[経団連] [意見書] [ 目次 ]

平成13年度税制改正提言の概要

2000年9月12日
(社)経済団体連合会

  1. 中長期的重点課題
    1. 構造改革のグランドデザインと税体系の抜本的改革
    2. 日本経済の潜在成長力を十全に発現させるためのあらゆる方策を実践するとともに、財政構造改革、社会保障制度改革、そして税制の抜本改革を一体のものとして推進することにより、国民負担率を抑制しながら、安定的な経済成長を確保すべきである。
      とりわけ地方財政については、徹底した歳出削減に加え、自治体を適正規模に再編した上で、国と地方の事務区分見直しに応じた税源の再配分を行なうことによって、自立を図る必要がある。

    3. 直間比率の是正
    4. 少子・高齢化が進む中で活力を維持していくためには、所得課税や社会保険料などの直接的な負担の増加を回避し、国民が広く薄く負担する消費税で賄っていくことが望ましい。そのためには、インボイス方式の導入や簡易課税制度の見直しにより「益税」を解消し、消費税に対する国民の信頼性を高めるとともに、複数税率化、内税化などの制度整備を進めつつ、消費税のウエイトを高めていく必要がある。

    5. 法人課税のさらなる改革
    6. 法人税実効税率は、米国並みの水準(40.87%)となったが、各国とも経済環境に応じた法人課税の見直しが行われており、わが国においても、国際的潮流に合致した一層の見直しを進める必要がある。併せて、諸外国と比べて不利となっている欠損金の繰越し・繰戻し制度や減価償却制度のあり方を抜本的に見直していくことが不可欠である。

    7. 個人所得課税の改革
    8. 現在の定率方式等による「恒久的減税」を、早急に、各所得階層の税率引き下げを含めた制度減税に改める一方で、国際的にも高い水準にある課税最低限を引下げ、国民の大多数が、その所得に応じた税負担を行なうようにする必要がある。
      また、課税の公平の確保とともに国民の納税意識を高めるために、納税者番号制度の導入や脱税の罰則強化に取り組む必要がある。

  2. 当面の重点要望項目
    1. 企業組織再編税制の整備
    2. わが国に立地する企業が、経営の効率性を追求し、国際競争力を維持・強化していくには、企業組織を柔軟に改変する必要がある。合理的な企業組織再編の足枷となることのない、経済実態に即した簡素な税制を早急に整備することが不可欠である。
      具体的には、企業組織再編に伴う資産の移転について、実質的に資産売買に該当する場合を除き、税務上の簿価移転により譲渡損益課税を繰り延べ、欠損金等の引き継ぎを認める必要がある。また、組織再編の際の登録免許税・不動産取得税は産業活力再生特別措置法の合併の取扱いに準じた軽減措置が必要である。

    3. 連結納税制度の平成14年度からの確実な導入
    4. グループ経営の進展に対応して、事業組織形態選択の自由度を拡げることが急務である。連結納税制度について、その導入を前提とした企業グループの再編が数多く計画されているところであり、企業組織再編税制の整備に引き続き、平成14年度には確実に導入することが不可欠である。

    5. 産業新生、IT革命に向けた税制の活用
    6. 国の豊かさの基礎である産業の新生は、最重要課題のひとつであり、世界規模のIT革命、地球環境問題、高齢化等々の環境変化を踏まえつつ、民間企業が選択と集中に基づく事業の再編・合理化や、ITの高度利用、科学技術の強化などを通じて創造的なイノベーションに取り組むことができるよう、税制面からの支援措置が必要である。

    7. 法人事業税の外形標準化は問題が多く容認できない
    8. 地方における法人の税負担の在り方は、財政構造や税体系全体についての検討の中で議論されるべきであり、実質賃金課税となる事業活動価値をはじめとする外形基準による法人事業税の課税は、わが国経済の活力を奪うものであり、容認できない。

    9. 有価証券譲渡益課税における源泉分離課税方式の廃止延期
    10. わが国経済の本格的な景気回復のためには、株式市場の活性化が不可欠であり、当分の間、有価証券譲渡益課税における源泉分離課税方式の適用を延長し、他の金融所得との整合性を踏まえつつ、申告分離課税のあり方について検討を進めるべきである。

    11. 住宅税制の見直し
    12. 景気支援の観点から住宅建設を効果的に促進し、併せて全体的な住宅の質的向上を図るため、来年6月に期限を迎える住宅ローン控除制度にかえて、各個人のライフステージに対応した柔軟かつ選択可能な仕組みを備えた新たな所得税軽減措置を導入することが必要である。また、住宅取得資金に係る贈与税の特例の拡充も欠かせない。

    13. 土地譲渡益重課の廃止・買替特例の延長
    14. 土地神話の崩壊した今日、土地を他の資産より重課する理由はなく、土地譲渡益重課は廃止すべきである。また、企業のリストラクチャリング、産業構造の転換を進めるため、現行の買換特例を延長する必要がある。

    15. 特別法人税の撤廃
    16. 企業年金積立金にかかる特別法人税は、企業年金資産の充実を妨げるものであり、また受給時課税への一本化の観点からも、公的年金等控除の見直しと併せて廃止することとし、それまでの間は凍結することが必要である。

    17. 相続税・贈与税の見直し
    18. 相続税の最高税率70%は、課税方式の違いを考慮しても欧米諸国と比べ著しく高く、50%まで引き下げることをはじめ、累進税率構造全体を緩和する必要がある。また、高齢化が進む中で、生前贈与の活用により、資産を若〜中年層に移転し活用することが重要であり、贈与税について税率構造の見直しを行うとともに、昭和50年以来据え置かれている基礎控除額の大幅な引き上げを求める。

    19. その他
    20. 民間の自主性や創意工夫に基づく公益活動の充実に向けて、公益活動に見るべき実績をあげたと認められる認定NPO法人に税制面での支援措置を講じる必要がある。
      また、国民一人ひとりの日常生活や経済活動に深く関わる環境問題に関しては、産業界の自主的な取り組みをはじめとする官民の取組みの成果を十分に見極め、企業の競争力低下につながる措置の検討は慎重を要する。

以 上

日本語のホームページへ