門)や、戦車や火器・弾薬メーカーのラインメタルはいずれも装備品の輸出に力を入れており、グローバルな展開を図っている。カシーディアンが製造する「ユーロファイター・タイフーン」など、装備品の国際共同開発も積極的に推進している。

■ スウェーデン

政府機関

スウェーデンの安全保障政策は冷戦終了後、中立から国際協力に転換した。2010年7月に徴兵制から志願兵制に移行し、国防予算(約5千億円)はほぼ横ばいである。

防衛産業政策としては、戦闘機と潜水艦は2040年まで国産を維持するが、基本的には既存の装備品の能力向上や海外からの調達を行う。ドイツと同様に、国防省や国防装備庁は装備品の重点分野を特に決めていない。

スウェーデンは装備品の輸出を重視しており、政府は支援体制を充実させるために、10年8月に国防輸出庁を設立した。国防省、国防輸出庁、国防装備庁、外務省、戦略物資監察局などが連携する輸出管理体制が整備されている。

防衛関連企業

スウェーデンの代表的な防衛関連企業であるサーブは、冷戦後、海外展開を推進している。特に国産の戦闘機「グリペン」を海外(南アフリカ、ハンガリー、チェコ、タイなど)に輸出している。政治レベルで成約の可否が決まるのが特徴である。

スウェーデンの国防装備庁(FMV)との懇談会の模様
【産業技術本部】
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