[経団連] [意見書]

行政機関による法令適用事前確認手続(仮称)導入についての意見

2001年3月16日
(社)経済団体連合会
行政改革推進委員会・専門委員会

経団連では、従前より、行政手続法、パブリック・コメント手続、情報公開法等の行政運営の公正確保・透明性向上のための制度整備と積極的活用を関係方面に訴えてきた。かかる制度整備の一環として、現在、昨年12月に閣議決定された「経済構造の変革と創造のための行動計画(第3回フォローアップ)」に基づき、いわゆる日本版ノーアクションレター制度(「行政機関による法令適用事前確認手続(仮称)」)の導入に向け、関係省庁において具体的検討が進められていることを評価している。
今般、同制度についての意見募集が行なわれたことを踏まえ、当会として、本制度がより実効性のあるものとなるよう、下記の意見を取りまとめたところであり、関係省庁における検討に充分に反映されるよう強く要望する。
今回の意見募集は短期間で、しかも原案が示されずに行なわれたことは遺憾と言わざるを得ず、制度の趣旨を鑑みた場合、今後はより公正で透明な手続きにより行なわれるべきことを要望しておきたい。
なお、行政手続法については、その的確な施行と運用を図るべく、「行政手続の公正及び透明性の確保に関する調査結果に基づく勧告(平成11年6月18日)」などに沿って、審査基準や処分基準等の設定や具体化が徹底されるよう要望する。

  1. 制度の対象範囲
  2. 全分野の法令を対象すること

    本制度は行政運営の公正確保・透明性向上のための制度整備の一環として、特に、民間企業等の事業活動がより迅速かつ公平に行われる条件を整備するための制度として活用できるよう、制度の対象範囲は民間企業の事業活動に関連し行政機関が解釈権を有する全ての法令を対象にすべきである。
    そのため、

    1. 行政手続法の適用を受ける不利益処分に係わる解釈のみならず、罰則(許認可等を受けないで、あるいは届出等を行なわないで事業活動等を行なった場合に適用される罰則や業務範囲等の行為規制が課されている場合でこれに違反した場合に適用される罰則、いわゆる直罰規定)の前提となる法令の解釈を全て対象にすべきである。
    2. 地方公共団体の処理する事務(法定受託事務、自治事務の全て)に係る上記法令の解釈についても、本制度の直接の対象とすべきである。
    3. なお、地方公共団体の事務に関し、その根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものの解釈についても、行政運営の公正確保・透明性向上のため、国の制度の趣旨にのっとり必要な措置が講じられるよう、国として地方公共団体に要請すべきである。

  3. 法令解釈の照会について
  4. 簡素・透明・明確で利便性の高い制度とすること

    本制度が民間企業等の事業活動を迅速かつ円滑に行なわれるための制度として定着し十分に活用されるようにするためには、制度利用にあたり無用の混乱や過度の負担が生じることのないよう、簡素・透明・明確で利便性の高い制度とすべきである。また、行政改革を進める観点からは、本制度が行政運営の公正・透明性確保や効率化に資する制度にする必要がある。
    そのため、

    1. 照会者が作成すべき照会書の内容に関して、当事者性あるいは事案の具体性、法令の規定の特定等に関し、法令解釈を的確になし得るに必要最小限の内容を政府の統一指針で予め明確にすべきである。
    2. 照会方法について、書面だけでなく、電子的手段も活用できるようにすべきである。
    3. 照会の窓口は、それぞれの法令を担当する課室のみに設置するのではなく、同一省庁の複数の課室に関連する可能性のある事案の照会を受け付け、関連する課室に照会書を割り振る窓口を、各省庁の官房等に設けるべきである。
    4. 企業秘密や企業戦略に関わる照会で民間企業の競争上の地位その他正当な 利益を害するおそれがある情報が含まれる回答については、照会者からの申請に基づき、事案に応じて、一定期間の公表を遅延させることを予め認めるとともに、公表内容についても照会者の意向に配慮すべきである。
    5. 照会者が不利益な取扱いを受けることのないようにすべきである。

  5. 回答方法について
  6. 迅速で明確な回答を義務付けること

    民間企業等の事業活動を迅速かつ円滑に行なわれるための制度とするためには、行政庁側の回答が迅速かつ明確に行なわれるのが必須であり、また、民間企業側の予見可能性を高めるためには、法令解釈に関する見解を含め、関連情報が極力提供されるべきである。
    そのため、

    1. 回答期限を設定するとともに(例えば情報公開法で規定する開示決定等の期限である30日以内)、回答期限の起算時点については到達主義原則を徹底し、照会書が届いた日から期限内に回答が行なわれるべきである。
    2. 照会者から出された事案が、複数の省庁・課室が関与するものである場合、相互に連絡を取る等の措置により、回答が遅延することのないようにすべきである。
    3. 回答を行なう際(特に照会者に不利な回答をする場合)には、照会者の円滑な事業活動に資するよう、何故処分基準に該当するのか等極力具体的な法令の解釈や見解を付すようにするとともに、これらが不十分な場合には、再度、照会できるようにすべきである。
    4. 回答を行なう際、安易に無回答とされることがないよう、政府の統一指針において、無回答が可能な場合を極力限定し、厳格にその要件を定めるべきである。また、無回答の場合には、その具体的な理由を明らかにするとともに、その理由を構成する要件(例えば、情報不足の場合)を補正した場合、再度、同一の照会を行なえるようにすべきである。
    5. 照会者が回答書を得た後、公表遅延事案を除き一定期間後に回答書の概要がインターネット等で公表され、類似案件毎に容易に検索ができるようにすべきである。

  7. 平成13年度から実施すべき分野について
  8. 平成13年度より幅広く実施すること

    本制度については、昨年12月1日に「一定の分野において平成13年度(2001年度)から実施する」と閣議決定(「経済構造の変革と創造のための行動計画(第3回フォローアップ)」されている。
    わが国経済が今後、潜在成長力に見合う安定成長を遂げていくためには、構造改革の推進が不可欠である。その柱として、上記閣議決定でも掲げられているように、

    1. 国際的に競争力を持った事業環境の整備、
    2. 少子高齢化あるいは環境問題を克服し新たな成長要因とする経済社会システムの構築、
    が早急に求められている。
    これを踏まえ、本制度も、民間企業のとりまく環境変化の著しい分野や新しい商品・サービスの創造が期待できる分野(例えば、金融、IT関連、医療・福祉、環境等)を中心に、平成13年度より幅広く実施すべきである。

  9. フォローアップ措置の導入について
  10. 1年後に必要な見直し等を行なうこと

    本制度をより実効性のある制度とすべく、平成13年度における各省庁の実施状況を調査し、1年後を目途に統一指針の見直しを含めた制度の必要な見直しを行なうとともに、各省庁等における取り組みの強化等の措置を講ずるべきである。更には、将来の法制化も視野に入れた検討を進めるべきである。

以 上

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