[経団連] [意見書] [ 目次 ]

『快適な居住環境の実現に向けて』

−平成13年度住宅関係税制改正要望−

2000年9月13日
(社)経済団体連合会

わが国経済は、戦後最悪といわれる景気低迷期から脱し、ようやく民需主導の自律回復軌道に乗りつつある。しかしながら、本格的な経済回復とは言い難く、わが国経済の新生を実現するためには、民間の自助努力に加え、引き続き、政府の政策的支援が必要である。

とりわけ、これまで景気の大きな下支え役を果たし、今後とも民間需要の大きな柱となる、住宅建設のさらなる促進に向けた配慮が必要である。深刻な景気低迷のなかにあって住宅建設が堅調に推移してきたのは、住宅ローン控除制度をはじめとした住宅税制や住宅金融公庫の低金利政策が功を奏した結果と言える。住宅建設が経済全般に対して大きな波及効果を有することに鑑みれば、住宅税制の継続・拡充を図り、民需・内需主導の本格的な経済回復を目指すべきである。

また、今後、国民生活の向上と豊かな社会の構築を図るためには、生活の礎となる「住環境」の良質化が重要な課題であり、国民一人一人のライフステージ、多様な価値観に応じた、優良な住宅ストックの形成を促進すべきである。良質な住環境の整備は、個々人のゆとりある生活の実現や家族の絆の強化等を通じて、わが国社会の安定化に繋がることから、住宅を社会インフラの一つと捉え、各人の自助努力を前提とした誘導型政策支援を推進すべきである。その意味で、住宅税制が担う役割は大きい。

以上の観点から、国民の住宅取得に対する政策支援の継続・拡充が必要であり、特に下記につき、来年度税制改正に盛り込むことを要望する。

  1. 住宅取得に係る選択可能な所得税軽減制度の創設
  2. 1999年における住宅ローン控除制度の創設ならびに1999年12月における本制度の適用期限の延長は、97年以降低迷が続いてきた住宅建設市場に活況をもたらし、マイナス成長からの脱却など、景気の下支え役を果たした。本制度の適用は2001年6月末までの入居分までであり、本制度の適用期限が切れる6月以降は、最大控除額が587.5万円が150万円(2001年12月末まで)に激減することから、期限切れに伴う住宅市場への影響、ひいてはわが国経済全般への影響が懸念される。

    従って、本格的な景気回復を図り、住宅投資を今後の内需の安定的な柱とする観点から、現行の住宅ローン控除制度に匹敵する、新たな所得税軽減制度を導入すべきである。また、新たな所得税軽減制度は、効果的に住宅建設を促進するとともに質の向上を図る観点から、個々人のライフステージに対応した、柔軟かつ選択可能な仕組みとし、計画的に住宅を取得できる安定的な制度にすべきである。

    具体的には、30歳代で持家が取得できるよう、長期間にわたって実効ある支援策を講じる観点から、15年間にわたって住宅ローン残高の0.75%を税額控除する所得税軽減措置を用意すべきである。また、良質な住宅への建替え・買換えを促進する観点から、主に40〜50歳代の二次取得者を視野に入れて、当初3年間は住宅ローン残高の1.5%、その後7年間は1%の税額控除といった、初期負担の一層の軽減を図る措置を用意し、一定の床面積以上の住宅を取得する場合には、二つの軽減措置のなかから個々人が自らの事情に応じて選択できるようにすべきである。

    さらに、本制度は、居住用財産の買換特例等との併用を認めるとともに、セカンドハウスを取得する場合や転勤者が事情解消後に再び居住の用に供した場合にも適用すべきである。

    なお、本来的には、良質な住宅ストック形成の観点から、わが国においても、米国と同様、住宅及びその敷地の取得に係る借入金利子を所得控除する制度を創設することが望ましく、今後の所得税制の抜本改革に併せて、その導入を図るべきである。


  3. 住宅取得資金に係る贈与税特例の拡充・継続
  4. 住宅取得のための自己資金の充実を図り、ローン負担を軽減する観点から、現行の住宅取得資金に係る贈与税特例について、適用期限(2000年12月31日)を延長するとともに、非課税限度額(現行300万円)の1,000万円への引き上げや特例計算限度額(現行1,500万円)の引き上げ、建て替え、住み替えなど二次取得者への適用や増改築への適用、所得要件(現行1,200万円)の3,000万円への緩和など、特例の拡充を図るべきである。特に、勤労者世帯の住宅ローン返済負担を軽減することにより、低迷している個人消費を刺激し、本格的な景気回復に繋げるためにも、本特例措置の継続・拡充は重要である。さらに、本措置の継続・拡充は、2世帯同居等にも対応した、ゆとりある住宅の取得促進に資すると考えられる。


  5. 居住用財産の譲渡損失の繰越控除制度の延長
  6. 個人のライフステージに応じた住み替えの促進や住生活の向上を図るとともに住宅投資を促進する観点から、居住用財産の買換えに伴う譲渡損失の繰越控除制度について、本特例の適用期限(2000年12月31日)を延長すべきである。


  7. 特定の居住用財産の買換え特例の延長・拡充
  8. 個人のライフステージに応じた住み替えの促進や住生活の向上を図るとともに住宅投資を促進する観点から、特定の居住用財産の買換え特例について、適用期限(2000年12月31日)の延長を図るとともに、床面積の上限(現行240m2以下)を撤廃すべきである。


  9. 住宅等に係る流通税(登録免許税、不動産取得税、印紙税)の特例に係る適用期限の延長等
  10. 住宅取得に対する国民の負担の軽減、不動産流通の適正な推進を図る観点から、住宅等に係る流通税の特例について、適用期限の延長等を図るべきである。

    1. 住宅に係る登録免許税の軽減税率特例の延長
    2. 住宅および住宅用土地の取得に係る不動産取得税の特例の延長ならびに住宅用地の減額特例に係る建築期間要件の伸長
    3. 不動産売買契約書等に係る印紙税の軽減特例の延長

    そもそも、住宅不動産の流通に対しては、消費税に加えて、不動産取得税、登録免許税、印紙税といった「四重課税」が課せられ、国民の住宅取得に対する負担を大きくしており、住宅不動産の流通円滑化の阻害要因となっている。土地取引の活性化、有効利用の促進を図る観点からも、今後、不動産取得税の撤廃、不動産取得に係る登録免許税の手数料化、印紙税の定額一本化等の抜本的な見直しに向けて、検討を進めるべきである。

    また、消費税の見直しが検討される場合には、住宅取得に係る消費税の軽減についても十分配慮すべきである。

以 上

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