[経団連] [意見書] [ 本文 ]
エネルギー政策の重点課題に関する見解
―安定供給の確保と環境・経済との調和―

【別紙】


温暖化問題に対する経団連の基本的考え方

「第3回経団連環境自主行動計画フォローアップ結果について
―温暖化対策編―(2000年11月2日)
」から作成

1.温暖化対策は中長期的視点かつ地球規模で考えることが重要である

地球温暖化は、50年、100年先に影響の現れる問題であるとともに、CO2と人類の活動を切り離す技術的なブレークスルーなくしては、根本的な解決が困難な問題であることは事実である。短期的にとり得る実行可能な対策を最大限推進することは当然であるが、併せて、中・長期的な視野に立ち、対策技術の開発を着実に進め、実効性のある対策を講じていかねばならない。
また、温暖化対策は、地球規模で温室効果ガスの削減につながるものでなければならないことを忘れてはならない。即ち、単に先進国から開発途上国へと排出源が移動するだけの対策は無意味である。今後予想される途上国でのCO2排出の飛躍的な伸びに対応するためにも、先進各国単独の対策に留まらず、省エネ対策についての技術協力、環境ODAの一層の充実等、途上国との協力や他の先進国との協力を図りながら取組みを進める必要がある。

2.温暖化対策は自主的取組を中心に

(1) 経団連環境自主行動計画について

経団連環境自主行動計画には、現在43業種が参加し、主に温暖化問題、廃棄物問題に積極的に取組んでいる。この内、産業・エネルギー転換部門の34業種が、温暖化対策としては、「2010年度にCO2排出量を1990年度レベル以下に抑制するよう努力する」という全体としての統一目標を掲げ、その達成に向けて努力している。98年度のCO2排出量は90年度比 2.9%減少、99年度は 0.1%減少する等、既に成果をあげている。

(2) 透明性を確保するための仕組み

経団連では毎年、自主行動計画の進捗状況を業種毎に詳細にフォローアップし、その結果をインターネット等を通じて広く公表している。また、各業種の自主行動計画の進捗状況は、毎年関係審議会の場で学識経験者や環境NGO等から構成される第三者委員会からのレビューを受けており、更に地球温暖化問題への国内対策に関する関係審議会合同会議にも報告されている。

(3) 今後の見通し

Bauケース(自然体ケース)では増加基調にあるCO2排出量を、産業界の一層の努力によって削減を図り、また、原子力発電所の新規運転開始等を見込んで自主行動計画の目標を立てており、目標達成は決して容易ではない。また、民生・運輸部門からの排出量は依然として増加しており、わが国全体としての削減目標の達成に向け、そのしわ寄せが産業部門へ及ぶことが懸念される。(そもそもわが国産業界のエネルギー効率は諸外国に比して非常に高い。)

3.環境税について

(1) 環境税の導入には慎重な検討が必要

CO2排出抑制の手段として、環境税(炭素税、炭素・エネルギー税を含む)を導入すべきとの考え方があるが、環境税の導入には、以下の通り、種々問題があり、慎重に検討すべきである。

  1. 環境税は石油危機前後のエネルギー価格の動向とガソリン、電力の需要推移など過去の例をみても、そのCO2排出抑制効果は疑わしい。
  2. 産業の国際競争力の低下を招くとともに、省エネのための技術開発や設備投資の資金原資を流出させるなど産業界の自主的な取り組みを阻害する。また、エネルギー効率の低い国における生産が増加し、かえって地球規模でのCO2増加を招くという矛盾も生じる。
  3. 環境税導入の目的を環境対策費用の財源確保におく考え方があるが、環境対策に必要な財源は単なる追加的な賦課ではなく、歳出見直しから捻出すべきである。

(2) 産業界、国民の納得を得る努力を

税の導入ありきというのではなく、まずは、環境税導入による効果と経済への影響の明確化、さらには既存税制との調整等について、中長期的な視点に立った幅広い調査・研究が行われる必要があり、それらの結果が産業界や国民が十分納得できるだけの説得力をもって示されるべきである。

4.京都メカニズムについて

(1) 京都メカニズムを活用すべき

京都メカニズムは、排出削減のためのコスト負担の大きい我が国にとっては有効な対策の選択肢であり、国際ルールの具体化を早期に実現する必要がある。その際、京都メカニズムが効果を上げるには民間の自主的な参加が不可欠であり、民間が参加しやすい仕組みを構築することが求められる。

(2) 強制的な排出枠の設定を前提とした国内排出量取引には反対

強制的な排出枠の設定を前提とした国内排出量取引制度の構築は、極めて経済統制的であること、公平性の確保が難しいこと等から反対である。

(3) 京都メカニズムの利用に上限を設定すべきではない

わが国は世界的に見て既に極めて高いエネルギー効率を達成しており、国内でのさらなる省エネには、コスト負担が大きいことに配慮すべきである。また、地球規模での温暖化対策を促進する観点からも、京都メカニズムの利用に上限を設けることは望ましくない。

5.原子力利用の推進

原子力利用の推進は温暖化対策の観点から言っても、不可欠の課題である。引き続き安全性の確保に最大限の努力を傾注し、国民の理解を得つつ、原子力の推進を図るべきである。

以 上

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