法人課税の軽減に関する意見

昭和23年2月5日建議発表
経済団体連合会

証券の民主的再配分によって、国民の手で産業の再建復興をはかるには、何を措いてもます資本虐遇の弊をあらためるとともに、健全な証券投資と円滑な証券流通を妨げる一切の障碍を除去することが肝要である。これがため本会は、さきに「証券民主化に関する意見」を発表し当面の具体策を掲げてその早急なる実現を要望した。幸いに配当制限については、旧臘、條件附ながらともかくも撤廃されたが株式が配当収入を基準とした利潤証券として、健全な投資の目的物となるには適正な利潤と配当の確保を困難にしている現行税制、なかんずく甚しく高率な法人税の合理的な引下げの絶対に必要なる所以を繰返しこゝに強調するものである。もっともその反面、不当に高率の利益をあげているものに対しては所得税に対する超過累進の率を高くしてつとめて税収の減少を避けるべきであろう。

現行税制の下では、会社が税込利益二割をあげ得たとしても、精々五分程度の配当が可能であるにすぎない。もし一割の配当をなさんとすれば、五割程度の収益をあげなければならない。このため株式配当は、一般の金利水準に徴してはるかに下廻る現状である。貸付金利が日歩二銭五厘(年九分一厘二毛)に引上げられたことを以てすれば、一割程度の配当は実施上可能なるごとく税法を改正すべきである。

資本蓄積、外資導入の必要いよいよ切なるものあるわが国の現状に於て、狭義の租税理論のみを厳格に固守することなく、大局見地に立って税制を根本的に再検討する要がある。かゝる観点から法人課税に関して種々検討した結果我々は少くも左記のごとき軽減措置を講ぜられるよう望むものである。

一、六分(商法による法定利息)を限度とする配当金に対しては、法人税法における課税所得の計算上、これを益金と見做さぬこと。

二、税込利益金二割五分程度をあげ得た会社において一割程度の配当が可能なるごとく、法人税の税率を改正し、普通所得については現行百分の三十五を百分の三十に引下げ、超過所得については、現行の資本金一割超百分の十乃至三割超百分の三十とあるものを資本金二割超百分の十乃至五割超百分の四十と改めること。

三、右に準じて清算所得税についても相当程度これを引下げること。

四、地方税が会社経営ひいては資本の負担を加重する傾向あるに鑑み、都民税、営業税等の法人課税は綜合的見地に立ってこれを取扱う方針を確立し、いやしくも敍上の趣旨に反するごとき措置はこれを絶対に避けること。

(附記) 最近株式価格の著しい昂騰をみたことは、之まで異常に圧迫されていた株価の訂正運動として当然の次第と考えられるが、然し投機的な狂騰は種々の弊害を生ずるので、之に対しては政府持株の機宜を得た放出等によって調節を計り、真の証券民主化を促進するの好ましいこと言うまでもない。
以上