経団連タイムス No.3067 (2011年12月13日)

提言「改めて国際協力の推進を求める」公表

−パッケージ型インフラの海外展開を促進


経団連は13日、提言「改めて国際協力の推進を求める」を公表した。
今回の提言では、国際協力の意義と方針に関し、特に、新興国等におけるインフラ整備ならびに政府開発援助(ODA)の抜本的見直しの方策について整理した。概要は次のとおり。

■ 基本的な考え方

震災後、わが国は世界各国から多くの支援を受けたことで、国際協力の重要性を再認識した。わが国は震災復興にあたり、内向きになることなく、国際社会の繁栄と安定に貢献するため国際協力を推進することが必要である。

また、インフラの海外展開は、わが国の成長戦略の重要な柱であり、技術やノウハウの提供で新興国の一層の成長に貢献するとともに、わが国の経済に大きな波及効果をもたらすことができる。

■ 新興国等におけるインフラ整備

わが国は、インフラ整備への協力を通じて、アジアの成長に貢献するべきであり、ASEANの広域インフラ整備計画に参画することが重要である。このほか、中国、インド、バングラデシュ、ブラジルなどの持続可能な経済成長の達成に貢献していくべきである。

また、新興国では、発電所、道路、港湾などの基幹インフラ、住宅、上下水道などの生活・都市インフラ、通信、通関システムなどのIT関連インフラを重点整備し、成長のボトルネックを解消していくことが必要である。

インフラ輸出を推進するためには、(1)官民連携の一層の推進(2)大規模インフラに伴うリスクテイク機能の強化(3)二国間オフセットメカニズム(注1)の具体化(4)人材の育成(5)ソフトインフラの整備――が必要である。

具体的には、官民連携では、無償資金や国際協力機構(JICA)の海外投融資でインフラプロジェクトの採算性を引き上げることが求められる。また、外貨建てや現地通貨建ての貸し出しによるリスク軽減、日本の標準や規格の普及に取り組むべきである。

インフラの海外展開の推進体制については、パッケージ型インフラ海外展開関係大臣会合と国家戦略会議や各省庁との強力な連携、インフラプロジェクト専門官や現地ODAタスクフォースの一層の活用、各国別の閣僚級官民政策対話の推進と対象国の拡大を求める。

■ わが国のODAの抜本的見直し

ODAの一般会計当初予算は、1997年度をピークに減少の一途をたどり、今年度はピーク時の半分以下となっている。わが国が国際社会における役割を果たしていくためには、減少に歯止めをかけることが不可欠である。あわせて制度疲労がみられる各種スキームを抜本的に見直すべきである。

具体的には、円借款の手続きの迅速化・簡素化、アンタイド(注2)案件の受注促進、急速な為替変動への対応、無償資金協力の大型化、技術協力を通じたわが国の標準・規格の普及、国際機関への特別拠出金の見直し、JICAの改革促進、草の根レベルのビジネスの推進が必要である。

(注1)先進国と途上国の個別合意による排出枠移転の枠組み
(注2)援助に必要な財・サービスの調達先を限定しないこと
【国際協力本部】
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