[経団連] [意見書]

「独占禁止法研究会手続関係等部会」報告書に関するコメント

2001年9月7日
(社)経済団体連合会
経済法規委員会
競争法部会

独占禁止法は、経済活動のあり方を規律する基本的な法律であり、規制改革の進展によって、ますますその重要性が高まっている。競争政策は、経済社会の実体の変化に合わせて絶えず見直していくのでなければ、現実と乖離し、経済活動に対する過度の規制ともなりうる。
公正取引委員会が、今般、一般集中規制の見直しと併せて手続関係規制のあり方をも検討したことは極めて時宜に適ったものであり、経団連としても、この問題提起を受けて、経済界の立場から以下のとおりコメントすることとしたい。

【独禁法違反に対して採られる措置体系の整備について】

現在、独禁法違反行為は、刑事罰、公正取引委員会による排除措置や課徴金納付命令のほか、損害賠償や不当利得返還などの民事責任の対象となる。違反行為に対しては厳正な処理で臨むべきであることは論を待たないが、これらは法体系としては、違反行為の抑止あるいは制裁という観点からは刑事罰と課徴金の二制度が併存し、また不当利得の剥奪という観点からは課徴金と民事損害賠償の二制度が併存するという変則的なものとなっている。また、課徴金制度が導入された昭和52年当時とは異なり、その後の刑罰の強化、積極的な刑事告発、独禁法違反事件を起こした事業者に対する民事責任追及の増加など、独禁法違反に対する制裁や責任追及に関する環境は一変したと言わざるを得ない。こういった環境変化をふまえ、措置体系を公平かつ統一的なものとすべく、抜本的な見直しを検討していく時期にさしかかっていると思われる。

【個別の検討課題について】

1.課徴金賦課手続きについて(第1)
  1. 課徴金対象行為の範囲
    独禁法違反に対する措置体系全体の見直しを通じて課徴金制度のあり方を検討し、そのうえで検討すべき課題である。
  2. 審判手続の開始による課徴金納付命令の失効
    他の行政処分との整合性を図る意味では反対しないが、審判において独禁法違反行為が認定されなかった場合には、相当の利息を付して返還する制度とすべきである。

2.東京高裁の専属管轄について(第4)
独禁法に関する訴訟の第一審裁判所としては、特許事件などと同様、専門的・統一的な判断を迅速に行うため、特定の裁判所に集中させる方が適当である。なお、司法制度改革審議会の最終報告でも触れられているように、専門性のある裁判官の育成に努めることが併せて求められる。

3.制裁減免制度について(第5)
日本の刑事司法においては、捜査に積極的に協力した者に対する制裁の減免は行われていない。こういった刑事免責制度を採ることについては、犯罪者に対する制裁である刑罰を「取引」を理由に減殺するようなことが日本の司法制度と整合性がとれるのか、また、日本国民の法感情に馴染むか、等の問題点も指摘されており、司法制度全体の問題としての検討なくして、独禁法分野のみ制裁減免制度を採り入れることには反対である。
以 上

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