物価改訂の即時完成等に関する要望

昭和22年8月21日建議発表
経済団体連合会

今次物価改訂の方針発表に際し政府は七月末迄に公価の改訂を完了する方針を示していたに拘らず、その実際の進行は遅々として未だ決定せるもの少く、何時完了するかの見当もつかない。ために流通秩序は攪乱せられ、而して金融的に又生産的に現に甚しい障碍となりつつある。

之に関して我々は七月九日建議せる「新物価体系樹立に関する要望意見」中に於て次の如く述べたのであった。

「諸物価の全面的改訂方針を発表し、その後に於て逐一詳密複雑な計算手続等に日を重ね、遷延するに於ては、その間に諸種の弊害を生じ、ために却ってインフレーションを急激に促進することとなる。従って物価の改訂は徒らに形式に捉われ、これを棚ざらしにすることなく、既定方針に則って迅速且つ達観的に極力短期間内に行う必要がある。」

右は「時」が如何に新物価体系の成否を左右する重要な要素であるかを注意しようとしたものに外ならない。

然かも問題はこれのみに止まらない。食糧と賃金の一連の関係にも未だ難問を蔵して居り、又政府の一部では新物価体系のなお未完成なる中に早くも今秋米価の大巾引上げを行い、それを基礎としていま一度賃金物価の全面的改訂を策するかの如き態度をほのめかす向がある。斯くては新物価体系樹立の意義を失い、日本経済の前途は真に憂慮に堪えない。

よってこの際我々は、政府が物価の改訂につき対象の範囲を限定すると共に決定順位に考慮を払い、迅速且つ達観的に之を完成し、且つ一旦定めた物価体系は少くも六ケ月間位その基本を変更しないという当初の建前を貫き得るよう諸般の施策を的確に実施せられん事を切望する。

以上