[経団連] [意見書] [ 目次 ]

商法改正への提言

─ 要 旨 ─

2000年10月17日
(社)経済団体連合会

  1. はじめに
  2. 商法改正の基本目標
  3. 商法改正にあたっては、以下の5つを基本目標に据えるべきである。

    1. 強行法規性の緩和と市場重視の法整備−企業の国際競争力の確保
    2. 事業・組織の再編に資する法整備
    3. 資金調達手段の多様化、効率化
    4. ベンチャー・ビジネスの育成
    5. IT活用の推進

    * コーポレート・ガバナンスに関する商法改正については、監査役制度の強化と代表訴訟制度の合理化((1)定款等による取締役の責任の軽減、(2)会社による被告取締役への訴訟支援や補助参加、(3)原告適格の見直し〔行為時株主の原則〕)に向けて、与野党の関係議員により議員立法が検討されてきたところであり、既に改正案要綱が策定され、来年の通常国会での成立に向けた努力が続けられている。経済界としても早期かつ確実な立法のため、強くこれを支持、推進していきたい。

  4. 早期に成立を求める事項
  5. 早期成立が求められる項目は次の5つである。これらについては、商法の抜本改正の中でも比較的、切り離して実現可能な項目ではないかと考えられ、特に(1)〜(3)は、近年の企業再編法制の効果を高めるなどの観点から緊急性がある。なお、会社分割法制については、少なくとも来年4月の新年度当初から活用出来るよう、停止条件付で手続が行えるような運用が必要である。

    (1)ストック・オプション制度の整備
    ストック・オプション制度をより活用しやすい制度にするために、次の改善が求められる。
    1. 子会社・関連会社の役員・使用人に付与出来るようにすべきである。
    2. ストック・オプション付与対象者の承認手続を簡素化し、対象となる者の数や内訳を示すことで足るとすべきである。
    3. 株主総会の特別決議が必要とされている新株引受権方式について、自己株式方式同様、普通決議とすべきである。
    4. 発行済株式総数の10分の1という付与上限を撤廃すべきである。


    (2)株式分割の際の純資産額規制の撤廃
    株式分割の際の一株あたりの純資産額規制、とりわけ無額面株式についての純資産額規制を撤廃すべきである。また、大幅な株式分割時の障害となる授権資本枠規制を緩和すべきである。

    (3)検査役の調査の見直し
    現物出資、事後設立、財産引受の場合、検査役の調査が必要とされているが、裁判所の選任する検査役に代わって、会社の取締役または発起人が選任する弁護士、公認会計士等が財産の調査を行い、それを検査役の調査に代えることができる仕組みを導入すべきである。また、新たに設立される会社が出資を受け、または譲り受ける全ての財産の時価の合計額が、簿価以上であることを証明すれば財産の調査を不要とすべきである。

    (4)CPの電子登録方式による完全ペーパーレス化
    機動的な発行の利点を活かしながら、CPの発行・流通・償還の全段階における完全なペーパーレス化を電子登録方式によって実現すべきである。

    (5)IT時代にふさわしい商法の再編
    IT革命に対応するため、IT法制の積極的導入を促すべきである。
    例えば、電子メールによる株主総会の招集通知の発送、議決権行使を認めるべきである。具体的には、(1)招集通知、添付書類の書面要件の緩和、(2)株主名簿記載の電子メールアドレスへの発信により通知の到達とみなす規定の整備、(3)押印要件の撤廃等の措置が講じられるべきである。
    また、電子公告を認めることにより、利用者の負担を軽減すべきである。

  6. 確実に実現すべき具体的事項
    1. 強行法規性の緩和と市場重視の法整備

      1. 株主総会の定足数の見直し等
      2. 株主総会決議事項の取締役会への委譲
      3. 資本準備金による自己株式消却の特例の恒久化と未公開株式への拡大
      4. 商法開示と証券取引法開示の調整

    2. 事業・組織の再編に資する法整備

      1. 有限責任事業組合(仮称:LLC・LLP)制度の導入
      2. 自己株式の取得・保有(金庫株)の容認
      3. ストック・オプション制度の整備(再掲)
      4. 株式の強制買取制度およびキャッシュアウト・マージャーの導入
      5. 種類株式の多様化、弾力化
        ─トラッキング・ストックと議決権行使に関わる種類株式の創設
      6. 検査役の調査の見直し(再掲)
      7. 定款記載目的の柔軟化

    3. 資金調達手段の多様化、効率化

      1. CPの電子登録方式による完全ペーパーレス化(再掲)
      2. 種類株式の多様化、弾力化(再掲)

    4. ベンチャー・ビジネスの育成

      1. ストック・オプション制度の整備(再掲)
      2. 株式分割の際の純資産額規制の撤廃(再掲)
      3. 種類株式の多様化、弾力化(再掲)
      4. 有限責任事業組合(仮称:LLC・LLP)制度の導入(再掲)

    5. IT活用の推進

      • 電子メールによる招集通知の発送、議決権行使の電子化
      • 電子公告

以 上

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