[経団連] [意見書] [ 目次 ]

「一つ」の電子政府実現に向けた提言

―デジタル・オポチュニティを個人・企業・社会に開くために―

(別添資料)


早急にワンストップ・サービス化を実現すべき
国民生活や企業活動に関連の深い手続事例

  1. 住所・戸籍関連手続
  2. 国民全体に対するサービス向上と行政の効率化のため、住所・戸籍関連手続のワンストップ化を早急に実現すべきである。

  3. 自動車保有関係手続
  4. 自動車保有関係手続は、現在、ワンストップ化が検討されている。達成年度は「概ね2005年度」とされているが、これを明確化、前倒しすべきである。

  5. 輸出入及び港湾諸手続
  6. 輸出入及び港湾諸手続のワンストップ化は、「順次拡充」とされている。今後の取り組みを明確化し、早急に完全なワンストップ化を実現すべきである。

  7. 政府調達手続
  8. 2001年1月より競争契約参加資格審査の統一基準に基づく新システムによる資格審査が実施され、2005年度までに電子入札・開札を導入すべく、取り組むこととなっている。しかし、米国では政府調達に電子商取引を活用し、既に間接経費削減などの成果をあげていること、英国では2001年3月までに90%の低価格品の調達がオンライン化されることに照らし、現在の取り組みを加速する必要がある。
    米国においては、2500ドル以下の小口調達の場合には、総務庁が連邦政府機関共通の電子ショッピング・モールを開設し、ワンストップで調達を行えるよう工夫されている。このような取り組みを参考にしつつ、低価格品の調達をワンストップ化し、早急にその運用を開始すべきである。

  9. 建築確認申請および関連手続
  10. 現在、都市計画法上の開発許可手続などの建築確認申請および関連手続は、地方公共団体との事前協議を含めて多様な窓口での手続が必要になっている。また、窓口毎に書類や図面を必要部数提出するように求められるため、同一書類であっても窓口ごとに提出しなければならない。さらに、地方公共団体により書式が異なっており、企業の事務処理負担が重くなっている。オンラインでワンストップで行えるようすべきである。

  11. 道路占有許可および使用許可手続
  12. 国道・県道・市町村道は、占有許可の申請窓口が異なり、使用にあたっては、警察署への申請も必要となっている。実際の道路工事が、国道・県道・市町村道に跨ることも多いことから、一括オンライン申請の実現は、関連事務効率化に大きく貢献する。


推進すべき国民生活の質的向上に直結するプロジェクト (1)
―医療・介護情報ネットワーク―

【必要性とイメージ】

少子高齢化の急速な進展により、国民の多様なニーズに対応した医療・介護サービスの効率的な提供を求める声が高まっている。また、現状では、医療・介護のサービス提供機関同士の連携、情報共有が不十分であり、個人が継続的ケアを享受できるようにすること、ならびに持続可能な医療・介護制度の確立が喫緊の課題となっている。さらに、一般国民が入手できる医療・介護関連情報が限定されていることから、自らに最適なサービスを提供できる医療・介護機関の選択が困難などの問題がある。
国民の満足度を高め、さらに医療・介護サービスの効率的な提供を図るため、個人が、ネットワークを通じて、地域の医療・介護機関関連情報(各機関の施設・スタッフ・サービスの内容、信頼できる第三者機関が提供する医療機関、医師、介護サービス事業者の評価情報等)を手軽に入手するとともに、自身の診療録等を電子的に利用することによって、自らのニーズに適した医療・介護サービスの選択や組み合わせ(入院施設から老人介護施設への転院の円滑化などに貢献)、ならびに疾病予防、健康管理への活用などができる仕組みが必要である。また、医療・介護の保険者がネットワークによってレセプトを入手し、レセプトの点検、適切な保険医の紹介、予防医療の実施など、利用者の立場に立って適切かつ効率的な医療を確保する機能を強化できるようにすることが重要である。ネットワーク型医療・介護サービスの本格展開も求められる。
個人情報保護に十分配慮しつつこうした医療・介護ネットワークが地域に形成されれば、医療・介護機関も、事務の電子化をはじめ業務の効率化が可能となり、医療・介護費用の節約の余地が生まれる。この結果、国民の満足度の向上、医療・介護コストの適正化、ならびに医療・介護保険業務の効率化等が実現できる。

【実現のための課題】

医療・介護ネットワーク実現のためには、傷病・診療行為のコード化・互換性の確保、レセプトのデータベース化に向けた記載事項の改善(受診日毎の傷病名、診療行為の明示等)などが図られねばならない。
また、医療・介護情報の中には、機密性の高いものもあることから、医療・介護情報ネットワークの構築は、個人情報保護やデータ改ざん防止のため、必要なルールや技術利用を前提とする必要がある。


推進すべき国民生活の質的向上に直結するプロジェクト (2)
―危機管理情報ネットワーク―

【必要性とイメージ】

災害等に対する危機管理能力向上の必要が指摘されて久しい。危機管理能力向上のためには、官邸、省庁、地方公共団体において、速やかに情報を共有し、適切な対応を行うことが不可欠である。しかし、現状では、各組織間の情報共有化すら、必ずしも迅速・円滑に行われているとは言えない。
危機管理情報ネットワークには、官邸、省庁、地方公共団体、警察、消防署等が参加する。災害の発生等に関する情報が迅速に現場から官邸にまで伝わり、関係省庁、地方公共団体の協力の下、適時適切な対応が可能になる。また、このネットワークは、平時においても、例えば道路行政などに活用することによって、投資効率を高めることができる。

【実現のための課題】

危機管理情報ネットワーク実現のためには、省庁横断的、国・地方一体的に情報の共有・活用を図る仕組みを整備しなくてはならない。具体的には、組織間でそれぞれ異なる情報の提供様式を標準化するとともに、危機管理面で取得すべき情報項目、共有すべき情報項目の決定などが必要になる。
また、既存の情報システムの有効活用に配慮しつつ、迅速な情報の集約・統合を図る安全性の高い共有プラット・フォームを構築する必要がある。


新事業・新産業創出を促進するプロジェクト (1)
―地理情報システム(GIS)―

【取り組みの意義】

GISは、紙ベースの地図では困難だった情報の重ね合わせを容易にし、行政業務の効率化や総合的な管理・分析を可能とするとともに、行政サービスの向上にも貢献する。また、GIS情報を省庁、部課等の組織の垣根を超えて活用することにより、GISの威力は飛躍的に高まる。さらに、官民間でGIS情報を相互利用することによって、GIS活用のコストを削減するとともに、企業はデジタル地図上に各種情報を展開し、消費者に新たなサービスを提供することができる。

【活用のための課題】

本年6月のGIS官民推進協議会の取りまとめに基づいた着実な取り組みが必要である。行政においては、情報の電子化やGISの積極的活用を図るとともに、省庁間、部署間でGIS情報を可能な限り共用していく必要がある。また、GISの活用のためには、地図データを含むGIS情報の流通促進が不可欠であり、何よりもGIS行政情報の民間利用をより一層促進する必要がある。
民間におけるGIS行政情報の自由な活用を可能とするため、測量成果の複製・使用に関する承認に際しても、使用目的を申請項目から除外すべきである。測量関連規制の見直しを含め、品質を認定された民間の測量成果等を国や地方公共団体が柔軟に活用できる仕組みを整えることも重要である。また、リアルタイムの高精度位置情報は、災害対策、ITS、カーナビ、デジタル地図など、国民生活や企業活動の基本的インフラとして期待できることから、電子基準点の拡充、高機能化や適切な保守等を図る必要がある。


新事業・新産業創出を促進するプロジェクト (2)
―高度道路交通システム(ITS)―

【取り組みの意義】

ITSは、エレクトロニクスや情報通信技術を活用したより高度な道路交通システムで、ナビゲーションシステムの高度化、自動料金収受システム(ETC)、安全運転の支援、交通管理の最適化等を目指して取り組みが進められている。
ITSの実用化によって、交通死亡事故の抑止とともに、年間12兆円の経済的損失が発生していると言われる交通渋滞を大幅に減少させることができる。さらに、燃料消費量とCO2排出量の削減などが期待され、その市場規模は2015年までに60兆円に達すると見込まれている。

【推進の課題】

現在、ITSには、警察庁、通商産業省、運輸省、郵政省、建設省の5省庁が関わっている。今後は、これら省庁の連携強化に加えて、情報の幅広い活用を促進するため、全省庁的な取り組み体制を整備することが不可欠である。
また、規制緩和によって民間における道路交通情報の提供や加工編集を促進し、企業が高付加価値情報を消費者に提供することを可能とすべきである。
VICS(道路交通情報通信システムセンター)サービス用に自動車専用道路と一般道路にそれぞれ配備されている電波ビーコン(建設省が配備)と光ビーコン(警察庁が配備)については、両者ともあらゆる道路で利用できるものとすることによって、VICSサービスのインフラの拡大、新規サービスの促進を図ることが求められる。
ETC(Electronic Toll Collection System:料金自動収受システム)についても、ETCに活用されているDSRC(Dedicated Short Range Communication:専用狭域無線通信)システム(5.8GHz帯の無線設備)の用途を自由化するとともに、ETCを利用した車輌運行管理が行えるよう、ETC料金所で得られる車輌の通過情報を開示することが期待される。


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