「需要と供給の新しい好循環の実現に向けた提言」
−21世紀型リーディング産業・分野の創出−
経済のグローバル化がさらに進展する中で、21世紀のリーディング産業・分野は、国内のみならず海外を含めた多様な社会ニーズを実現し、わが国の経済成長を復活させるものでなくてはならない。このためには、国際競争力のあるリーディング産業・分野を維持し、創出することが重要である。また、原燃料や食料を輸入に依存しているわが国が、持続的な経済成長を達成するには、これらの輸入をまかなうことのできる輸出を確保することが必要である。
先進国化と経済の成熟化に伴い、GDPや雇用における非製造業の比重が増してはいるが、わが国のサービス収支は赤字が継続している 27。したがって、21世紀初頭においても、国際競争力があり、経常収支を均衡させることができる産業は、製造業中心になると予想される。しかし、わが国の製造業は、閉業率が開業率を2.5%も上回るなど弱体化しており 28、海外生産比率が12%を超えるなど空洞化も進行している 29。このような製造業の弱体化・空洞化を乗り越え、経済成長を牽引するリーディング産業・分野を創出するには、創造的な技術革新による飛躍的な産業技術の向上が一つの鍵であることは、90年代の米国経済復活などからも明らかである。
わが国は、戦後一貫して製造業を中心として産業技術の革新に努め、高度成長を達成することができた。このような製造業の発展の中でわが国に蓄積された「ものづくり」の技術・人材・基盤を有効に活用し、創造的な技術革新に挑戦することで、需要と供給の新たな好循環を生み出すリーディング産業・分野を創出しなければならない。このためには、
社会には多様なニーズが存在するが、そのニーズを適切に実現する技術が未開発であるために産業化できていない分野や、技術的な可能性が不明確なためにニーズ自体が顕在化していない分野が多い。このような問題を解決するためには、ニューフロンティア技術を世界に先駆けて開発し、需要を創出し得る新しい財やサービスを国内外に供給することを目指して、21世紀のリーディング産業・分野を創出することが期待される。
新しい財・サービスを創出する可能性の高いバイオテクノロジーや情報通信のような先端技術開発は、基礎研究から応用・産業化までを視野に入れた巨大なテーマである。このような先端技術を開発し産業化するためには、民間企業だけの取り組みでは不十分であり、産学官の連携を強化し国の総力を結集して開発を推進することが必要である。また、研究成果の速やかな産業化のためには、米国等に比べて遅れているベンチャー企業の育成と支援も重要である。さらに、バイオテクノロジーなどの新技術については、安全性を確認・確保し、国民の理解を得て研究開発と産業化を推進することが重要である。
ニューフロンティア技術開発によるリーディング産業・分野の例としては、高齢化が急速に進行するわが国にとって最も重要な課題であるバイオテクノロジーを中心的な技術ベースとするライフサイエンス分野が挙げられる。さらに、インターネットなどの情報技術の急激な進歩に伴って、21世紀にはさらに多様な社会のニーズを満たすようになる情報通信の分野が挙げられる。情報通信については、ソフト技術の開発でわが国は米国に遅れをとっており、アプリケーションソフトなどを中心にソフト開発力の強化が必要である。この中で開発される新たなソフト技術とわが国が得意とするハードを組み合わせた情報家電を含む情報通信機器分野は、わが国が世界をリードできる可能性が高いと考えられる。これらの分野は、ともに政府のミレニアム・プロジェクトにとりあげられているが、国際競争力のある産業を創出するには、重点開発領域プロジェクトとして、国の総力を挙げて開発を一元的に推進することが特に必要である。また、海洋開発や宇宙開発なども、重点開発領域プロジェクトとして推進する必要がある。
より具体的には、ヒトゲノムを解析した遺伝子DNAの研究に基づく遺伝子診断技術や遺伝子治療、遺伝子組換えやクローン技術を利用した新規医薬が挙げられる。また、バイオテクノロジーの適用による、農業・食品分野での遺伝子組換え植物工場なども期待される。情報通信機器分野としては、人工知能機能を備えた情報家電、大容量の次世代記憶媒体・装置、次世代携帯情報通信機器、ナノテクノロジーによる量子効果を利用した単電子トランジスタなどが考えられる。
既存の製造業を含む産業が国際競争力を維持・向上するためには、生産性の大幅な向上を可能にする技術革新が必要である。そのためには、わが国が培ってきた生産技術をさらに高度化することによって、国際競争力のあるコストで世界をリードする高付加価値製品を開発し生産化することが重要である。また、プロセスの本質的な変更を伴うような革新的な生産技術を開発し、開発途上国にも負けないコストで生産することも、製造業の空洞化を克服するために重要な課題である。これらの技術の開発には、新規の情報技術の開発と幅広い活用が必要であり、バイオテクノロジーやナノテクノロジーなどの先端技術を活用することも必要となる。
生産性の大幅な向上によって維持・創出されるリーディング産業・分野の例としては、新素材・新材料分野、交通・物流分野、先進製造技術分野が挙げられる。この分野は、わが国が従来から世界をリードしてきた分野が多く、世界に先駆けた技術革新を実現することが可能である。
開発すべき技術の例としては、超電導や光触媒など機能材や新素材・新材料を活用した製品の高付加価値化、高性能半導体製造装置や知能ロボットなどの次世代工作機械およびこれらを活用した製造プロセスの革新、高密度記憶材料などの高機能部品・部材、バイオリアクターなどのバイオテクノロジーを活用した新製造プロセス、マイクロマシンなどのナノテクノロジーを活用した製造技術の革新、ITSの推進や航空・港湾高度化システムの活用などによる交通・物流分野の高度化などが挙げられる。また、新規の情報技術や情報通信機器を積極的に活用して、流通・サービス分野の生産性を飛躍的に向上させることも、わが国の国際競争力向上にとって重要な課題である。
わが国が持続的な経済成長を達成するためには、環境・資源などのボトルネックとなる問題を解決し、国際社会の中でのトップランナーとしての地位を確保する必要がある。そのためには、炭酸ガスによる地球温暖化などの地球環境問題を解決する技術を世界に先駆けて開発し、産業化することが重要であり、これらの技術を海外に普及させることで、地球環境問題の解決におけるわが国の存在を示すことが可能である。また、わが国はエネルギー源の大部分を輸入に依存しており、エネルギー問題は解決すべき重要な課題である。そのためには、省エネルギー技術・製品およびこれらを活用する社会システムをも開発し実用化することが、経済成長実現のために必要である。さらに、使用された製品を回収してリサイクルする、製品の静脈構造の社会システムを確立することが、快適な生活と経済成長の両立のために必要である。
ボトルネックを解決するリーディング産業・分野の例としては、環境分野と資源エネルギー分野が挙げられる。具体的な技術としては、炭酸ガスの固定・除去技術の早期開発と環境分野での社会システムに適応した新事業の開発、バイオレメディエーションの活用等による環境関連事業(土壌汚染修復など)の推進、エネルギー分野では、燃料電池の開発と実用化による低公害自動車の実現、家庭用コジェネレーションシステムの開発、高効率ガスタービンの実用化、原子燃料サイクルの確立、電力を高効率・高密度で貯蔵する電池の開発が挙げられる。また、生分解材料の活用とガス化溶融炉の普及による製品の静脈構造確立などが期待される。
技術革新を通じて21世紀のリーディング産業・分野を創出するのは、民間企業の自助努力が基本である。しかしながら、国際的な技術開発競争は益々激化しており、バイオテクノロジーや情報通信などの先端科学技術分野では、わが国は欧米に比べて遅れをとっている。このような遅れをとった大きな原因として、政府の縦割りの科学技術行政などのために、産学官の総力を結集した技術開発が実現していないことが挙げられる。したがって、民間企業の技術革新への自助努力を支援し補完するものとして、政府の戦略的な政策を確立する必要がある。その政策を確立する際の基本的な視点は、下記の6点に集約できる。
ここで、企業の自助努力とは、
リーディング産業・分野の創出は、企業の自助努力を基本としたうえで、経団連・産業問題委員会がとりまとめた提言「産業競争力強化に向けた提言(1998年12月15日、1999年10月19日)」の高コスト構造の是正および雇用労働分野の改革、「科学・技術開発基盤の強化について(1999年11月24日)」を踏まえ、以下の施策を強力に推進する必要がある。
行政改革で2001年1月に内閣府が発足し、科学技術に関する行政各部の施策の統一を図るために必要となる企画立案および総合調整に関する事務をつかさどることとされている。このような権限をもつ内閣府に、科学技術に関する総合調整機能を持つ「総合科学技術会議」が設置されるが、国として技術開発を強力に推進するためには、会議がその機能を十分発揮して、縦割り行政を改革し、一元的な科学技術行政を推進することが重要である。
科学技術政策担当大臣の任命
内閣府設置法では置くことができるとなっている「科学技術政策担当大臣」を任命し、リーダーシップを発揮することが必要である。
総合科学技術会議の事務局機能の強化
「科学技術政策統括官」のもとに設置される総合科学技術会議の事務局の役割は、各省庁より上位の立場で企画調整する部門として極めて重要であり、民間企業人を積極的に登用するなどして、強力な事務機関とする必要がある。
技術開発がさらに高度化・大規模化する21世紀には、個別企業の技術開発では国際的に遅れをとる可能性が大きい。このようなテーマについては、国としての重点開発領域プロジェクトを設定し、産学官の連携を強化して、国の総力を挙げて取り組むことが重要である。
ミレニアムプロジェクトに継ぐテーマの設定
すでに重点開発領域プロジェクトとして取り組まれている「エネルギー」「宇宙開発」以外に、ミレニアム・プロジェクトである「情報通信」「生命科学」「環境」に続いて「海洋開発」「新材料・新素材」「先進エンジニアリング・システム」など日本が遅れている分野だけではなく、世界をリードしている分野にもプロジェクトを設定して、広範囲に技術革新を促進すべきである。
一元的なプロジェクト推進体制の確立
効率的な研究開発を実現するためには、民間企業の自主性を活かしつつ、産学官が連携し、これらのプロジェクトを一元的に推進する体制を作ることが極めて重要である。このためには、国立研究機関の独立行政法人化を進めるとともに、各プロジェクト毎に関係する試験研究機関の機能を再編統合する必要がある。
現在、研究開発の効率化のために、各省庁毎に試験研究機関を再編したり、各プロジェクト毎に、産・学を含めて省庁横断的に研究開発を進めるなどの施策も実施されつつあるが、こうした取り組みをより強化すべきである。
例えば、内閣府の下に各プロジェクトを推進する各「研究開発機構」を設置し、この機構の下に関連する国立研究機関の機能を再編統合して効率的な研究開発体制を確立し、産学への委託研究や研究助成もこの研究開発機構で一元的に推進することが考えられる。
また、プロジェクトに対しては、複数年度にまたがる予算措置を講ずるなど科学技術予算編成システムの改革が必要であり、明確な評価基準に基づく研究開発の外部評価制度を確立し、次年度以降の研究開発計画・予算・人事等に反映すべきである。
知的財産紛争処理機能強化、知的財産価値評価の迅速化
特許をはじめとする知的財産制度は、技術革新に重要なインセンティブを与える一方で、重要な特許を外国や外国企業に独占されることは、わが国の国際競争力上の大きな問題となる。
このようなプロパテント時代への対応として、迅速な出願手続きと審査期間の短縮および知的財産紛争処理機能の強化がとくに望まれる。そのためには、弁理士や弁護士の増員と法人化が必要であり、ADR(裁判外紛争処理)の充実、知的財産専門裁判官の増員を含む知的財産権専門部の拡充の検討、等が求められる。
技術標準化活動に対する支援強化
国際標準の帰趨が、国際競争力を大きく左右する時代になり、標準化活動は技術開発の極めて重要な部分である。この面でも、欧米各国は官民の総力を結集して、自国技術の国際標準化に取り組んでいる。国公立研究機関は、民間を中心とする国際標準化活動に積極的に参加し、支援を行なう必要がある。
創造的な技術革新を実現するためには、人材の育成と確保が最重要課題であり、一人ひとりが個性を活かして成長し、活躍出来る社会を目指す必要がある。
戦後、わが国では、定められた目標を効率的に実現する人材を重点的に育成してきた。しかし、来るべき21世紀において、創造的な技術革新を達成して豊かで魅力ある日本を築くためには不十分であり、創造力が発揮できる人材を育成しなければならない。
大学入試の改革
18歳未満で大学入学できる飛び級の対象分野の拡大と対象年齢の引下げ、推薦入学制度の弾力化、選抜機会の通年化など、大学入試の一層の多様化を進めるべきである。あわせて、大学入学後の専門教育に対応出来る人材を選抜できるように入試内容についての見直しも急務である。
大学教育と研究の充実
社会の変化に迅速に対応できるよう、学科の新設・改廃および学科定員の変更については、大学の判断による自由な裁量を認めるべきである。また、大学の研究環境の拡充を進めるとともに、多様なキャリアパスを用意し、人材の流動化を促進して、競争的環境の下で大学の研究をレベルアップすべきである。
初等・中等教育に係る規制緩和の推進
新時代のリテラシーであるインターネットを用いた教育を、初等・中等教育の早い段階から積極的に取り入れていくことが不可欠である。また、教科書の学校単位での採択、学校選択の弾力化、社会人の教員への登用促進、外国語指導助手の活用などの、一層の規制緩和も進めるべきである。
初等・中等教育を含めた理数系教育の見直し
初等・中等教育で自然科学的素養を高め、技術に興味を持たせるため、理数系学科の教育を、従来の知識偏重から観察、実験、探求活動重視に改めるべきである。また、ものづくりの大切さを教える教育も行なうべきである。
時代に適合した理工系人材の育成と確保
従来は、企業内教育で大学教育を補完してきたが、経済社会の急速な変化に迅速に対応していくには、民間企業が求める人材像を大学に対して明確にする一方、大学と協力して研究者・技術者の育成を進めていくべきである。
大学においては、実用英語、情報リテラシー、知的財産権、金融工学、起業家教育、情報化教育などを充実するとともに、インターンシップ制度など民間企業側の協力による学生の企業への一定期間の派遣等の実践的教育内容の充実、日本技術者教育認定機構(JABEE)の活用による国際的に通用する技術者教育の確立を図るべきである。さらに、高度専門教育、社会人教育の充実のためには、社会のニーズに対応した大学院大学の強化が重要である。
科学技術創造立国としてのわが国の経済成長を持続するには、わが国のものづくりの伝統を引継ぎ、学校教育、資格付与、社会人教育までの一貫した技術者教育システムを構築し、科学・技術の急速な進歩やそれを取り巻く環境変化に対応できる技術者・技能者を育成し、確保することが重要である。
教育現場における技術・技能教育の重要性の啓発
ものづくりを志望する若手人材を多数輩出するために、技能・技術の重要性を啓発する教育や工業高校における製作実習教育の充実を図る必要がある。
法定資格制度の充実
技能検定制度に関し、3級技能士の受検資格から1年の実務経験を免除し、工業高校在学中に受検できるよう、技能検定制度の改正を行なうべきである。また、技術士制度に関しても、現行の技術知識偏重ではなく、現場技術重視の実践的能力に基づく資格制度に見直し、国際的な相互認証制度についても強力に推進すべきである。
定年を迎える熟練技術者の活躍
熟練技術・技能者の定年退職により、現場における技術・技能の継承が途絶えることのないよう、技術・技能者の評価システム、定年延長・再雇用制度などによる継続雇用、他社再雇用などの人材活用を積極的に行なうべきである。その際、技能・技術の認定・登録制度を創設することにより、熟練技術者が定年退職後に有利な転職の機会が得られるシステムを構築すべきである。
企業における技術革新の促進と国際競争力の強化に向けた、抜本的な法制・税制の改革が必要である。
連結納税制度の2001年度の確実な導入
分社して技術開発と産業化を推進する手法は、リーディング産業・分野創出を促すものとして重要である。これを促進するには、連結納税制度を2001年に確実に導入するべきである。
増加試験研究費税額控除制度の充実
増加試験研究費税額控除制度は、行政の裁量を最小限に限定しつつ、研究開発に積極的に注力する民間企業を支援する優れた制度であり、制度を充実すべきである。
減価償却制度の見直し
企業が生産効率を高め、新たな事業分野への進出を進めていくためには、減価償却制度の大胆な見直しが必要であり、経済実態に見合った、法定耐用年数の短縮・簡素化、償却可能限度額の見直し(備忘価額までの償却を認める)を行なうべきである。あわせて、技術革新の促進のために、一定の研究開発用固定資産の取得費用については、一括損金算入を認めるべきである。
投資税額控除の検討
地球環境問題など特定の課題に対応した設備の新増設を行なう場合には、当該設備のみならず建物までを対象とした投資税額控除を導入すべきである。
複数の企業が共同して、リスクの高い新規事業に進出するため、あるいは事業の再構築を進めるための手段として、アメリカ各州法におけるLLC(リミテッド・ライアビリティ・カンパニー)と類似の、出資者の有限責任と、税制上の措置(事業体の段階では所得課税を行なわず、その損益を出資者の損益と通算)を備えた事業形態を創設することが必要である。そのために、次の法制と税制の整備を速やかに図るべきである。
新産業・新事業の創出には、ベンチャー企業や中小企業の育成が重要な課題であり、大胆に支援していくべきである。
エンジェル税制の拡充
現行エンジェル税制(個人がベンチャー企業に対して行なった株式投資により損失が生じた場合、翌期以降3年間の株式譲渡益との損益通算を認める)に加えて、当該年度における他所得との通算、および株式譲渡益との損益通算期間の延長など拡充を行なうべきである。
日本版SBIR制度の拡大
平成11年度に、中小企業の技術開発からその成果を利用した事業化までの支援を行なう「中小企業技術革新制度(日本版SBIR制度)」が創設されたが、アメリカでは1997年に1400億円の予算が配分されたのに対し、日本では初年度62億円と予算規模が極めて小さい。制度の実効性を上げるためにも、早急にアメリカ並みの予算規模に拡大すべきである。
バイオなどの新技術の推進のためには、国民の理解・支持が不可欠である。そのためには、安全性の確保と国民に安心感を与えるための社会システムの整備と情報開示、対話を重視した活動が重要である。倫理・プライバシー保護については、国民の意識を的確にとらえたルールづくりが必要である。
安全性の確保と国民理解の獲得
遺伝子組換え食品を中心とした国民の不信の根源は、政府・企業・先端技術への不信と同時に、わが国の安全、環境影響に関する研究の少なさ、確固たる科学的評価基準を持たないことにある。安全性研究を推進し、知見を深めることが、国民の信頼と支持を得るためにも重要である。
生命倫理に関するルールの確立
ヒト細胞・組織を用いた研究、医療分野での利用、実用化が急速に進展してきていることから、これらの取扱いや、国民意識を的確に捉えたルールを確立すべきである。
プライバシーの保護に関するルールの策定
遺伝子情報を含む個人情報の取扱いについて、プライバシー保護の立場から、時代を先取りしたルールを確立すべきである。
生物遺伝資源と生命情報をはじめとする研究情報については、国としての組織的な情報データベースの整備が十分なされてこなかった。このままでは、わが国の研究自体が遅れるだけでなく、欧米諸国からアクセスを拒否される可能性があり、早急に整備すべきである。
生物資源センターの設立
産学官の微生物生物資源保存施設等が協力して、微生物・細胞株保存機能、ゲノム解析情報、DNAライブラリーなどの情報を集結する生物資源のセンターを早急に構築すべきである。
国際的な互恵関係の構築
生物遺伝情報や生命情報などの研究情報を保有する欧米諸国や、生物遺伝情報を囲い込む傾向にある開発途上国と国際的な互恵関係を構築することが重要である。
PRTR対応のためのデータベースの構築
広範な環境汚染物質の基礎的知見の充実を効率よく行なうため、国に対しては事業者がリスク評価・リスク管理を行なうことができるようハザードデータの充実に努めるべきである。
特許流通市場の整備
特許流通データベースの充実、特許流通アドバイザー制度の強化等の知的財産の流通を促進するための環境整備を図るべきである。
環境・エネルギー関連の技術開発促進基盤の整備
環境やエネルギー関連の技術力強化が、今後のわが国の産業競争力に大きく寄与する。そのために、国公立研究機関の基礎研究を強化し、成果の民間への移転促進を図るとともに、民間の自主技術開発へのインセンティブ(税制優遇、補助金、政策金融等)の拡充が必要である。
民間の自主的取り組みを支える社会システムの整備
環境・エネルギー分野に関してわが国の進むべき方向を国際的動向を勘案しつつ明確化し、公的セクター(国・地方公共団体)・生産者・消費者の3者間での役割とコストの分担を社会全体の効率性と産業競争力確保の面から明確にすべきである。
また、廃棄物削減・リサイクルや省エネルギーなどの活動についても、税制優遇、補助金、政策金融、環境関連商品公的調達などのインセンティブの一層の充実が必要である。
環境・エネルギー関連ビジネスの国際的展開の促進
技術データベースの整備、環境関連の政府開発援助の充実等、わが国の環境・エネルギー技術の国際的な活用機会を増大する施策を講ずるべきである。
産学官の連携で技術革新を推進するためには、人材の交流が極めて重要であり、公務員法などの枠を越えた規制改革の一層の推進が必要である。
国公立大学教官等の兼業規制の緩和
国公立大学教官の兼業規制については、大幅に緩和する方向が決定しているが、関連する法整備を急ぎ、透明で迅速な運用を図るべきである。
任期付任用制の拡充と積極的な活用
民間と大学・国研の研究者の交流を促進し、研究と教育をレベルアップするために、任期付任用制の拡充と積極的な活用が重要である。
医薬・医療用具の臨床試験を企業が円滑・迅速に行なうための規制改革は厚生省を中心に実施されてきているが、欧米に比べ改革のスピードが遅い。このままでは、医薬・医療産業分野の国際的な立ち遅れに拍車をかける可能性が強く、省庁の枠を越えた総合的な施策を急ぐ必要がある。
臨床試験に必要な教育・研究の促進
大学等ならび一般の基幹医療施設に対して、臨床試験に必要な教育と研究を行なう講座の設置の義務付けが必要である。
臨床試験促進のための医療制度・医療保険制度の改革
臨床試験に参加することで、患者、医師、その他の医療関係従事者のいずれもがメリットを享受できるように、医療制度および医療保険制度を改革することが必要である。