[経団連] [意見書]
日加経済関係の多様化に向けて

〔表4〕
業種別日加貿易・投資上の課題


食 品

  1. (豚肉に関して)米国輸出連合会が販売奨励金を12億円位出しているのに対し、カナダ・ポーク・インターナショナルは2千万円位しか出していない。カナダ政府の販売に対する支援を強化(予算枠の引き上げ、販売販促のための強力な組織の設立等)する必要がある〔豚肉〕。
  2. 小麦輸入の懸念事項として、WTOがState Trading Enterprise(独占的国家貿易)についての抵抗を示しており、今後の議論の展開によっては、日本の食糧庁やカナダ小麦局(CWB)も独占的国家貿易との指摘を受ける懸念がある〔小麦〕。
  3. (菜種輸入に関して)他の穀物同様、大部分をバンクーバーから船積みしており、カナダ国内の輸送部分は鉄道貨物車に依存しているが、時に、内陸輸送能力を無視した無計画な輸出プログラムが見られる〔菜種〕。

紙パルプ

  1. 為替リスク:米ドルとの為替リスクが存在する(生産コストはカナダドル、販売は米ドルでの取引きが中心)。
  2. 税制上の優遇措置、恩恵が段々と少なくなっている。
  3. 紙パルプ工場が多く立地するケベック州が独立すると多少問題がある。フランス語も不便。
  4. パルプ材の価格競争力の問題(カナダ材は品質は良いが針葉樹の成長に長期間かかるので、用途によっては他の材でも代替できる)。

輸入住宅

  1. 住宅関連の関税率(用途によって非常に細かな分類がなされており、大きなHSコードの中に様々な関税率があってわかりにくい)
  2. JISとISOとの整合化(仕様規定において断熱性や気密性能等のカナダの基準値がそのまま表示・使用できない)
  3. JAS認証と指定検査機関制度や相互認証制度に関わる問題(基準の物差しを一定にするための手続きが煩雑)
  4. 資材輸入上の問題点:
    • 納入資材の問題(破損、傷、汚れ、欠品等、資材が完全でない)
    • 発注と違う資材(サイズ、品番、数量、色等)
    • 納期の遅れ、不確定さ
    • サプライヤーの対応の問題(トラブルに対する対応が遅い、メーカーに意図が伝わらない、予告無しに廃番にされる等)
    • その他(カタログで想像したものと違う、納品された時の資材の置き場が無い、資材がダメージを受けた時の保険の関係がスムーズでない等)

林 業

  1. 貿易環境上の不確定要素
    カナダの林産品に対し米国は州毎に輸入割当制をとっている。その割当量が変化すると、カナダの輸出業者が日本に輸出する数量・価格に変化が生ずる。
  2. ブリティッシュ・コロンビア(BC)州では、州の伐採賦課金、伐採基準等があり、高コスト体質、価格硬直化につながっている。また人工林のリサイクル体制(植林と伐採)が整備されていないため供給が不安定。
  3. 環境保護団体による伐採妨害、林産企業に対する圧力が強い。
  4. 「住宅品質確保促進法」への対応が不十分
    欧州業者のほうが対応が良い(例:木材の人工乾燥設備は欧州では既に完備されているが、カナダの場合はそうした設備が十分でない。)

自動車

  1. 自動車の輸入関税に係わるWTO提訴
    Auto Pact(1965年)に基づき、メンバーは(1)カナダ付加価値率60%以上、(2)カナダ国内での生産≧販売、を条件に輸入する自動車(輸出国は問わない)の関税を免除される。一方、カナダのMFNベースの自動車関税は6.1%(1999年)でオート・パクト・メンバーと差別が存在する。日本政府は1998年7月、WTO協議を要請し、1999年2月にパネル設置、10月に中間報告、12月22日に最終報告が発表され、日本政府の主張を全面的に認める内容となった。カナダ政府の上訴により、WTOパネル上級委員会で審議される見込み。

自動車部品

  1. CSA(カナダの安全規格)によるコスト・アップやCMVSS(カナダ車両安全規格)による制約がある。

情報通信

  1. 国産化要請(州レベルのバイ・カナディアン法)、州内、国内で生産している企業の優遇措置がある。
  2. NAFTA域外差別:NAFTA内の輸入税免除、特典により日本からの輸入が不利になっている製品がある(例:日本からのテレビ輸入関税は5%、ビデオ・モニターは6%に対し、NAFTA域内関税はゼロ)。

資 源

  1. 厳しい自然・採掘条件に加え、長い鉄道輸送距離(約1,000Km)
  2. 割高な港湾使用料や山元に対する重い税・ロイヤリティ負担
    (連邦の他に州からもIncome Tax徴収)
  3. 厳しい環境規制(実際に新規炭鉱開発が制約受ける例あり)
  4. 日本向けシェアの維持・拡大のためには更なるコスト合理化に取組み、競争力をアップさせると共に、今後需要の伸びが予想される一般炭や非微粘炭へのシフトを推し進める必要がある。

銀 行

  1. 現地法人形態における課題

    1. 親銀行への貸出規制
      払込資本金の20%を超える場合は、取締役会の事前承認が必要、且つ、貸出期間は30日以内。
    2. 流動性比率ガイドライン
      行政指導により総資産に対する流動性資産が10%以上。
    3. 過少資本税制
      親銀行からの借入に対して一定額を超える部分の利息については損金算入を認めない。尚、親銀行からの借入に対して資本金の2倍(現行は3倍)を超える部分の利息について損金算入を認めないという法案が検討されている。
      今回の改正は、親銀行が保証または担保提供している第三者からの借入も親銀行からの借入と見做す(現行は見做さない)としており、現行の制度を大幅に強化するものとなっている。本件は銀行に限らず、一般事業法人にも適用される。

  2. 支店化の際の問題点

    1. 小口預金受入制限
      支店での15万カナダドル未満の小口預金の取扱い不可。
    2. 所得税特別措置適用期限
      支店転換に係るその他細則が出揃っていないにもかかわらず、2000年末という期限が設定されていることが問題。
    3. 擬制資本金
      支店開設にあたり、支店の負債総額の5%または10百万ドルの大きい額を預託する義務があり、合わせて現地金融当局による独自の自己資本規制条件の緩和に伴ない、預託率を引上げることも予想され、結果として他国に比し過重になる惧れ無しとせず。

損害保険

  1. 州別免許制度
    カナダで営業する保険会社は営業免許を州別に取得する必要がある。またサスカチュワン州を除き免許の有効期間は1年で、毎年、更新する必要がある。
  2. 株式取得の制限
    カナダでは非居住者による保険会社の株式保有を制限する州法がある。例えばケベック州では非居住者が保険会社の議決権付き株式の30%超を取得する場合、当局の許可が必要となる。
  3. 法定供託金
    外国保険会社については、国内保険会社に対して求められる法定資産の110%以上の法定供託金を求められ、四半期毎にチェックを受ける必要がある。
  4. 再保険に関する規制
    出再保険総額は当該保険会社の総引受け額の75%以内、また非居住保険会社への出再は総引受け額の25%以内という制限がある。
  5. 州営保険会社による独占
    カナダでは全ての州で労災保険は州営保険会社が独占しており、またBC州等では、強制自動車保険を州営保険会社が独占しており、民間保険会社は引受け不可となっている。
以 上

日本語のホームページへ