[経団連] [意見書] [ 目次 ]
IT化に対応した制度見直しアンケート結果

2. IT化に対応した現行規制等の見直し


通信販売における消費者への通知の電子化

規制の現状

インターネット等を通じた通信販売では、販売業者又は役務提供事業者(以下、「販売業者等」という)は、申込者から申込を受け、かつ、その対価の全部又は一部を受領したときは、遅滞なく、申込者に対して書面にて、当該申込内容を承諾するか否か等に関して通知を行わなければならない。

要望内容と要望理由

(要 望)
消費者への通知を電子的手段によって行うことを認めるべきである。

(理 由)
希少性が高い製品などをインターネット販売の対象とする場合、一週間以内に発送を行えないことが考えられる。この場合、その旨を表示するとともに、上記通知を電子的手段で行えば、消費者との意志疎通が迅速に行われる。郵送にて消費者への通知を行わねばならないとすれば、インターネットを利用する価値が減退してしまう。

規制の根拠となる関係法令等

訪問販売等に関する法律第9条
訪問販売等に関する法律施行規則 第10条、第11条

所管官庁

厚生・農水・通産・運輸省

担当課等


保険販売に関する重要事項の書面交付等の電子化

規制の現状

保険販売に当たっては、生命保険募集人または損害保険募集人が、重要事項について書面の交付もしくはその他の「適切」な方法により説明することが求められている。現状では、電子的手段(Eメール等)による説明が「適切」か否かが不明確である。

要望内容と要望理由

(要 望)
重要事項に関する説明を電子的手段で可能なことを明確化するとともに、電子認証制度の活用により顧客に本人確認を行えることとすべきである。

(理 由)
現行制度は、保険契約者保護の観点から、保険募集人の介在を前提としている。現行制度が果たしている契約者保護の機能を確保しつつ、顧客利便性向上の観点から、電子化を推進していく必要があると考えられる。

規制の根拠となる関係法令等

保険業法第100条の2
保険業法施行規則第53条

所管官庁

大蔵省

担当課等


一般酒類小売業者等によるインターネット上での酒類販売の実現

規制の現状

現在、一般酒類小売業免許や大型店舗酒類小売業免許等には販売方法等に条件が付されている(一般酒類販売業免許には「通信販売を除き小売販売に限る」旨の条件が付されている)。
一方、酒類販売業免許等取扱要領において、通信販売の取扱可能な酒類は、一般店で通常購入が困難な地酒や輸入酒に限られている。

要望内容と要望理由

(要 望)
一般酒類小売業免許や大型店舗酒類小売業免許をもった事業者には、通信販売を可能とすべきである。また、酒類の通信販売における品目制限を撤廃すべきである(現在、通信販売免許に付されている「販売対象者を○○に限る」「未成年者の飲酒は禁止されている旨表示する」等の措置とともに、年齢確認の徹底(例えば成年者のみの会員制)等、未成年者飲酒防止手段を講じる)。

(理 由)
酒類の購入手段の一つとしてネット利用の増大が予測される中、一般酒類小売業者等によるネット上での酒類販売の実現により、消費者の利便性が向上する。

規制の根拠となる関係法令等

酒税法第11条
酒類販売業免許等取扱要領

所管官庁

国税庁(大蔵省)

担当課等

課税部酒税課


インターネット上での医薬品販売の実現

規制の現状

医薬品一般販売業については、薬剤師の配置義務が課される上、店舗の構造設備が定められた基準に適合することが求められる。

要望内容と要望理由

(要 望)
医薬品のカテゴリーを見直すとともに、薬店で販売する医薬品についても、「薬剤師が説明し販売する」必要のあるものの整理を行い、一定の医薬品については、薬剤師の介在なしに、インターネット上で申込を受け付け、構造設備基準を満たす店舗、倉庫等からの配送を認めるべきである。

(理 由)
これにより、風邪等により外出が困難とされる消費者等の利便性の向上が図れる。

規制の根拠となる関係法令等

薬事法第26条、第27条(第8条〜第9条の2を準用)
薬局等構造設備規則

所管官庁

厚生省

担当課等

医薬安全局企画課


インターネット上での電子的手段を介在した書面交付による割賦販売の実現

規制の現状

割賦販売及びローン提携販売(以下、「割賦販売等」と略す)により契約を締結した場合には、販売業者は、遅滞なく、「契約の内容を明らかにする書面」を購入者に交付しなければならない。また、購入された指定商品の弁済金の支払いを請求するときには、弁済金の支払うべき時期や弁済金の額及び算定根拠について、遅滞なく、その旨を記載した書面を購入者に交付しなければならない。
加えて、購入者から申込の撤回(クーリングオフ)を行う場合には、書面を発することによって効力が生ずるとされている。

要望内容と要望理由

(要 望)
割賦販売等における、契約締結時の契約内容に関する書面の交付、弁済金請求時の書面の交付、ならびにクーリングオフ時の書面交付については、消費者保護策等を講じつつ、電子メール等の電子的手段による交付を認めるべきである。

(理 由)
書面によらない割賦販売がインターネット上で行えるようになれば、消費者の利便性が向上する。また、クレジットカードを含めた割賦販売の請求通知がEメールもしくは画面照会で可能となれば、消費者の利便性と会社の事務効率が向上する。

規制の根拠となる関係法令等

割賦販売法 第4条、第4条の3、第30条の2第1項2号

所管官庁

通産省

担当課等

産業政策局取引信用部


インターネット上での旅行取引の促進

規制の現状

旅行取引においては、取引条件書や約款等を書面で交付することが義務づけられている。このため、インターネット等で旅行商品を販売する際には、取引条件書や約款等を利用者が印字することが求められる。

要望内容と要望理由

(要 望)
旅行取引に関する取引条件書や約款等について、書面の代わりに、電子的手段による交付・確認ができるようにすべきである。

(理 由)
モバイル・コンピューティングの普及に伴い、必ずしも印字を前提としない利用者が増加している。このため、旅行商品取引条件書等の印字が義務づけられると、利用者の利便性が損なわれる。

規制の根拠となる関係法令等

旅行業法第12条の4、第12条の5
旅行業法施行規則第25条〜第27条

所管官庁

運輸省

担当課等

旅行振興課


インターネット中古品オークションの促進

規制の現状

古物の売買等を行う古物商は、一定金額を超える取引においては、取引毎に相手方の住所、氏名、職業および年齢を確認し、又は相手方からその住所、氏名、職業及び年齢が記載され、署名のある文書の交付を受けなければならない。

要望内容と要望理由

(要 望)
インターネット中古品オークションにおいては、電子的認証制度を利用した電子的手段によって、取引参加者に係る上記の確認がなされたものとすべきである。

(理 由)
インターネット中古品オークション事業の促進と消費者利便の向上がもたらされる。

規制の根拠となる関係法令等

古物営業法 第2条、第3条、第15条第1項

所管官庁

警察庁

担当課等


インターネット上での懸賞関連規制の撤廃

規制の現状

通信販売サイトもしくは同サイトから直接リンクが張られているサイトは一つの店舗とされ、そこでの懸賞は取引付随と見なされる。このため、上記サイトにおいては、実際に商品等を購入した者のみを対象とした懸賞は許されるが、不特定多数を対象とした懸賞は禁じられている。

要望内容と要望理由

(要 望)
通信販売サイトならびに同サイトから直接リンクが張られているサイトにおいて、商品の購入の有無にかかわらず、不特定多数を対象とした懸賞(オープン懸賞)を可能とすべきである。

(理 由)
懸賞の応募がインターネットを使う動機になっている場合が多いため、インターネットの更なる普及のためにもかかる懸賞に関する規制を撤廃すべきである。

規制の根拠となる関係法令等

不当景品類及び不当表示防止法第3条
懸賞による景品類の提供に関する事項の制限(昭和52年3月1日、公正取引委員会告示第3号)

所管官庁

公正取引委員会

担当課等


インターネットを通じた職業紹介事業許可要件の見直し

規制の現状

有料職業紹介事業の許可を得るためには、適切な規模の事務所を有することなどが求められる。また、求職者の能力を見極めた上での紹介を行なう観点から、求職票、求人票を書面で備えておくことがなどが求められる。

要望内容と要望理由

(要 望)
インターネットを通じた職業紹介事業が可能となるよう、規定を整備すべきである。

(理 由)
インターネット上の職業紹介事業が、米国で急速に発展する中、日本でもネット上で人材や仕事を探そうというニーズは高まっている。事業所に関する現状の許可要件は、インターネットによる職業紹介には適用が困難である。このため、インターネットによる迅速で割安な職業紹介事業の道を阻んでいる。

規制の根拠となる関係法令等

職業安定法第5条の3、第5条の7、第30条
職業安定法施行規則第24条
職業安定法施行規則の一部を改正する省令の施行等について(平成9年3月31日)2(有料職業紹介事業の許可要件)

所管官庁

労働省

担当課等


インターネット等を通じた学位取得の実現

規制の現状

大学・大学院においてメディアを用いて教育を行なう際には、同時性の確保などが基準とされている。また、大学においては20単位以上を面接型の授業で取得せねばならないことになっている。さらに、博士号については、通信教育での取得が認められていない。

要望内容と要望理由

(要 望)
インターネット等を通じた教育履修により大学・大学院の学位を取得できるよう、同時性の確保、面接型授業の履修義務を見直すとともに、通信教育での博士号の取得を可能とすべきである。

(理 由)
情報技術の発展に伴い、インターネット等を通じた教育を実施できる環境が整いつつあること、ならびに、生涯学習に対するニーズの高まりなどに照らし、インターネット等を通じた学位取得への道を拓く必要がある。

規制の根拠となる関係法令等

大学設置基準第15条、第25条
大学設置基準(第25条)に基づく平成10年文部省告示第46号
大学通信教育設置基準に基づく学校教育施行規則等の一部を改正する省令
大学院設置基準第15条、第25条

所管官庁

文部省

担当課等


株主総会の招集通知の電子化

規制の現状

各社は、株主総会の招集通知を作成し、書面にて総会を招集する2週間前に送付しなくてはならない。

要望内容と要望理由

(要 望)
電子署名・認証を利用したインターネット経由の通知を認めるべきである。

(理 由)
株主に書面で招集通知を送付した場合、ある上場企業によれば以下の費用が発生したとの試算がある。

  1. 招集通知関連費用の合計、約4,600万円(期間:約2ヶ月)
    (内訳)郵便代:約2,000万円
        印刷代:約1,800万円
        封筒代:約  100万円
        名義書換代理人手数料:約700万円(含む郵便代)
    
  2. 決議通知関連費用の合計、約5,600万円(期間:約1.5ヶ月)
    (内訳)郵便代:約2,000万円
        印刷代:約  150万円
        封筒代:約  150万円
        名義書換代理人手数料:約3,300万円(含む郵便代)
         *手数料の内、配当金計算のための手数料:約2,400万円
    

規制の根拠となる関係法令等

商法第232条、監査特例法第21条の2、参考書類規則8条

所管官庁

法務省

担当課等


電子媒体による株式会社公告の実現

規制の現状

株式会社公告は、官報または日刊新聞紙に掲載しなければならない。しかし、公告を電子媒体によって行うことの可否については明確化されていない。

要望内容と要望理由

(要 望)
電子媒体公告を認めるべきである。

(理 由)
株式会社公告の媒体として、多くの企業が日刊新聞紙を使用することを定款で定めている(一般株主にとり官報は入手が容易ではないことから、官報で公告を行っている企業は少数派)。
商法は、(1)定時総会によって決議された単独決算報告、(2)会社の議決権を行使する者または配当を受ける者への公告を定めている。この公告を日刊新聞紙1紙に掲載した場合、(1)に200万円、(2)に60万円程度のコストがかかる。
株主公告の電子化によって、上記費用を削減することが可能となる。

規制の根拠となる関係法令等

商法第166条第4項、商法第283条第3項、監査特例法第16条第2項、
商法第224条ノ三

所管官庁

法務省

担当課等


ITを利用した株主総会の実現

規制の現状

株主総会の議決権行使は、議案に対する賛否を券面に記入して総会当日会場に持参するか、前日までに会社宛へ郵送することになっている。このため、遠隔地や海外の株主にとって議決権を行使するのが事実上困難になっている。

要望内容と要望理由

(要 望)
インターネット上での議決権行使を認めるべきである。

(理 由)
株主総会参加のための時間・距離・コストの制約を取り除き、より多くの株主との意思疎通を図ることが可能となる。また、同時に、定足数の確保も容易になる。

規制の根拠となる関係法令等

監査特例法第21条ノ3

所管官庁

法務省

担当課等


支店の設置に関わる支店所在地法務局での登記の不要化

規制の現状

99年11月に公布された「電気通信回線による登記情報の提供に関する法律」により、本店所在地法務局における登記情報(本店、支店双方)は、本店所在地法務局に加え、他の法務局でも閲覧可能となった。しかし、支店を設置する場合には、依然として本店所在地法務局、当該支店所在地法務局の双方で登記することが必要となっている。

要望内容と要望理由

(要 望)
支店の設置に関わる支店所在地法務局での登記を不要とすべきである。

(理 由)
本店所在地法務局での登記情報には、支店の登記情報も含まれている。本店所在地法務局での登記情報が、他の法務局での閲覧可能であることから、支店所在地法務局における支店の登記は、完全に重複している。

規制の根拠となる関係法令等

商法 第65条

所管官庁

法務省

担当課等


海外グループ企業との技術情報共有に際する輸出管理手続きの簡素化

規制の現状

特定地域の海外現地法人に対し、輸出貿易管理令で定める特定の種類の貨物の設計、製造または使用に係る技術を輸出する際には、通産大臣の許可を得なければならない。

要望内容と要望理由

(要 望)
事前に届け出たグループ企業同士の技術情報の共有に関しては、これを一括して認め、個別の手続を不要とすべきである。

(理 由)
現行の輸出管理手続きの下では、海外グループ企業とのネットワークを通じた技術情報共有の効率化が阻まれている。

規制の根拠となる関係法令等

外国為替及び外国貿易法第25条

所管官庁

通産省

担当課等


建築確認申請及びその関連手続の電子化・ワンストップ化の推進

規制の現状

建築確認申請やその関連手続(例えば都市計画法上の開発許可手続等)を行う際、地方公共団体との事前協議を含めて多様な窓口での手続が必要になっている。窓口毎に書類や図面を必要部数提出するように求められるため、同一書類であっても窓口ごとに提出しなければならない。また、地方公共団体により書式が異なっており、企業の事務処理負担が重くなっている。

要望内容と要望理由

(要 望)
建築確認申請に際して、書類や図面の電子認証制度を利用した電子媒体による提出を推進するとともに、地方公共団体の部局ごと、あるいは地方公共団体ごとに提出する書類の提出窓口の一元化を図るべきである。

(理 由)
企業の書類作成時間や申請手続等に関わるコストが削減されるとともに電子ファイルが可能になる。

規制の根拠となる関係法令等

建設基準法第6条、都市計画法、まちづくり条例等

所管官庁

建設省

担当課等


下請取引における受発注の電子化に関わる公取委指導の廃止

規制の現状

公正取引委員会は、下請代金支払遅延等防止法の下、下請事業者が応じる場合のみ、親事業者が製造・修理委託の通知を磁気記録媒体等で行えるとの方針で指導を行っている。

要望内容と要望理由

(要 望)
かかる指導を廃止すべきである。

(理 由)
受発注の電子化が一般化する中で、同指導は業務効率化の阻害要因となっている。

規制の根拠となる関係法令等

昭和60年12月25日公正取引委員会事務総局取引部長通知
「親事業者が磁気記録媒体等の交付等によって発注を行う場合及び下請取引の経緯を磁気記録媒体等に記録し保存する場合の指導方針について」

所管官庁

公正取引委員会

担当課等


建設工事の請負契約の電子化

規制の現状

建設工事の請負契約は、請負契約の締結に際し、工事内容、請負金などの契約内容を書面に記載して署名または記名押印して契約当事者相互に交付することになっている。これは、電子商取引による業務効率化を阻んでいる。

要望内容と要望理由

(要 望)
電子署名、電子認証の法制度の整備に伴い、当該事項を電子化に対応した内容に改訂することを認めるべきである。

(理 由)
建設業法においては、建設工事の請負契約の内容を記載し、記名押印した書面を相互に交換する必要があり、電子媒体による契約手続が認められていない。建設工事の請負契約の電子化を認め、各種文書・図面の電子的保存による業務効率を可能にすべきである。

規制の根拠となる関係法令等

建設業法第19条1

所管官庁

建設省

担当課等


個人情報保護条例に基づくオンライン接続禁止条例の早期是正

規制の現状

地方公共団体では、個人情報保護条例のなかで、他団体とのネットワーク接続を禁ずる条項を設けているところがある(99年8月時点で525団体)。これによって、例えば公立学校のインターネット接続ができなくなるなどの弊害が生じている。

要望内容と要望理由

(要 望)
早急に公立学校のインターネット接続について、オンライン接続禁止条項の適用除外とするとともに、技術革新の成果を踏まえたプライバシー保護策を講じた上で、個人情報保護条例におけるオンライン接続規制を見直すべきである。

(理 由)
高度情報通信社会に向けて、国、地方公共団体、企業、国民を通じたネットワーク化の推進が課題となっており、ネットワーク接続規制の見直しは急務となっている。

規制の根拠となる関係法令等

地方公共団体の個人情報保護条例

所管官庁

自治省

担当課等

大臣官房情報政策室


測量法の見直し

規制の現状

公共測量については、測量計画機関が、観測機械の種類、観測法、計算法等を規定した作業規程を定め、建設大臣の承認を得る必要があり、建設大臣は作業規程の準則を定めることができるとされており、実質上の作業規程となっている。

要望内容と要望理由

(要 望)
品質を認定された民間の測量成果等について、国や地方公共団体が柔軟に活用できる仕組みとする。

(理 由)
測量技術のデジタル化や急速な技術革新等に迅速に対応するため、一定の品質等が確保されている場合には、測量の手法等は行政が決めるのではなく、事業者の自己責任と創意工夫に委ねる道も開くべきである。

規制の根拠となる関係法令等

測量法 第33条、第34条等

所管官庁

建設省国土地理院

担当課等


管轄裁判所合意の電子化

規制の現状

民事訴訟法において、当事者は、第1審に限り、合意により管轄裁判所を定めることができる。合意は、書面で行わなければ、その効力を生じない。

要望内容と要望理由

(要 望)
電子データが双方の手元に残れば合意したものと認めるべきである。

(理 由)
電子契約における管轄合意の妨げとなるため。

規制の根拠となる関係法令等

民事訴訟法第11条2項

所管官庁

法務省

担当課等



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