特殊法人については、土光臨調以降、行政の減量化と官民の事業分野の調整等の観点から改革の必要性が指摘され、数次に渡り整理合理化、組織・経営の改善・効率化等の取組みがなされた結果、ピークの113法人から78法人にまで削減された。しかし、近年の特殊法人の統合等にも見られるように、法人数が削減されていても、単なる組織統合に止まり、機能等の抜本的な見直しが行われたとは言い難いものが多く含まれている。設立の趣旨に照らして存在意義が無くなった、もしくは存在意義が薄れたもの、あるいは政策目的自体の必要性があっても実施体制の見直しが必要なものがかなりあると思われる。したがって、行政改革の本旨に照らし、存続の必要性を更に見直すとともに、効率的・効果的な実施体制への移行等を検討し続けていく必要がある。
平成12年度の財政投融資計画では、特殊法人33機関および認可法人5機関に財投資金が投入されることになっている。また、これまでの財政投融資計画残高を見れば、40機関以上の特殊法人等に約250兆円にものぼる財投資金が投じられている。これらの特殊法人等についての継続的な改革努力を怠るなら、その一部について将来的に回収が困難となり、税金で補填せざるを得ない事態が生じることも懸念される。中央省庁等改革の中で財投改革が実施されるが、出口部分にあたる特殊法人等の改革については、資金調達面を通じた間接的な取組みに止まるなど、ほとんどの問題が先送りの扱いとなっている。財投改革を実効あらしめるためにも、改めて特殊法人等の全般的な見直し、改革を行なう必要がある。
中央省庁等改革の一環として2001年4月から、公共性、透明性、自主性を兼ね備えた新たな行政サービスの実施機関として、独立行政法人制度が創設される。独立行政法人については、効率性の向上、質の向上、透明性の確保等の実現のため、業績評価システムや原則として企業会計原則が導入され、業務・実績に関するディスクロージャーを徹底するなど、これまで特殊法人等の固有の問題として指摘されてきた事項のかなりの部分が克服可能な制度として設計されている。現在の特殊法人等が実施している事業についても、独立行政法人の枠組み、あるいは同様の制度の下で運営すべき事業や運営可能なものがかなりあると思われる。
なお、認可法人については設立形態こそ異なるものの特殊法人と同様に公共的・公益的色彩の強い事業を実施していることから、臨調答申等では、特殊法人と認可法人を一括して「特殊法人等」とされるなど、行政改革との関連では特殊法人と同様に取り扱われている。従って、今回の改革に当たっても、同様の取組みが求められるものであると考える。また、特殊法人、認可法人についてスクラップ・アンド・ビルドを義務づけたところ、隠れ特殊法人・認可法人的な行政代行型の公益法人が数多く設立された経緯があることから、民間法人として設立された法人であっても、行政の外延部とみなされるものについては、引き続き、その改革を検討していく必要がある。
特殊法人は、戦後復興期から高度経済成長期に、行政需要の増大に応え、遅れた社会資本の整備や地域の振興、産業の育成・中小企業振興等の政策の実施機関として特別の法律によって設立された。認可法人についても、特に高度成長期において実質的に特殊法人と異ならないものが、特別の法律に基づき主務大臣の認可によって、多く設立されている。これら特殊法人等については、その後の社会経済情勢等の変化や官民の役割分担のあり方についての考え方等を踏まえ、
などの視点で見直し、廃止・統合・事業の縮小の他、民営化ないしは民間法人化等の自立化、あるいは非公務員型の独立行政法人化や利子補給等の代替手段への移行等を進めることが基本である。
上記見直しの結果等を通じ、何らかの理由で特殊法人等として今後も存続が必要な事業については、組織・経営の効率化・活性化を図るとともに、事業の透明性を通じて常に国民・国会の監視の下に置く必要がある。そのため、第三者による客観的な評価に基づく見直しが継続的に実施されることを保証する制度の導入、ディスクロージャーの徹底等、独立行政法人制度に準じた共通制度を整備する必要がある。特に財投機関については、財投機関債を発行するための条件整備の視点からも、情報開示等を徹底させることが重要である。
特殊法人については、中央省庁等改革基本法第42条において、その整理・合理化がうたわれ、「中央省庁等改革の推進に関する方針」(1999年4月27日中央省庁等改革推進本部決定)において、「累次の閣議決定等を踏まえつつ、徹底して見直し、民営化、事業の整理縮小・廃止等を進めるとともに、存続が必要なものについては、独立行政法人化等の可否を含めふさわしい組織形態及び業務内容となるよう検討する。」とされたところである。また、中央省庁等改革関連法の成立に際しての衆参両院における付帯決議(衆院1999年6月9日、参院7月8日)においても、特殊法人の整理合理化について「第三者機関に提言を行わせる」こととされている。従来より特殊法人と同様に取り扱われてきた認可法人も含め、先ず2001年1月の新体制への移行に合せて、政府は中央省庁等改革基本法等に基づく特殊法人の整理・合理化の実現のため、権威ある第三者的な機関を設置すべきである。政府は、当該機関による閣議決定等の実現状況の点検や下記基準による見直し等に基づく提言等を踏まえ、自らも徹底的な事業の見直しにより期限を切って具体案を策定し、政治の決断による特殊法人等の整理・縮小を図るべきである。
社会経済情勢の変化等を踏まえた行政運営の実現のため、特殊法人等の実施する政策自体の是非から実施体制等に至るまでの総合的な見直しを定期的に行うことを制度化すべきである。この定期的見直しに際しては、費用・便益分析等新たな政策評価の仕組みを整備すると共に、第三者による客観的な評価に基づき事業・組織の改廃も含めて検討することとし、その見直しの結果、存続する事業・法人については、その理由や根拠等を公表するなど透明性を確保し、国民と国会の選択が可能なものとすべきである。
独立行政法人については、中期目標および中期計画の策定が義務づけられ、所管省庁に置かれる評価委員会が各事業年度に係わる業務の実績に関する評価を行うことに加えて、中期目標の期間の終了時においては、総務省に設置される学識経験者からなる政策評価・独立行政法人評価委員会が当該法人の主要な事務及び事業の改廃に関し、主務大臣に勧告することができる、とされている。
引き続き特殊法人等の形態を維持する法人についても、同様の制度を確立すべきであり、評価結果については、毎年度の予算編成前に国会に報告させることとし、法人の存続の是非を含めて常に見直しが促進されるようにすべきである。同時に、組織・要員のスリム化・効率化や、管理費・業務運営経費等の削減に関する中期目標および中期計画を策定し、その計画達成を自律的に促進させる仕組みを整備すべきである。
昨年成立した行政情報公開法において、政府は特殊法人の情報公開についても、法律の公布(平成11年5月14日)後2年を目途として法制上の措置を講ずるものとされ、現在、政府の行政改革推進本部の下に設置されている特殊法人情報公開検討委員会において、認可法人等も含めた情報の開示と提供の制度の在り方について鋭意検討が進められている。
新たに国の組織から独立して行政サービスを実施する組織として設立される独立行政法人はもとより、出資金・補助金等の国の関与度や事業内容等から行政の代行機関、外延部と位置付けられる特殊法人等についても、情報の開示と提供に関する法制度を早急に整備すべきである。
特殊法人等においては、専門知識が必要である等の主張により、官僚OBがその長に就任することが慣例となって、天下りの指定ポストと化している法人が少なくない。特殊法人等相互間におけるたらい回し的異動(いわゆる「渡り」)の原則禁止や選任の透明性確保・基準の明確化はもとより、組織の活性化や効率的な事業運営等のため、今後は天下りの受入れを原則として禁止し、法人の行う事業に高度な知識・経験を有する者として内部者の登用を図るべきである。同時に、経営手腕に優れ、事業を適正かつ効率的に運営することのできる民間人の活用を進めるべきであり、そのためにも、評価システムや早期退職制度の見直し等の公務員制度改革を併せて進めていく必要がある。
特殊法人等については、必要の都度、個別の法律をもって設立された経緯からその法規制は様々であり、独立行政法人にみられるような通則法は整備されていない。政策の実施機関としての公共性や規律を確立し、独立行政法人と同様に効率性の向上、質の向上、透明性の確保等の実現を図るためにも、特殊法人等については、その定義や範囲を定めたうえで、上記の評価や財務・会計等の制度のほか、調達及び業務委託方法の透明化、役員の権限及び責任、政府の関与・規制、破綻及びその処理の仕組み等の基本的制度を内容とする共通法制の整備を検討すべきである。