[経団連] [意見書] [ 目次 ]
IT化に対応した制度見直しアンケート結果

1. 書類の電子化関連


税務関連書類の電子化と保存期間の短縮等

規制の現状

国税関係の帳簿書類は、税務署長の承認が得られれば、電子化し保存できることとなった。しかし、

  1. 受領した請求書、領収書などは、電子データによる保存が認められていないため、電子データと紙の保存が併存している、
  2. 税務署長の承認のための基準が不明確、
  3. 企業内の組織変更のたびに、税務署に電子データでの帳簿類保存の申請を書面で行わねばならない、
  4. 保存に用いるコンピュータ・システム関連の膨大な書類の保存が義務づけられる、
  5. 電子化した状態で7年間保存せねばならない、
という問題がある。

要望内容と要望理由

(要 望)
税務関連書類全般の電子化を実現(請求書等のイメージ・データでの保存の認可など)するとともに、電子帳簿保存法適用に当たっての承認基準の明確化・申請手続きの簡素化(電子認証を利用したインターネット経由での申請を含む)、システム関連の保存義務書類の削減、電子データ保存期間の短縮を実現すべきである。

(理 由)
税務関連書類の電子保存が認められたにも拘わらず、現行規制下では、電子化のメリットが十分に発揮されていない。このため、ある損害保険会社のケースでは、税務関連書類の保管に関わるコストが年間10億円という試算もある。
また、7年間の保存義務があるため、多くのハードウェア資源が割かれる上、将来、システム変更を行った場合には、旧システム環境を残しておかねばならないという問題が生じる。

規制の根拠となる関係法令等

電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律 第2条、第4条、第6条、第7条
電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則 第3条、第4条

所管官庁

大蔵省・国税庁

担当課等


商業帳簿等の電子化と保存期間の短縮

規制の現状

商法上、

  1. 商業帳簿類は10年間、
  2. 総会議事録等は本店において10年間(支店においてはその謄本を5年間)、
  3. 監査報告書等は本店において5年間(支店においてはその謄本を3年間)、
原本で保存することが義務づけられている。
また、定款・株主名簿等は書面で常時備え置き、閲覧・コピーに応じなければならない。

要望内容と要望理由

(要 望)
商業帳簿等の電子データによる保存を認めるとともに、保存義務期間を短縮すべきである。
また、定款等は、電子的閲覧、電子データの印字の仕組みが整備されている場合には、書面での備え置きは不要とすべきである。

(理 由)
商業帳簿等は、デジタル媒体による保存が認められていないため、システム化による業務効率向上を妨げている。また、電子データによる保存が認められた場合でも、10年間保存しなければならない。このため、多くのハードウェア資源が割かれる上、将来、システム変更を行った場合には、旧システム環境を残しておかねばならないという問題が生じる。
定款等を電子的に公示することにより、検索機能の利用等により、閲覧者の利便性が向上する。

規制の根拠となる関係法令等

商法 第36条、第244条、第263条、第282条、第429条

所管官庁

法務省

担当課等


固定資産税の納付書の様式統一と電子化等

規制の現状

固定資産税の納付書は、地方自治体ごとにその様式がまちまちな上、電子データ受け付けに関する対応も異なっている。このため、全国展開をしている企業等にとって、納税事務が煩雑になるとともに、情報化の阻害要因となっている。
また、固定資産税の口座引落ができる金融機関(地方自治体との契約が必要)が限定されている上、口座引落が可能であっても、当該金融機関から磁気テープで渡される引落データには、市町村が納税者につける納税者コードや、市町村名を特定するための市町村コードが含まれておらず、企業が引落データを会計処理等に活用することができない。

要望内容と要望理由

(要 望)
固定資産税の納付書の書式を統一した上で、電子的手段によって、納税手続きを行えるようすべきである。
また、口座引落が可能な金融機関が拡大されるとともに、引落データに、納税者コード、市町村コード等を追加すべきである。

(理 由)
固定資産税関連業務の大幅な効率化が可能となる。

  • 地方自治体は、金融機関に口座引落データを渡し、金融機関から引落データを受け取ることによって、自動消し込み作業が可能となり、処理時間を大幅に短縮できる。
  • 金融機関は、様式の統一と口座引落によって、業務処理の効率化が図れる。
  • 企業は、様式の統一によって、納税事務の簡略化が可能となる上、金融機関から受け取る口座引落データを自動会計処理等に活用できる。

規制の根拠となる関係法令等

地方税法

所管官庁

地方公共団体、自治省

担当課等

固定資産税課


製造物責任に関わる図面保存の電子化

規制の現状

製造物責任の免責事由を立証するため、製造業者は製品の図面を10年間保存する必要がある(損害賠償請求権は、当該製造物引き渡し時から10年を経過すると時効)。
この図面が電子データで保存された場合でも、効力を持つか否かが明確になっていないため、書面で保存せざるを得ない。

要望内容と要望理由

(要 望)
製造物責任上、電子データによる図面保存でも法的効力を持つことを明確化すべきである。

(理 由)
設計業務の効率化の観点から、三次元CADの利用が広まっている。電子データにより保存された図面が法的効力を持ち得ないとすれば、そもそもペーパー・レスの設計にもかかわらず、改めて図面を印刷し保存せねばならない。

規制の根拠となる関係法令等

製造物責任法 第4条、第5条

所管官庁

担当課等


労働関係保存義務書類の電子化

規制の現状

雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要書類の中には、労働者の権利関係等について紛争が生じた場合に、証拠保全の観点から、その原本を保存することが求められているものが存在する。

要望内容と要望理由

(要 望)
電子署名・認証制度を活用し、かかる書類の電子的手段による保存を認めるべきである。

(理 由)
労働関係書類が一定期間、書面で膨大なスペースとコストが必要となっている。電子化により、省スペース化と管理業務の効率化が可能になる。

規制の根拠となる関係法令等

労働基準法第109条

所管官庁

労働省

担当課等


申請・届出等関連書類の全面的電子化

規制の現状

申請・届出等関連書類は、一部電子化されているものもあるが、依然として押印された書面のみが受け付け対象となっているものが多い。
また、電子化されたものでも、その多くがフロッピーディスクの提出を認めることに止まっている。

要望内容と要望理由

(要 望)
各種申請・届出等関連手続きについては、電子署名・認証制度を利用し、原則的にオンライン化すべきである。また、関連書類については、全面的に電子データによる保存を可能とすべきである。

(理 由)
これにより、行政事務の効率化、国民負担の軽減等がもたらされるとともに、電子ファイル化の推進によりオフィススペースの有効活用が可能となる。

規制の根拠となる関係法令等

押印された書面の提出を求める法令
(例)電気通信事業法第9条第2項及び3項
  電気通信事業法施行規則 様式第1等

所管官庁

担当課等


入札資格関連書類の電子化

規制の現状

入札資格審査申請の内容は、省庁毎にまちまちである上、納税証明書等の各種証明書や申請書など、膨大な書類を毎年、関係省庁に提出する必要がある。

要望内容と要望理由

(要 望)
入札資格審査申請の内容を政府として標準化するとともに、電子署名・認証制度を利用し、関連手続きをオンラインで行えるようすべきである。

(理 由)
入札資格審査関連業務の効率化・迅速化が可能になる。

規制の根拠となる関係法令等

建設業法等

所管官庁

担当課等


輸出入申告提出書類の電子化

規制の現状

SEA-NACCSにより輸出入申告手続きの電子化が可能となったにも拘わらず、申告後にインボイスを署名捺印し書面により提出することが義務付けられている。

要望内容と要望理由

(要 望)
インボイスの署名捺印要件を廃止し、電子認証制度を利用したオンラインによる提出を可能とすべきである。

(理 由)
コンピュータが普及する中、署名捺印要件が電子化の妨げとなっている。輸出入手続きの迅速化、ならびに事務コストの軽減の観点から、同手続きの完全電子化を実現すべきである。

規制の根拠となる関係法令等

関税法第68条
関税法施行令第60条

所管官庁

大蔵省(共管:通産省)

担当課等

関税局業務課


財産形成非課税貯蓄申告関連書類の電子化

規制の現状

財産形成非課税貯蓄申告に関しては、定型用紙の使用が義務付けられている。

要望内容と要望理由

(要 望)
電子データによる申請も可能とすべきである。

(理 由)
電子データによる申請が認められることにより、帳票印刷費用および従業員記入工数の削減等、事務処理効率化の促進が可能となる。

規制の根拠となる関係法令等

租税特別措置法施行令第2条の26、
租税特別措置法施行規則第3条の7

所管官庁

労働省

担当課等


社会保険診療報酬支払基金から保険者に対して送付するレセプトの電子化

規制の現状

現状、社会保険診療報酬支払基金から健康保険組合など保険者に対してのレセプト送付手段は、紙ベースのものに限られている。

要望内容と要望理由

(要 望)
社会保険診療報酬支払基金から保険者へのレセプトの送付手段として、電子化された情報も導入し、保険者における事務処理を効率化すべきである。

(理 由)
1998年度から、希望する保険医療機関が社会保険診療報酬支払基金に届け出れば、レセプト電算処理システムに参加できる体制の整備が進められているが、社会保険診療報酬支払基金から保険者に対しての体制整備が全く進んでいない。
このままでは、保険者の事務処理の効率化が進まないばかりか、仮に保険医療機関から電算処理化されたレセプト情報が送られてきても、社会保険診療報酬支払基金の中で、わざわざ紙ベースにして(例:紙へのプリントアウト)から、保険者に送付されることになり、膨大な処理を要し、支払基金における事務処理の効率化を阻害することにもなりかねない。

規制の根拠となる関係法令等

所管官庁

厚生省

担当課等

保険局保険課


厚生年金保険・健康保険関連書類の電子化

規制の現状

厚生年金・健康保険被保険者が住所変更するたびに、社会保険事務所に対し資格得喪手続きを書面で行わねばならない。

要望内容と要望理由

(要 望)
厚生年金・健康保険の資格得喪手続きを電子化し、オンラインで行えることとすべきである。

(理 由)
同一企業内の異事業所間の転勤の場合でも、入退社と同様に資格得喪手続きを行わねばならないため、厚生年金・健康保険関連業務の効率化の妨げとなっている。

規制の根拠となる関係法令等

厚生年金保険法施行規則第21条の2
健康保険法施行規則 第3条

所管官庁

厚生省

担当課等



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