[経団連] [意見書]

「構造改革を進め民主導の活力ある経済社会を実現する」

― 総会決議 ―

2001年5月25日
(社)経済団体連合会

グローバル化、少子・高齢化、更には日本経済の発展を支えてきた諸制度の疲労が、わが国経済社会の抜本的な変革を迫っている。
企業は、蔓延する閉塞感を自らの手で打ち破るべく、自立、自助、自己責任の精神の基に、経営効率の改善に向け不断の改革を進めるとともに、新たな成長基盤の確立に努めねばならない。そのためにも、新内閣が「聖域なき構造改革」への取り組みを表明したことを、経済界は高く評価し、その着実な実施を強く期待する。
我々は、不退転の決意で下記の改革を推進し、21世紀の経済社会の強固な発展基盤を創る必要がある。これは、世界経済に対するわが国の責務でもある。
経団連は、新たな世紀にふさわしい政策提言能力と実行力を有する、真の総合経済団体を目指し、日経連との統合を進める。新団体の創設を通じ、わが国が直面する広範な課題に、従来以上に大胆な発想で取り組み、迅速かつ着実な解決をはかっていく決意である。

1.企業の構造改革を進める

企業は、強い決意のもとに、不良債権、過剰債務の処理等に取り組み、経営、財務基盤の強化をはかる。また、一層の収益力の強化、国際競争力の確保に向け、組織の再編、合理化に全力をあげて取り組む。
政府は、証券投資税制の整備などを通じ、資本市場を活性化し、直接金融の機能強化をはかる必要がある。併せて、株主代表訴訟制度の見直し、連結納税制度の導入など、グローバルスタンダードに合わせた、法制、税制等の迅速な整備が求められる。また、雇用情勢の変化に対応し、雇用対策を機動的に実施していくことも重要である。

2.新たな成長基盤を確立する

企業は、技術開発やITの活用等を通じ、生産性の向上と競争力の強化に努めるとともに、新産業・新事業を創出する。
特に、技術革新が経済発展の原動力であることから、産学官の連携・協力による研究開発の一層の推進、大学の改革が強く求められる。更に、政府は、総合科学技術会議のリーダーシップのもとで、戦略的・総合的な科学技術政策を実施するとともに、先端的分野の国家プロジェクトを推進する必要がある。
また、政府は、世界最先端のIT国家実現に努めなくてはならない。更に、都市再生の観点から、大都市圏のビジネス環境の改善に役立つ社会資本の整備、土地の流動化に向けた土地住宅税制の全般的見直し等を実現すべきである。
同時に、政府が進めている教育改革を早急に実現し、わが国の教育システムを時代の変化に即したものとすることが求められる。

3.地球環境、エネルギー問題に取り組む

企業は、引き続き自主行動計画に基づく温暖化対策を進めるとともに、環境技術の革新、循環型経済社会の構築、自然保護事業の推進など、自主的かつ積極的に責任ある取り組みを更に進める。政府は、経済成長と環境保全の両立をはかった地球温暖化対策を行なう一方、多国間の枠組みの早期実現に向け強力なイニシアティブを発揮する必要がある。
また、官民の協力のもとに、経済合理性や環境との調和に配慮しつつ、原子力発電の着実な推進など、エネルギーの安定供給の確保に取り組む。

4.財政構造改革の包括的なグランドデザインを策定する

国民の将来に対する不安を払拭すべく、政府は、社会保障制度改革、地方財政・公共事業を含む歳出構造改革、税制改革を包括した財政構造改革のグランドデザインを早急に策定すべきである。
社会保障については、高齢者医療制度を含めた医療制度改革に直ちに取り組むとともに、年金制度の改革を進めていく必要がある。地方財政については、国・地方の役割分担および税財源配分を見直し、地方交付税を縮減・廃止すべきである。同時に、市町村合併を推進し、地方分権化の受け皿作りを行なう必要がある。公共事業については、高コスト構造の是正等に資する事業への重点化及び管理、運営を含めた事業の効率化が求められる。

5.行政改革、規制改革を推進する

民間主導の活力と創意に満ちた21世紀を築くためには、更なる行政改革の推進が不可欠である。政府は、中央省庁改革が真に実をあげるよう努めるとともに、公的金融機関を含め特殊法人等の事業をゼロベースで見直し、廃止、統合、民営化などの改革を迅速に行なうべきである。
また、総合規制改革会議を中心に、経済社会の構造改革を視野に入れた一層の規制改革、制度改革の推進が求められる。

6.対外経済政策を戦略的に推進する

欧米、アジア諸国等との経済関係の一層の緊密化を目指し、政府は、包括的なWTO新ラウンド交渉の早期開始に向けてイニシアティブを発揮するとともに、二国間自由貿易協定を積極的に進める必要がある。経済界は、通商交渉に十分意見が反映されるよう、政府等との連携を更に強化する。
また、アジアに対し、官民が協力し、人材、裾野産業、IT分野などの産業基盤の強化を支援すると同時に、円の利用拡大をはかり、通貨・為替の安定に貢献する。

以 上

日本語のホームページへ